「学校に行けない理由が分からない」と言う子へ――元不登校の僕が、親に急がないでほしかったこと
原因探しより先にできる、小さな質問と3日間の記録
「いじめられているの?」
「先生が嫌なの?」
「勉強についていけないの?」
欠席が続くと、親御さんは理由を知りたくなると思います。
原因が分かれば、取り除いてあげられるかもしれない。
学校にも説明できるかもしれない。これからどうすればよいか
考えられるかもしれない。
子どもを助けたいからこそ、理由を探す。それは自然なことです。
けれど、子ども自身にも、学校へ行けない理由をうまく説明できない
場合があります。
当時の私も、「なぜ学校に行けないのか」と聞かれて、
これが原因だと一つにまとめることができませんでした。
この記事では、専門家ではなく、かつて学校へ行けなかった
一人として、次のことをお伝えします。
「分からない」を、理由がないと決めつけなくてよいこと
子どもが答えやすい、小さな質問の例
原因を決めずにできる、3日間の記録
理由が整理できない段階で、学校へどう伝えるか
全部を一度に試す必要はありません。
今のご家庭で使えそうなところだけ、持ち帰ってください。
学校のすべてが嫌いだったわけではありません
私の場合は、学校そのものが嫌いだったわけではありません。
一緒に遊ぶ友達はいました。よくしてくれる先生もいました。
苦手な勉強はありましたが、学校で過ごす時間のすべてが
苦痛だったわけでもありません。
楽しいことがあるのに、行けない。
嫌いな人ばかりではないのに、学校のことを考えると動けない。
その矛盾を、当時の私は説明できませんでした。
「学校が嫌いだから行かない」と言えれば、
周りにも自分にも分かりやすかったのかもしれません。
でも、私の中ではそう単純ではありませんでした。
楽しいことと、つらいことが同時にありました
だからといって、何もなかったわけでもありません。
不登校になる一学年前、街中で偶然会った同年代の複数人に囲まれ、
暴力を受けたことがあります。私は一人でした。
私はその直後、親に伝えました。親は先生へ話してくれました。
後になって親から聞いた話では、
先生は「子ども同士のじゃれ合い」という趣旨で受け止めていたそうです。
一度であっても、複数人から暴力を受けたことは
軽い出来事ではありません。
一方で、私はこの出来事だけが、一学年後の不登校の直接の原因だったと
断定することもできません。当時の私も、
「あの出来事のせいで学校へ行けない」とは説明できませんでした。
私が伝えたいのは、「いじめだけが原因だった」という話でも、
「何もなかった」という話でもありません。
楽しいことと、つらいこと。小さな負担と、大きな出来事。
それらが同時にあり、本人にも一つの理由へまとめられない
場合があるということです。
「説明できない」と「理由がない」は同じではありません
子どもが「分からない」と答えると、
親御さんは困ってしまうと思います。
何かを隠しているのではないか。言いたくないだけではないか。
ただ休みたいだけではないか。
けれど、本人にも整理できていないことを、
その場で一つの答えにするのは難しい場合があります。
小さな負担がいくつも重なっているのかもしれません。
つらさを言葉にする余力が残っていないのかもしれません。
学校に良い面もあるからこそ、「学校が嫌だ」と
言い切れないのかもしれません。
これは、すべての子どもに当てはまる説明ではありません。
私自身の経験から考えられる可能性です。
ただ、「分からない」という返事だけを見て、
「それなら何も起きていない」と決めなくてもよいのだと思います。
研究でも、欠席に至る過程は一つの原因だけで説明されていません
2026年8月に発表されたスウェーデンの研究では、
長期欠席を経験した子どもの母親20人への聞き取りから、
欠席に至る変化が段階的な過程として分析されました。
母親たちの語りには、朝の習慣の変化、着る服を選べないこと、
腹痛や頭痛、友人関係など、複数の変化が登場します。
最初の段階では、母親にも子どもの抵抗の理由が
分からない場合がありました。
ただし、この研究はスウェーデンの母親20人を対象とした質的研究です。
対象となった子どもにはADHDや自閉スペクトラム症があり、
日本のすべての不登校の子どもへそのまま当てはめることはできません。
また、2026年7月に発表された、強い不安などを背景とした登校回避への
集中的支援を整理したレビューでは、本人の状態に合わせて
