苦みを欲した夏
今年の夏、少し不思議なことが起きた。
人生で初めて食欲がない夏。
身体の調子が悪いわけではない。
ただ、いつものような「腹が減ったから食べる」という感覚はなく、腹減ってないけどもたないからで食べている。
ところが、妙に欲しくなるものがある。
それが、酸っぱいもの。
そして、苦いもの。

42年生きてきて、苦味を「欲しい」と思った記憶がない。
むしろ、ゴーヤなんて苦手な食べ物だった。
それなのに今年、自分の畑で育てているゴーヤを食べてみたら、
「……うまい。」
苦い。
なのに、うまい。
しかも、やたらとうまい。
そこで、ふと思った。
もしかしたら、身体は頭より先に、環境の変化を感じているんじゃないだろうか。
今年の夏は、とにかく暑い。
日本の夏は、昔と比べて明らかに暑くなっている。
もちろん、「本州が沖縄と同じ気候になった」と単純に言うことはできない。
けれど、暑さが増していけば、そこで暮らす人間の身体も、食べたいものも、少しずつ変わっていくのではないだろうか。
そう考えると、沖縄の食文化が面白く見えてくる。
ゴーヤ。
豚肉。
酸味。
汁物。
そして、ソーキそば。
暑い土地で長い時間をかけて育まれてきた食文化には、暑さの中でも食べやすく、身体に必要なものを取り入れやすくする知恵が詰まっている。
そして今、自分はそれを「頭で考えて」食べたいと思ったわけではない。
暑い夏を過ごしていたら、自然と苦味や酸味を欲するようになった。
そして、畑ではゴーヤが美味しく育っている。
なんだか面白い。
気候が変わる。
植物の育ち方が変わる。
人間の身体も変わる。
そして、食べたいものまで変わっていく。
そう考えると、食文化というものは、人間が頭で作ったものだけではないのかもしれない。

その土地の気候。
そこで育つ植物。
そこに暮らす人間の身体。
それらが長い時間をかけて、互いに影響し合いながら生まれてきたものなのだろう。
そして今年の夏、僕の身体にも小さな変化が起きた。
42年生きてきて、初めて苦味を欲したんだ。
体にこもった熱を逃がす:ゴーヤに含まれる「モモルデシン」や夏野菜の苦味成分には、体にこもった余分な熱を下げ、自律神経の乱れを整える作用があります。
胃腸の働きを活発にする:夏の暑さで低下しがちな胃液の分泌を促し、食欲を増進させて夏バテを防ぎます。
高いデトックス効果:山菜やゴーヤの苦味成分(アルカロイドなど)は、体内の老廃物や水分を排出する利尿作用が強力です。
昔は苦手だったゴーヤが、今は美味い。
もしかするとこれは、単なる味覚の変化ではないのかもしれない。
自分の身体が、今の季節を感じ取っている。
暑さを感じ、環境に合わせ、食べたいものを変えている。
そんなふうに考えると、
「身体って、ちゃんと自然と繋がっているんだな」
と思う。
今年の夏は、ゴーヤに導かれ苦みの凄さを知る亊ができた。
42年目の夏。
初めて、苦味がうまい。
