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ホルムズ封鎖が終わるのは「貯蔵タンク次第」|軍事力ではなくコストが決める時間

「ホルムズ海峡が封鎖されると、世界は石油不足になる。」

多くの人が、そう考えます。しかし、実際に最初に問題になるのは、原油が足りなくなることではありません。むしろ逆です。

「原油は余り始めます。」

輸送が止まることで、原油は市場に届かなくなるというより、むしろ置き場を失っていきます。

この問題は、石油を輸入する国も、輸出する国も、輸送する側も、そして市場も、最終的に同じ問題に直面します。

「原油を、どこに置くのか。」

そこで鍵になるのが、陸上の貯蔵タンクです。

ホルムズ海峡の封鎖がどれだけ続くのかは、軍事でも外交でもなく、この貯蔵タンクが決めます。
  

封鎖の時間を決めるのは、貯蔵タンク

輸出が止まっても、原油の生産は簡単には止められません。油田は蛇口のように、すぐ閉められるものではないからです。 

いったん生産を止めると、設備の維持や圧力の管理が必要になり、再稼働には数週間から数ヶ月かかることもあります。

そのため産油国は、輸出の道が塞がれても、しばらくは生産を続けるしかありません。

もちろん、ホルムズ海峡を避けて迂回ルートで輸出する方法もあります。たとえば、サウジアラビアのEast-Westパイプラインや、UAEのフジャイラへつながるパイプラインです。

しかし、これらの輸送能力は、1日約260万バレル。
ホルムズ海峡を通る量のわずか13%にすぎません。

港湾の処理能力、
タンカーの手配、
原油の種類の違い。

こうした条件を考えると、実際に動かせる量はさらに限られます。
大きな穴に小さな栓をするようなものです。

その結果、生産された原油は貯蔵タンクに溜まっていくだけです。

原油を海に捨てることは、国際条約が禁じられています。かといって、商業規模で燃やして処分することも現実的ではありません。

輸出は止まり、タンクは少しずつ満たされていく。
その間も、時間だけが過ぎていきます。
    

タンクが満杯になると…

貯蔵タンクが限界に近づくと、産油国は二つの選択肢に迫られます。

生産を続けながら貯蔵量を増やすか、それとも生産を減らすか。

しかし、どちらを選んでも、状況を打開するのは簡単ではありません。

産油国が巨大な貯蔵施設を持っていても、その容量には限りがあります。貯蔵とは本来、輸出までの一時的な調整のための設備です。輸出が止まってしまえば、その役割はすぐに限界に達します。

この状態で生産を続ければ、タンクは日に日に満杯に近づきます。しかし、貯蔵スペースはそれに合わせて増えるわけではありません。

やがて、生産をやめざるを得ない状況に追い込まれます。
   

一方、生産を減らせば、長期供給契約の違約金に加え、輸出収入の減少という負担が生まれます。 

減産によって石油価格が上昇すれば、収入を補える可能性もありますが、輸出が止まっていては、市場価格が上がるとは限りません。

封鎖が長引くにつれ、二つの選択肢はどちらも重くのしかかります。

そして、このコストは、時間と共に増えるだけでなく、加速していくのです。
  

産油国には時間がない

封鎖に関わる国々は、それぞれ耐えられる時間が違います。
その中でも、最も早く影響を受けるのは湾岸の産油国です。

サウジアラビア、UAE、クウェートの輸出システムは、ホルムズ海峡に直結しているため、輸出が止まれば、収入も止まります。

そして、その影響は、国家財政に直結します。

サウジアラビアの国家予算は、原油収入が大きな割合を占めています。クウェートでは、依存度はさらに高くなります。

これらの国々にとって、収入が途絶えるということは、政府の支出が維持できなくなることを意味します。

補助金、公務員の給与、インフラ投資など、石油輸出を前提に組まれた予算は、封鎖が長引くほど、綻びていきます。
   

封鎖の主体であるイランも、無傷ではいられません。

石油と天然ガスはGDPの約24%を占め、政府予算の約45%は石油収入に依存しています。

長年の制裁下でかろうじて維持してきた石油輸出が、自らの封鎖によってさらに打撃を受けることになります。

さらに、封鎖が長引き、湾岸産油国の財政が先に傾けば、その不安定化は中東地域全体に広がります。

そして、イラン自身にも跳ね返ってくるのです。
封鎖を外交カードとして使っても、その代償は膨らむばかりです。

産油国もイランも対立しています。しかし、長く耐えられる時間は、もはや残されていません。
   

封鎖の行方を決めるカギ

封鎖を終結させるための第一歩は、どこから始まるのか。
いくつかのシナリオが想定されます。

最も可能性が高いのは、産油国からの交渉です。

タンクが限界に近づき、財政への影響が表面化した時点で、産油国は表向きの立場を維持しつつ、イランとの落としどころを探り始めます。

公式な合意がなくても、特定の船舶や積み荷を黙認する形で、少しずつ通航が再開される可能性があります。

もう一つのシナリオは、中国が介入する場合です。

世界最大の原油輸入国である中国にとって、ホルムズ海峡の混乱は、エネルギー調達コストの上昇につながります。

その負担が大きくなれば、中国からの外交的圧力が強まり、封鎖の部分的な緩和が期待されます。

イランにとって、中国は最大の石油輸出先です。関係を損なうことは避けたいはず。その意味でも、中国からの圧力は、軍事力よりも現実的に効果があります。

いずれのシナリオでも、封鎖の解除は一度に起きません。

最初は軍の護衛を受けたタンカー、次に特定の国の船舶、そして徐々に一般の通航へと、段階的に進展していきます。

封鎖の終わりを決めるのは、外交の言葉ではありません。
最終的にものを言うのは、陸上にある貯蔵タンクの残容量です。
     

コストの限界が封鎖の時間を止める

今の現状では、この問題を軍事的に解決することは簡単ではありません。しかし、経済面には解決の糸口が見えます。

産油国は減産や生産停止のコストを、輸入国はエネルギー価格の高騰という負担を、それぞれ背負わなければなりません。

時間が経つほど、互いのコストは雪だるま式に膨れ上がります。

だから封鎖は、たいてい同じ形で終わります──互いの負担に耐えられなくなった瞬間です。
   

   


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