「診断」
背中で両手のひらをぴたりと合わせる
「背中合掌」
それが、私の密かな自慢でした。
周りの人が驚くほどの柔軟性で
それができなくなる日がくるなど
想像していませんでした。
だからこそ、それが出来ない朝があっても、
「ただの寝違えだろう」
と、高を括っていました。
左腕は、腰の後ろから上にはどうしても
上がらない。
けれど、それ以外は痛くもなんともないし、真上にはすんなりと上がるのです。
「背中合掌」ができないとて、
日常生活に支障があるわけもなく
そのうち治るだろうと気に留めていませんでした。
そのまま、一ヶ月近くが過ぎた頃です。
ふと、肩の骨の奥が痛むような気がしてきました。
気のせいではないその違和感に、
わたしは幼い頃の記憶が呼び起こされました。
子供のころの、肩を亜脱臼したときの痛みに似ていました。
もしかしたら、また…
と、確信に近い気持ちの答え合わせをするように、整形外科に向かいます。
勝手に思い込んだ、「亜脱臼」という
自己診断を持ったまま、診察室に入り、
先生に腕を委ねます。
レントゲンを撮り、
私の腕を軽く動かした医師は、
カルテに向き直り、
軽くため息のような息を吐くと、
予想を遥か彼方へと吹き飛ばす言葉を
告げたのです。
わたしの自己診断を打ち砕いた
診断名は…
「五十肩ですね」
ご・じゅ・う・か・た
私は静かに左肩をさすりながら、
地道にリハビリを続けています。
いつかまた、あの輝かしい
「背中合掌」を取り戻すために。
涼鈴suzu