教育上の負担を調整すること、安全で構造化された環境、
信頼関係を重視する支援などが検討されています。
こちらも、対象や支援内容が異なる複数の研究をまとめたもので、
「この方法なら誰にでも有効」と証明するものではありません。
研究から受け取れるのは、一つの原因を早く当てることより、
心身、人間関係、学校環境などの変化を、時間の流れの中で見る必要が
あるという示唆です。
「なぜ?」を、答えやすい小さな質問に変えてみる
「なぜ学校に行けないの?」は、子どもにとって
大きすぎる質問かもしれません。
今すぐ一つの答えを求める代わりに、質問を小さくする方法があります。
「話す、書く、今日は答えない。どれが一番楽?」
「朝、教室、休み時間、帰り道の中で、つらい時間はある?」
「今、少しだけ楽になることはある?」
一度に全部を聞く必要はありません。
一つ聞いて、答えがなければ、その日は待つ。それでも構いません。
大切なのは、親御さんが正解を当てることではなく、「今すぐ説明できなくても、話せるときに話してよい」と伝わることだと思います。
3日間だけ、原因を決めずに様子を記録する
理由を一つに決める前に、3日間だけ、次のことを短く記録してみてください。
緊張や体調の変化が強くなった場面
そのときに見られた言葉や反応
少し落ち着いたきっかけ
例えば、次の程度で十分です。
「朝、制服を前にすると動きが止まった。今日は休むと伝えた後、
少し会話が戻った」
「学校からの電話が鳴った後、自分の部屋へ入った。
用件は親だけで聞くと伝えたら、夕方には出てきた」
これは、子どもを監視するための記録でも、
不登校を診断するための記録でもありません。
親御さん自身が焦りから少し離れて、「何が負担を強め、
何が安心につながっているのか」を見るためのメモです。
学校や相談先へ状況を伝えるときにも、
漠然と「行けません」と話すより、具体的な状態を
共有しやすくなります。
理由がまだ分からないとき、学校へはこう伝えられます
学校から理由を聞かれても、分からないことを無理に一つの説明へまとめる必要はありません。
例えば、最初の連絡では次のように伝えられます。
現在、本人も学校へ行くことが難しい理由を、
まだうまく説明できない状態です。
家庭では、体調や緊張が強くなる場面を確認しています。
原因を急いで決めず、本人が話せる範囲を尊重しながら、
今後の対応を相談させてください。
この文面は、学校へ連絡しないためのものではありません。
「理由は分からないが、何も見ていないわけではない」
「家庭でも状態を確認している」「一緒に考えたい」と伝えるための
最初の一文です。
理由を急がないことと、安全を確認しないことは別です
子どもの答えを急がないことは大切です。
一方で、暴力や脅しが疑われる場合、原因の整理を待つより先に
安全を守る必要があります。
本人を危険から離し、いつ、どこで、何があったか、
本人がどのように話したか、けががあるかを記録してください。
けが、強い恐怖、継続する危険、自傷行為や「死にたい」という訴え、
急激な心身状態の悪化などがある場合は、家庭だけで抱えず、
状況に応じて医療機関、警察・救急、児童相談所、
自治体や地域の相談機関などへ相談してください。
私の場合、親は私の話を聞き、学校へ伝えてくれました。
その行動まで間違いだったとは思いません。
学校側の受け止めが十分ではなかったとしても、
その責任まで親御さんが背負う必要はないと思います。
原因が分からなくても、安心を先に整えてよい
原因がすべて分かるまで、家庭で何もできないわけではありません。
登校の話をしない時間を作る。好きなことへの反応を見る。
本人が選べる範囲を残す。できたことを、登校だけで測らない。
文部科学省の2019年の通知でも、不登校支援は「学校に登校する」という結果だけを目標にせず、本人が自らの進路を主体的に捉え、
社会的に自立することを目指す必要があるとされています。同時に、
学習の遅れや進路上の不利益などにも留意し、
一人ひとりの状況に応じた支援が必要だと示されています。
私は、回復を一本道だとは考えていません。
安心が少し戻る。好きなことへ反応する。小さな習慣が生まれる。
外とのつながりができる。そして、本人が選んだ行動へ進む。
順番が前後することも、立ち止まることもあると思います。
まず家庭が、理由をうまく説明できないままでもいられる場所であること。それ自体が、次の一歩を考えるための土台になる可能性があります。
親御さんも、自分を責めすぎないでください
子ども本人にも説明できないことを、
