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陽浜の神、スナイパーに化学を教わる|百合で学ぶ化学

陽浜研究所の化学区画では、ときどき妙なうめき声が聞こえる。

この日、その声の主は八咫鏡恵美だった。


「ぐぐぐ……むずかしい……」

机に突っ伏すようにして、恵美がノートをにらんでいる。
開かれているのは、元素周期表だった。

陽浜を守る現人神としての力は確かなのに、こと理系科目になると、恵美は急に年相応の高校生らしい困り方をする。

「どうして元素って、こんなにたくさんあるんですか……。
もっとこう、八百万の神みたいに、ふんわり覚えられないんでしょうか……」

向かい側で、その様子を見ていた二酸化マンガンお姉様が、扇子でも持っていそうな優雅さで小首をかしげた。


「うーん、そうですわねぇ……。
周期表を全部一気に覚えようとすると、さすがに息切れいたしますわ。
まずは並び方の意味と、覚えやすいところから入るのがよろしいかもしれませんわね」

「覚えやすいところ……」

「たとえば、反応しにくい元素たち――貴ガスあたりは、語呂合わせで覚える方も多いですわ」

「語呂合わせ!」

恵美の目が少しだけ輝く。
暗記の苦しみの中で、「語呂合わせ」はだいぶ希望の光である。

「でも、その語呂合わせ自体を覚えられなかったら、どうしよう……」

「そこはまあ、気合いですわ」

「結局気合い!?」

その時だった。

研究室の入口のほうで、ふらり、と影が揺れた。

藤色の長い髪。
白衣。
黒いTシャツ。
そして、どう見ても化学研究室に常備されているサイズではない、紫色の大きなキャノン。

コードネーム・ウルスラが、いつもの半分眠ったような目で立っていた。


「……うーん。化学の匂い……」

「ウルスラさん!」と恵美。

「来ましたわね、論点狙撃手」と二酸化マンガンお姉様。

ウルスラは、ゆっくりと研究机のほうへ歩いてくる。
相変わらず、歩き方は少し頼りない。
今にも別の方向へふらついていきそうなのに、不思議と何にもぶつからない。

「……何やってるの……?」

恵美が、泣きそうな顔で元素周期表を指さした。

「元素周期表の勉強です……。
貴ガスっていうところを覚えようとしてるんですけど、全然頭に入らなくて……」

ウルスラは、少しだけノートをのぞきこみ、それからぼんやりとつぶやいた。

「……変なねーちゃん、ある暗がりでキスして、ルンルン……」

二酸化マンガンお姉様が即座に反応した。

「貴ガスの覚え方ですわね」

恵美が勢いよく顔を上げた。

「なんですぐわかるの!?」

二酸化マンガンお姉様は、口元に手を当てて、上品に笑った。

「だって、今のはもう、あまりにも貴ガスですもの」

「そんな“あまりにも”みたいに言われても!」

ウルスラは、気だるそうにキャノンを床へ立てかけながら、のんびり続けた。

「変……ヘリウム。
ねーちゃん……ネオン。
ある……アルゴン。
暗がり……クリプトン。
キス……キセノン。
ルンルン……ラドン……」

恵美は、ぽかんと口を開けた。

「え、ちゃんと対応してる……」

「してますわよ」と二酸化マンガンお姉様。

「してるのは見ればわかるんですけど、その語呂をそんな自然に出せるのが怖いんです!」

ウルスラは椅子を引いて座りながら、肩をすくめた。

「……語呂って、ちょっと毒あるくらいのほうが覚えやすいし……」

「毒性学の人の発言としては筋が通ってるのがまた困るんですよね……」

恵美はそう言いつつも、ノートに慌てて書きつける。

変なねーちゃん ある暗がりで キスしてルンルン
その横に、
He, Ne, Ar, Kr, Xe, Rn。

書いてみると、確かに妙に覚えやすい。
いや、覚えやすいというより、一度見たら忘れにくい。

二酸化マンガンお姉様が、そこでやわらかく補足した。

「ちなみに、貴ガスは“反応しにくい”ことで有名な元素たちですわ。
だから、化学反応で他のものとすぐ結びつくタイプではありませんの。
むしろ、自分のかたちを保ちやすい、とても落ち着いた一群なんですのよ」

