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第12話|美しい施工

福岡に来るのは、これで何度目だろう。

博多駅で山口と合流し、レンタカーに乗った。
サンエナジーはフルリモートの会社だ。
社員同士が直接顔を合わせることは、滅多にない。
つまり山口とは、今日が初対面だった。

高速に入ってすぐに、畑や低い丘陵が窓の外に広がった。

「現地を見てから、挨拶に行きます」
山口は両手で軽くハンドルを握ったまま、前を見て話していた。
声の調子は、オンライン会議で聞くときとほとんど変わらない。
「地権者のところと、あと自治体ですね」

山口は、技術的な話にあまり踏み込まない。
代わりに、地権者や自治体との調整を静かにまとめていく。

発電所は、設備だけで完成するわけじゃない。
土地を貸す人がいて、近隣に住む人がいて、行政の理解がある。
そのどれが欠けても、発電所は動かない。

工程は二泊三日だ。
一日目がネクサス工建の完工検査。
二日目がサンエナジーの引渡し検査、そのあと会食。
三日目が使用前自己確認。

発電所が完成に近づくと、検査が続く。
ヘルメットを被った人間たちが図面を片手に歩き回り、端末を覗き込み、番号を確認する。
施工会社、発注者、第三者。
何度も確認を重ねて、ようやく発電所は送電を許される。

現地に着いたとき、俺は思わず足を止めた。
斜面いっぱいに、黒いパネルが並んでいた。

——サラサラサラ

風が抜け、パネル下の草が波のように揺れた。
その緑の向こうで、黒いパネルが静かに太陽を受けていた。
まるで巨大な水面が、山肌に沿って広がっているようだった。

「丁寧に施工された発電所……、こんなにもきれいなのか」

思わずそう呟いた。
当初見たパース図とは、また違う美しさだった。

一本ずつ杭が打たれ、架台が組まれ、パネルが並べられていく。
ケーブルが引かれ、接続箱が据えられ、PCSが設置される。
そうやって、この景色は作られてきたのだ。

そのとき、パネルの列の向こうで人影が動いた。
作業をしていた桐生が、こちらに気づいたらしい。
手を止め、軽く会釈をした。

ヘルメットの下から見える顔は、少し日に焼けていた。
現場にいる時間の長さが、そのまま肌に出ていた。

俺も軽く頭を下げる。
桐生の表情に、わずかな誇らしさがあった。

施工した発電所を、発注者に見せる。
それは現場の人間にとって、少し特別な瞬間なのかもしれなかった。


合同会社sumriseも、こうした引渡しの現場に立ち会う。

きれいに完成した発電所が、これからも安全に動き続けるか。
それを確かめることが、sumriseの仕事だ。

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