親御さんがすぐに見抜けなかったとしても、
それは愛情が足りなかったからではありません。
「なぜ分からなかったのだろう」
「あのとき学校へ行かせようとしなければよかった」
そう思っている親御さんもいるかもしれません。
過去の対応をなかったことにはできません。
でも、今から「すぐに答えなくても大丈夫」と伝えることはできます。
理由を一つに決めるより、今の安全と負担を見る。
その姿勢は、子どもだけでなく、答えを探し続けて疲れた
親御さんの心も、少し守ってくれるのではないかと思います。
学校からの電話や家庭訪問へ、具体的にどう返すか迷っている方へ
子どもの答えを急がないと決めても、欠席が続けば、
学校から電話や家庭訪問の連絡が入ることがあります。
そのとき親御さんは、二つの気持ちの間で迷うかもしれません。
「先生との関係は切りたくない」
「でも、突然の訪問や登校の話で、子どもの緊張を強めたくない」
公開中の有料記事では、このような場面で学校へ伝える
具体的な言葉をまとめています。
この有料記事が向いている方
近いうちに家庭訪問の予定があり、返事を急いでいる
子どもが「先生に会いたくない」「来ないでほしい」と言っている
親だけで対応したいが、学校との関係は切りたくない
訪問を延期・中止したいが、角が立たない伝え方に迷っている
学校から「少しだけでも会ってほしい」と言われたときの返答が必要
有料記事に入っているもの
学校へ伝えられる7つのお願い
そのまま使える相談文
学校から別の提案をされたときの返答例
子どもへ希望を確認する言葉
訪問を延期・中止したいときの短い文例
状態に合わせた、学校とのつながり方
訪問後に避けたい言葉と、伝えたい言葉
読んだ後は、ご家庭の状況に近い項目を選び、
学校への連絡文を一から考えずに調整できる構成です。
学校との関係を切るためではなく、今の子どもが受け止められる距離へ
調整しながら、連絡を残すための相談文です。
反対に、家庭訪問の予定がなく、まず子どもの状態を
見守りたい段階なら、今すぐ購入する必要はありません。
この記事の小さな質問と3日間の記録から始めてください。
関連記事(有料)
理由を急がず待ちたいと思っても、学校への連絡は続きますよね。
もし今、「先生の家庭訪問をどう相談したらいいだろう」と迷っていたら、学校へ伝える言葉をまとめた記事もあります。
「今回は親だけでお話ししたい」
「訪問を少し延期してほしい」
「少しだけでも会えませんか、と言われたら……」
そんな場面で使える相談文や返答例を、元不登校当事者の視点から整理しました。
無料部分では、相談するときの考え方と文例を一つ紹介しています。
状況別の文例を手元に置いて試してみたい方へ、続きは300円です。
先生の家庭訪問が負担なときの伝え方|子どもの安心を守る相談文・返答例
※この記事は、元不登校当事者の経験と公開されている研究・公的資料をもとにした一般的な情報です。医療・心理・教育・法律上の診断や個別の助言に代わるものではありません。子どもの状態や学校との状況は家庭ごとに異なります。
参考資料
Emma Laurin, “Becoming a school refuser: A sociological study of long-term school absence in Sweden,” 2026年8月13日公開
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/00380385261455236Lux Ratnamohanほか, “Intensive interventions for emotionally based school avoidance: a scoping review of program structures and therapeutic levers,” 2026年7月31日公開
https://www.frontiersin.org/journals/psychiatry/articles/10.3389/fpsyt.2026.1851117/full文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」令和元年10月25日
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422155.htm
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