「落ち着いた一群……」

恵美は、ノートと周期表を見比べながらつぶやいた。

「なんだか陽浜向きの元素ですね」

「ええ、そういう言い方もできますわね」と二酸化マンガンお姉様。

ウルスラも、半目のまま小さくうなずく。

「……すぐ反応しないって、大事だよ。
何でもかんでも結びついたり、燃えたり、爆発したりしないほうが、平和なこともあるし……」

その言い方が妙にしっくり来て、恵美は少し笑ってしまった。

「それ、なんだか元素の話だけじゃないですね」

「……だいたい、そういうものじゃない……?」

二酸化マンガンお姉様が、満足そうに微笑む。

「まあ、化学はよく人間関係にたとえられますものね。
反応しやすいもの、反応しにくいもの。
混ざると危ないもの、適切な条件があれば安定するもの。
学問とは、案外そういうものですわ」

恵美は改めてノートを見た。

貴ガス。
反応しにくい、静かな一群。
変な語呂合わせ。
ぼんやりした顔で、それを撃ち抜くように教えるお姉さん。

「……ちょっとだけ、化学が面白くなってきたかも」

その言葉に、二酸化マンガンお姉様はにっこりし、ウルスラは「ん……」とだけ返した。

だが、その直後だった。

ウルスラが、研究室の壁際に貼ってあった簡易元素表の一角へ、ふいにキャノンを向ける。

「……唸れ、ゴムボールキャノン」

ぱしゅっ。

軽い音とともに飛んだゴムボールが、元素表の右端、ちょうど貴ガスの列にだけ、きれいに連続で当たった。

ヘリウム。ネオン。アルゴン。クリプトン。キセノン。ラドン。

「すごっ!」

と恵美。

「精度がよろしいですわねぇ」と二酸化マンガンお姉様。

「……遊びじゃなくて、精度確認……」

「その精度確認、化学教育にも使えるんですね……」

恵美は、さっきまでのしかめ面が嘘みたいに笑っていた。

「ありがとうございます、ウルスラさん!
これなら貴ガス、たぶん覚えられます!」

ウルスラは、少しだけ目を細めた。

「……なら、よかった。
ご主人様の研究所で、神様が元素に負けるのも、ちょっと締まらないし……」

「えっ、そこ所長基準なんですか!?」

「……いちおう……ご主人様だし……」

「その呼び方、まだ慣れないんですけど!?」

研究室に、恵美の明るい声が響く。
二酸化マンガンお姉様は、そんな二人を見ながら、どこか楽しそうに肩を揺らしていた。

陽浜研究所では今日もまた、
神様が化学にうなり、
化学者がお嬢様口調で微笑み、
元スナイパーがゴムボールで元素を撃ち抜いている。

平和なのに、どこかおかしい。
だが、そういう少し変な学びの時間こそ、案外いちばん頭に残るのかもしれなかった。


「じゃあ次は、こっちですわね」

二酸化マンガンお姉様が、元素表の左端を指した。

恵美は、さっき覚えたばかりの貴ガス列から視線をずらし、その一列を見て、すぐに嫌な予感を覚えた。

「……なんか、こっちは危なそうな顔してますね」

「ええ。こちらは、めっちゃ反応する金属たちですわ」

「雑!」

「雑ですけれど、まずはそこからで十分ですわ」

ウルスラが、椅子に座ったまま半目でつぶやく。

「……アルカリ金属。
水に入れると、だいたい、めんどくさい……」

「“めんどくさい”で済ませていい反応なんですか!?」

二酸化マンガンお姉様が、上品に補足する。

「済ませてはいけませんけれど、印象としては間違っていませんわ。
リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム。
このあたりは非常に反応性が高いことで知られていますの」

