「プク、それは君の値札じゃないよ」|閑古鳥雑貨店のプク
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開店前、小物棚の一角を、黒白の猫のために空けました。
今日から店に並べる「モーリーキーリング」です。
前足をそろえて寝そべった姿から、名前は「ごろ猫」と「お座り猫」。
レジに近い棚へ置き、小さな札を添えました。
プクが足元までやってきました。
棚の猫を見上げ、届いた箱の匂いを確かめると、窓辺へ戻っていきました。

昼過ぎ、近所の花屋の吉田さんがやってきました。
茎が短くなって売り物にならない花を、ときどき一輪だけ持ってきてくれる人です。
その日は、新聞紙に包んだ白い花でした。
レジの上に鍵を置き、両手で花を小瓶へ挿します。
鍵には、色の薄くなった赤い紐が結ばれていました。
端はほつれ、細い糸が何本か出ています。
花を置き終えると、店内をゆっくり歩きました。
小物棚の前で足を止め、黒白の猫を手に取ります。
革の背中を親指で撫で、銀色のリングを一度だけ動かしました。

「これは、鍵につけるの?」
「はい」
手にした猫を、レジの上の鍵の横へ置きました。
「これをお願いします」
会計を終えると、吉田さんは赤い紐の結び目を指でつまみました。
「はさみ、借りてもいい?」
小さなはさみをお渡ししました。
受け取ったはさみで赤い紐を切り、代わりに銀色のリングを鍵へ通します。
黒白の猫は鍵と一緒に手元で揺れ、そのまま鞄の中へ入っていきました。
吉田さんはいつものように短く手を振り、帰っていきました。
レジ横には、白い花が残りました。
夕方、札を片づけに行くと、空いた棚にプクが座っていました。
前足の下から、「ごろ猫」の文字と値段がのぞいています。
「プク、それは君の値札じゃないよ」
プクは動かなかったので、札のほうを片づけました。
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