音を織り、織物を聴く|WAVE WEAVE ― 音と織物の融合|カールステン・ニコライ|インスタレーション

1階は店舗 ギャラリーは2階に
(写真:和樂webさんより)

―音を織り、織物を聴く―
1. 織物が大好きな電子音楽家、
カールステン・ニコライ(アルヴァ・ノト)
電子音楽と伝統的な西陣織。
一見、まったく接点のなさそうなこの二つが、カールステン・ニコライ(アルヴァ・ノト)の手によって出会いました。
本展は、彼の長年の「織物好き」から生まれたといっても過言ではありません。
音の構造を目に見える形にし、それを実際の織物に落とし込む。詩的でありながら密度の濃い試みです。
さらに、彼は織物について宇宙にまで広げて語っており、壮大な物語を見ていることがわかりました。
「織機は宇宙創造の象徴であり、個々の運命が織り込まれる構造体である。多くの文化において、時間そのものが織られてきた」
2. カールステン・ニコライとは?
アルヴァ・ノト名義で、坂本龍一とコラボレーションしたり、ヴェネツィア・ビエンナーレやドクメンタなどの国際的な芸術展に出品したりと、現代芸術の最前線で幅広く活躍するアーティストです。
旧東ドイツの織物産業の街で育った彼は、早くから織物の意匠図(設計図)に関心を持ち、収集を続けてきたそうです。
そして今回の展示はたった二点!
でも、それで十分!
作品は以下の二つです。
・《Wave Weave》:22分の映像作品
・《Sono Obi Landscape》:音楽を織り込んだ一本の帯

(映像作品、22分、2025)
シート席に座って鑑賞できます

(サウンド+絹織物、310×4400mm、2025)
3. なぜ電子音楽と織物なのか?
理由は二つあります。
一つ目は、ニコライ自身が1,000点以上の紋意匠図(織物の設計図)を所有するほどの織物愛好家であること。
二つ目は、織物が「デジタルメディアの原点」と呼ばれるほど、技術革新の歴史を持つ産業だったことです。
その象徴が「ジャガード織機」です。デザインに対応した「パンチカード」で経糸を自動制御する仕組みは、後のコンピュータ技術の基盤になったとも言われています。明治時代に日本へ持ち込まれ、いち早く取り入れたのが京都の西陣織でした。

4. 鑑賞は感性フル稼働だけでOK!
難しく考えなくて大丈夫
理屈っぽく聞こえるかもしれませんが、感性だけでも十分楽しめます。没入して観入る人もいれば、心地よくて眠ってしまう人もいるくらい。
ただ、背景を知ると鑑賞がより深まるので、二つの作品を簡単に説明しておきます!
5. 《Wave Weave》
視覚と聴覚が共振する「織りの時間」

西陣織メーカーHOSOOの工房と織機を舞台に、ニコライが織物のディテールや制作工程を極限まで精密に撮影し、自身の電子音響と同期させた約22分の映像インスタレーションです。
糸の交差、織機の反復運動、素材が生まれる風景などが、静謐で詩的なリズムとして立ち上がり、目と耳に直接届く「織りの時間」を体感させます。
解説抜きでも、光・揺らぎ・反復・音の噛み合いが気持ちよく、感性だけで十分に没入できる作品です。
この映像の音楽は、織物作品《Sono Obi》の帯のパターンを生成するのに使われたのと同じ作曲データに基づいていて、逆に映像に現れる織物は、その音をソノグラム(音の可視化)として物質化したものでもあります。
つまり、音→ 視覚パターン → 織物 → 映像 → 音 が互いに影響し合うループ/フィードバック構造になっているのです!
タイトルのWAVEは波、WEAVEは織る、を意味します。
会場は撮影OKとご案内いただきましたが、フラッシュはNGとのこと。その他のルールはスタッフさんにご確認ください。
*以下の画像は無料の冊子から転載





この辺りから、織機の反復と音の粒が重なって、理屈抜きに呼吸が整う感じが心地良くありました。







6. 《Sono Obi Landscape》
音楽を織り込んだ「ソノグラムの帯」

電子音楽をソノグラム(時間と周波数の変化を画像として表したもの)に変換し、その模様を着物の帯として織り上げた作品です。
作曲は、過去のソノグラムや視覚的要素の蓄積から、ニコライ自身の心象イメージとして生み出されたもの。頭の中で音の絵柄をイメージしながら作曲したなんてすごいですね!


スペクトグラム(ソノグラム)の見方
• 横軸:時間
• 縦軸:周波数
• 濃淡:音量
これは、いわば「音の波形図・エコー画像」であり、この帯には音楽の情報が物理的に織り込まれているのです。
現時点で再生装置はありませんが、理論的には再生可能だそうです。

7. 音を織り、織物を聴く
坂本龍一との親和性
今回の展覧会は「音を織り、織物を聴く」試みと言えます。
2025年3月まで東京都現代美術館で開催されていた、坂本龍一「音を視る 時を聴く」展と通じるものがあります。あの展覧会は、坂本が生前に構想した「音と時間」をめぐる没入型インスタレーションを軸にしていました。
実は、そのコラボレーション・アーティストの一人がカールステン・ニコライでした。
坂本は「音を空間として立ち上げる」方向へ。ニコライは「音を視覚構造として扱い、別のメディアへ翻訳する」方向へ。二人のコラボレーション史が、その歩みを証明しています。
《Wave Weave / Sono Obi》は、坂本が探っていた「音と時間の体験」の延長線上にありながら、西陣織というもう一つの「時間のメディア」を重ねたものと言えるでしょう。
音は聴くだけのものではなく、織られ、保存され、視覚として現れ、そしていつか再び聴かれるかもしれない。ここにあるのは「音の器としての空間」を超えた、「音の器としての織物」という新しい地平なのかもしれません。
入場は無料です。
こんな体験を無料で提供してくださることに、申し訳なくなるほどでした。
展示室を出ると、1階は HOSOO のショールームになっています。
西陣織の伝統技法を活かしつつ、現代のインテリアやファッションに落とし込んだ新商品が並び、自由に手に取って見せてもらえます。
どれも「伝統が未来に繋がっている」ことを教えてくれます。
スタッフの方々は皆さん気さくで、質問すると丁寧に織りや素材の話をしてくださいました。

「日めくりカレンダー」も売っていました
(画像はTENPOより https://tempojpn.com/)
Information
WAVE WEAVE ― 音と織物の融合[世界初公開]カールステン・ニコライ
会場:HOSOO GALLERY
住所:〒604-8173 京都市中京区柿本町412 HOSOO FLAGSHIP STORE 2F交通機関:烏丸線・東西線の烏丸御池駅/6番出口より徒歩2分
会期:2025年11月13日(木)~2026年3月8日(日)
時間:10:30–18:00(祝日・年末年始を除く、入場は閉館の15分前まで)
入場無料・予約不要
主催:株式会社 HOSOO COLLECTIVE
協力:Studio Carsten Nicolai、Galerie EIGEN+ART Leipzig/Berlin
ゲスト・キュレーション:阿部一直
展示監修:井高久美子
ディレクション:細尾真孝
宣伝美術:森田明宏
プロジェクト・マネージメント:渡部里奈
Webサイト:https://www.hosoogallery.jp/exhibitions/wave-weave/


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