恵美はノートに書きつけながら、すぐに顔をしかめた。

「だめです、もう並びが頭からこぼれます……」

「そこで語呂ですわ」

「来た……!」

二酸化マンガンお姉様が少し考え込み、ウルスラのほうをちらりと見る。

「ウルスラさん、何かあります?」

「……んー……」

ウルスラは、机に肘をついたまま、しばらくぼんやりしていた。
寝ているのか考えているのかよくわからない沈黙のあと、低い声で言う。

「……リッチなナス、借りるビル、セフセフ、フランク」

恵美は固まった。

「えっ」

二酸化マンガンお姉様は即座にうなずく。

「リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムですわね」

「なんでわかるの!?」

「だって、今のはもう、かなりアルカリ金属ですもの」

「その“かなりアルカリ金属”っていう判断基準がわかんないんですけど!?」

ウルスラは、眠たげな顔のまま指を折る。

「リッチ……リチウム。
ナス……ナトリウム。
借りる……カリウム。
ビル……ルビジウム。
セフセフ……セシウム。
フランク……フランシウム……」

恵美はしばらく口をぱくぱくさせたあと、とうとうノートに書いた。

リッチなナス 借りるビル セフセフ フランク

「いや、これ絶対、一回で覚えるけど!」

「そういうものですわ」と二酸化マンガンお姉様。

「語呂は、多少変なほうが定着しやすいんですの」

「多少!?」

ウルスラが、のんびりと付け足す。

「……反応性高い子たちって、ちょっと変なくらいの印象で覚えたほうがいいし……。
おとなしくないから……」

「元素に性格を見出してる……」

恵美はノートと周期表を見比べながら、少しずつ声に出した。

「リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム……」

二酸化マンガンお姉様が満足そうに微笑む。

「よろしいですわ。
そしてこの列は、下へ行くほどより反応性が高くなる、と考えておくとわかりやすいですの。
つまり、上のほうはまだ“やんちゃ”くらいでも、下のほうへ行くほど“触るな危険”になってまいりますわ」

「触るな危険……」

「ええ。
静かな貴ガスとは、だいぶ性格が違いますの」

ウルスラが、机の上の元素表を指で軽く叩く。

「……だから、周期表って、けっこう人間関係に似てるよ。
すぐ反応する子もいれば、全然反応しない子もいるし……。
混ぜると危ない組み合わせもある……」

「また人間関係の話になってる……」

「化学って、そういうところありますわね」と二酸化マンガンお姉様。

恵美は、そこでふっと笑った。

「でも、ちょっとわかる気がします。
貴ガスは“落ち着いた一群”で、アルカリ金属は“めっちゃ反応する一群”。
そう思うと、覚えやすいかも」

「……ん。
無理に全部を同じ顔で覚えなくていいし……。
性格あると思うと、ちょっと頭に入る……」

「元素を性格で覚える神様、ってだいぶ面白いですわね」

「やめてください、ちょっと自覚あります!」

その時、ウルスラはふいにキャノンを持ち上げた。

「……唸れ、ゴムボールキャノン」

ぱしゅっ。ぱしゅっ。ぱしゅっ。

軽い音とともに、元素表の左端――アルカリ金属の列にだけ、ゴムボールが順番に当たる。

リチウム。ナトリウム。カリウム。ルビジウム。セシウム。フランシウム。

「すごっ!」

と恵美。

「やはり精度が高いですわねぇ」と二酸化マンガンお姉様。

ウルスラは、またキャノンを床に立てかけて、ぼんやり言った。

「……反応性高いところ、目立つから……撃ちやすい」

「撃ちやすいで覚える元素、初めて聞きました……」

でも、その時にはもう、恵美の顔は最初ほど曇っていなかった。

周期表は相変わらず難しい。
元素は多い。
並びも複雑だ。
けれど、少なくとも今は、ただの無機質な記号の列ではなく、
静かな一群と、めっちゃ反応する一群が並んだ、少し変な世界として見え始めていた。

