「泥の檻・改 シーン01・式マコトの部屋」
ChatGPTに書いてもらった原稿が割とおもしろかったので、そのまま使おうと思っていたのですが、読み返してみると矛盾があったり、もっとうまく書けそうだったりで全面リライト。
数か月ぶりの小説執筆ですが、腕は鈍っていなさそうです。よかったー。
前話はこちら。
「泥の檻・改 シーン01・式マコトの部屋」
儀式の準備があらかた整った頃、しのぶは言った。
「では、マコトの家に行ってくる」
「わかった。ならば私も一緒に」
オリウスは再び、霧となって闇に消えた。それを確認したしのぶは地下の闇の寺院を出て階段をのぼり、静かに自宅の外へと出た。
月明かりは薄く、街は静寂に包まれている。人に気付かれる恐れはない。なぜなら時間が止まっているから。周囲の動きは完全に停止し、しのぶ一人だけが静止した世界を歩く。
「確か、こっちだったな」
小高い丘から鬱蒼と繁る灌木をかき分け、明るい駅前方面へと向かう。商店街の先の住宅街に、式マコトの家はあるはずだった。しのぶはマコトと同じ高校に通っているのだが、教師、生徒すべての住所を把握しており、確認のため一度は訪れたことがあるのだった。
遠い遠い昔に、時間を止める能力を持った悪魔、オリウスとの契約を交わしたしのぶ。なので彼女自身自由に時間を止め、この世界を誰にも気付かれず、自由に行動できる。代わりに、オリウスのための生贄を捧げる「儀式」を、彼女はオリウスの求めに応じて、執り行うことになっていた。
しのぶがその能力を得たのは、江戸末期。関東地方の外れの山奥にある、炭鉱の村でだった。その頃は半年に1度くらいの頻度で、オリウスが生贄を求めていたのだけれど、いつしかしのぶ自身が、儀式を楽しむようになり、その頻度も増え、今に至っては月に1度、だいたい満月の夜に合わせて儀式を行うようになっていた。
「しかしオリウスは、なぜマコトを?」
しのぶは口元に軽くゆがめながら、歩き続けた。
今回のターゲットはイケメン男子、式マコト。オリウスとしのぶが契約を交わしてすでに250年余り。その間に、オリウスが男性の生贄を要求したこともたまにあったのだけれど、今回のように、ターゲットを指定しての要求は初めての事だ。どういう心境の変化だろう?
と、考えている間にしのぶはマコトの家の前に来た。黒い金属製の門をすっとすり抜け、玄関のドアもすり抜けた。階段をのぼった先の2つのドアの一つ、「マコト」というプレートの貼られた木製のドアのノブに、しのぶは手をかけた。鍵がかかっている。それを確認してしのぶは頭からドアをすり抜け、部屋の中を覗いた。
闇の中に式マコトがいた。彼は部屋の一角にひざまずき、床の上の数枚の写真を見ていた。またその中の1枚を手に取っていた。
それは彼の妹、式霧子の笑顔の写真だった。マコトはその写真に顔を寄せ、キスをしようとする姿で静止していた。
しのぶは、その光景を目にした瞬間、思わずため息をつき、頭を横にふった。
「……本当に、意味が分からない」
彼女は冷徹な目で式マコトの姿を見つめた。その姿はどうにも不愉快で、理解できなかった。彼の感情は兄妹の間にある絆を越えて、どうしてこんなにも歪んでしまったのか。
しのぶは無表情で、写真とマコトを交互にを見つめた後言った。
「これでは興覚めだ。儀式には使えない」
オリウスへの生贄としてならば、ターゲットがどんな人物かというのはあまり関係がない。しかししのぶの美意識が、それを許さなかった。生贄は美しくなくてはならない。その美しさが、恐怖と苦痛で歪むことこそ、儀式の本質なのだと。
しのぶはため息をつきながら、ゆっくり部屋を後にした。時間が止まっている世界で、彼女は次の獲物を探す。目に止まったのは隣のドアに貼られたプレート。「キリコ」
「イケメン男子マコトの妹、式、霧子か……」
無表情だったしのぶの口元が、冷たく微笑んだ。彼女の手がノブをつかみ、回した。鍵はかかっていなかった。そっとドアを開き、中を覗き込んだ。
(続く)
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