【写真小旅行】雨のあと、葉山の白い美術館へ|神奈川県立近代美術館 葉山を歩く
雨が降っていた。
朝から出かけるには少し遅く、
遠くへ行くには少し重たい空だった。
それでも、一日を部屋の中だけで終わらせるのは惜しかった。
昼を過ぎてから車に乗り、葉山へ向かった。
目的地は、海の近くにある白い美術館。
雨のあとで、空はまだ明るくなかった。
それでも、山の緑は静かに濡れていた。
たくさん歩く日ではなかった。
たくさん撮る日でもなかった。
ただ、少しだけ外へ出て、
その日の空気を持ち帰りたかった。
白い建物の向こうに

白い建物の向こうに、
濡れた山の緑が見えていた。
空は灰色で、光はやわらかかった。
雨の日の午後らしい、静かな入口だった。
窓の外の緑

館内の一角に、誰も座っていない椅子が並んでいた。
窓の外には、雨を含んだ緑が広がっている。
そこだけ、時間が少しゆっくり流れているように見えた。
美術館の中にいるのに、
外の湿った空気まで入り込んでくるようだった。
海へ下りる道

庭へ出ると、道は海の方へ続いていた。
濡れた石と、濃くなった緑。
その奥に、少しだけ海が見える。
雨のあとの葉山は、
海より先に、緑の匂いが近かった。
誰もいない東屋

道の途中に、白い東屋があった。
誰も座っていない場所にも、
雨のあとの時間が残っていた。
そこに立ち止まるだけで、
少し休んだような気持ちになった。
明るくない海

海は、明るくはなかった。
空も、波も、少し灰色を含んでいた。
それでも浜辺には人がいて、波は静かに寄せていた。
晴れていない海にも、
その日だけの表情がある。
白い壁に沿って

白い壁に沿って、
雨のあとの道が続いていた。
その先に何があるのかは、
見えないくらいでちょうどよかった。
この日の葉山で、
いちばん長く目に残ったのは、
海よりも、この細い道だったかもしれない。
竹を見上げる

竹は、雨のあとも静かに立っていた。
見上げると、空は少しだけ明るかった。
葉のあいだから落ちてくる光は弱く、
それでも確かにそこにあった。
森の中の丸い石

竹は、雨のあとも静かに立っていた。
見上げると、空は少しだけ明るかった。
葉のあいだから落ちてくる光は弱く、
それでも確かにそこにあった。
錆びた鉄

もうひとつの作品は、錆びた鉄のような色をしていた。
雨のあとでも、それだけは少し乾いた記憶のように見えた。
帰り道の海

帰り道、海はまだ曇っていた。
手前にはロープがあり、
遠くには小さく帆が動いていた。
美術館を出ても、
海沿いの時間は、まだゆっくり続いていた。
海沿いの町に残る時間

海沿いの町には、
剥がれた白い壁の建物が残っていた。
美術館の白さとは違う、
時間にさらされた白だった。
きれいに整えられた場所を出たあとで、
こういう風景に出会うと、少し安心する。
町には、まだ使い切られていない時間が残っている。
そんな気がした。
遠くに見えた江ノ島

遠くに江ノ島が見えた。
空は明るくなかった。
海も、少し灰色を含んでいた。
それでも浜辺には人がいて、
波は静かに寄せていた。
雨の日に出かけるのは、少しだけ面倒だ。
けれど、晴れた日には見えないものがある。
濡れた壁。
誰もいない椅子。
灰色の海。
白い道。
竹の葉の暗さ。
この日は、たくさん歩いたわけではない。
遠くまで行ったわけでもない。
それでも、部屋の中にいたら見えなかった午後を、
少しだけ持ち帰ることができた。
雨のあと、葉山の白い美術館は、
静かにそこにあった。
今回の撮影機材
撮影:FUJIFILM X-E3 / XF18mmF2 R / iPhone 14
現像:ART
『サカナの骨が苦手なネコ』を、一冊の写真物語へ
現在、
現代童話『サカナの骨が苦手なネコ』の世界を写真で歩く、
Kindle写真物語の刊行準備を進めています。
第1話は、
ニャムダーが真鶴を歩く旅です。
Noteの記事とは少し違い、
写真の順番や言葉の流れを見直しながら、
一冊の作品として整えました。
駅、坂道、港、祈りの場所、森の道、そして海。
実在する町の風景の中に、
怖いものへ少しずつ近づいていく旅の時間を重ねています。
2026年9月15日より、
Kindleにて発売予定です。
写真と言葉を作品として届けるための、
次の一歩として、
まずはこの一冊を届けたいと思います。
日本語版
『サカナの骨が苦手なネコ』
〜第1話〜 ニャムダー、真鶴を歩く
English Edition
The Cat Who Was Afraid of Fish Bones
Episode 1 - Nyamuda Walks Through Manazuru