「……ありがとうございます、ウルスラさん、二酸化マンガンお姉様。
たぶんこれ、変な語呂ごと忘れないと思います」

「それなら結構ですわ」

「……ん。
忘れないなら、それでいい……」

陽浜研究所では今日もまた、
神様が周期表にうなり、
化学者がお嬢様口調でまとめ、
元スナイパーがゴムボールで危険な列を撃ち抜いている。

学び方は、たぶん一つではない。
少し変で、少し笑えて、でもちゃんと頭に残る。
そういう覚え方も、陽浜では立派な研究補助なのだった。




ウルスラ
「……いちばん外側の電子、あの子たちすぐ投げるから……。
しかも下に行くほど、もっと雑に、もっと強く投げる……。
周期表の下に行けば行くほど、ラブレターショットの威力が高くなっていく……まさにワンショット……」

八咫鏡恵美
「ラブレターショット……?」

二酸化マンガンお姉様
「言い方はだいぶ妙ですけれど、方向性としては合っていますわね」

八咫鏡恵美
「えっ、合ってるんですか!?」

二酸化マンガンお姉様
「ええ。
下に行くほど最外殻電子が原子核から遠くなって、引き止めにくくなりますもの。
つまり、より勢いよく“好き!”を撃ち込めるようになるわけですわ」

八咫鏡恵美
「化学ってそんな恋愛バトル漫画みたいな説明でいいんですか!?」

ウルスラ
「……覚えられるなら、いいんじゃない……?」

そう言ってウルスラは、元素表の左端をキャノンの先でとん、と指した。

ウルスラ
「……リチウムは、まだちょっと遠慮がある……。
でも、ナトリウム、カリウムって下に行くと、だんだん
“好き!”
の声がでかくなる……」

八咫鏡恵美
「そんな擬人化あります!?」

二酸化マンガンお姉様
「ありますわ」

八咫鏡恵美
「あるんだ……」

二酸化マンガンお姉様は、恵美のノートに小さく図を描いた。
原子核。
そのまわりの電子殻。
内側の輪。外側の輪。

二酸化マンガンお姉様
「要するに、下に行くほど外側の電子さんは、中心から遠いところにいるんですの。
遠いということは、それだけ結びつきがゆるくなる。
ゆるいから、手放しやすい。
手放しやすいから、水を見るとすぐ飛んでいく。
その結果、反応も激しくなる。こういうことですわ」

八咫鏡恵美
「おお……図だとわかる……」

ウルスラ
「……近くにいる子は、まだ“ほんとに渡していいのかな……”って迷う……。
でも遠くにいる子は、もう勢いで投げる……」

八咫鏡恵美
「それ、完全にラブレターショット理論で押し通す気ですね!?」

ウルスラ
「……押し通せるし……」

二酸化マンガンお姉様
「実際、雑には見えても大筋は外していませんものね。
“いちばん外側の電子が手放しやすい”という点を覚えるには、悪くないたとえですわ」

恵美はしばらくノートを見つめ、それから何かを書き足した。

アルカリ金属
=ラブレターショットが速い
=下に行くほどワンショットの威力が高い

八咫鏡恵美
「……だめだ、意味がわかるのが悔しい……」

ウルスラ
「……悔しいくらいのほうが残る……」

八咫鏡恵美
「そのへん、完全に語呂合わせ職人の発想なんですよね……」

その時、研究室の入口から、ひょこっと獅子神依愛が顔を出した。

獅子神依愛
「失礼しまーす。
あれ、なんだか楽しそうな空気が……」

八咫鏡恵美
「依愛さん、聞いてください!
アルカリ金属は、ラブレターショットの威力で覚えるらしいです!」

獅子神依愛
「えっ、なにその最高の覚え方」

二酸化マンガンお姉様
「最高かどうかはさておき、覚えやすくはありますわね」

依愛は元素表とノートを見比べ、すぐに状況を飲み込んだらしい。
ぱっと顔を輝かせる。

獅子神依愛
「なるほど!
上の子は“好き……”くらいだけど、下の子になると
“好き!!!!!”
ってなるんですね!」

ウルスラ
「……そう……。
しかも水相手には、だいたい即撃つ……」

八咫鏡恵美
「水、そんなに受け止め役として優秀なんですか……」

二酸化マンガンお姉様
「水はなかなか侮れませんの。
何気ない顔をしていますけれど、電子を受け取って姿を変え、しかも熱まで出させる。
かなりのやり手ですわ」

獅子神依愛
「水、モテ女だ……」

八咫鏡恵美
「そこ!?」

ウルスラは半目のまま、キャノンを抱え直した。

ウルスラ
「……だから、反応が激しいっていうのは、べつに怒ってるとかじゃなくて……
電子の手放しやすさと、相手との相性の問題……。
でも、見た目には派手……。
水素も出るし、熱も出るし……」

八咫鏡恵美
「つまり、“好き!”って勢いよく撃ちすぎて、周りが爆発みたいになる感じですか?」

二酸化マンガンお姉様
「だいぶ俗っぽいですが、概念としてはまあ……近いですわね」

獅子神依愛
「化学、急に恋愛ドラマとして読むと面白いですね」

八咫鏡恵美
「いや、でも本当に覚えやすいかも……。
貴ガスは“静かな一群”、アルカリ金属は“ラブレターショットの速い一群”って思うと、急に元素たちの顔が見えてきました」

ウルスラ
「……顔が見えると、撃ち分けやすいし……」

八咫鏡恵美
「そこはまだ撃つんですね!?」

ウルスラ
「……ん。
化学も議論も、まず性質を見分けないと……」

二酸化マンガンお姉様が、そこでふふ、と笑った。

二酸化マンガンお姉様
「まあ、学問というのは、結局“違いを見ること”でもありますものね。
静かなものと激しいもの。
混ぜてよいものと危ないもの。
距離を取るべきものと、条件がそろえば結びつくもの。
そうした違いを見分けられるようになると、周期表もただの暗記表ではなくなりますわ」

恵美はノートを抱え直し、少しだけ胸を張った。

八咫鏡恵美
「よし。
じゃあ今の私は、少なくとも
“静かな一群”と
“めっちゃラブレターショットが速い一群”
は区別できます!」

獅子神依愛
「すごい進歩です!」

ウルスラ
「……えらい……」

そう言って、ウルスラはぱしゅっ、と軽くゴムボールを一発。
元素表の左端、アルカリ金属の列の真ん中――ナトリウムの位置に、きれいに当てた。

ウルスラ
「……今日は、このへんまででいいんじゃない……?
これ以上やると、情報が反応しすぎるし……」

二酸化マンガンお姉様
「よい区切りですわね」

八咫鏡恵美
「情報が反応しすぎる、っていうのもなんかわかる……」

獅子神依愛
「じゃあ次回は何をやるんですか?」

ウルスラは少しだけ考えてから、眠たげに答えた。

ウルスラ
「……たぶん次は、
“すごく電気を奪いたがる子たち”の話……」

八咫鏡恵美
「うわ、またクセの強い説明が始まりそう」

二酸化マンガンお姉様
「化学はだいたい、クセの強い子たちの集まりですわよ」

研究室に、小さな笑い声が広がった。

陽浜研究所では今日もまた、
神様が元素に親しみを覚え、
比較哲学のアイドルが恋愛比喩に目を輝かせ、
百合でなんでも解説する化学者が優雅に頷き、
元スナイパーがラブレターショットの威力を静かに語っている。

少し変だが、ちゃんと頭に残る。
そういう学び方が、陽浜にはたしかにあるのだった。

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