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過去を問い詰める1on1から、未来志向の問いへの転換。詰問になってしまった実例と、切り替えてからの変化について

8月16日、日曜日
こんにちは とらっきーです。

マネージャーになりたての頃、あるメンバーに新しい案件を任せた時、
私はただ「これ、やってみて」とだけ伝えたことがあります。
案件の背景も、何を目指しているのかも説明せず、
資料だけ渡して終わりでした。
本人なりに考えてやってくれたのですが、上がってきたものは正直、
完成度がかなり低いものでした。
その時は「まだ経験が浅いから仕方ない」と片付けていましたが、
今振り返ると、これは本人の力不足ではなく、
こちらの渡し方・依頼の仕方が悪かったのだと思います。

何もヒントがない状態で「やってみて」と言われても、
何を軸に考えればいいのか、どこまでが正解の範囲なのか、
本人には見えていません。
見えていない状態で出したアウトプットが、
こちらの期待とズレるのは当然です。
ここに気づいてから、任せ方の順番を変えました。

いきなり任せるのではなく、先に大枠を渡す

今は、案件を任せる前に、必ず大枠を先に共有するようにしています。
何のためにこの案件をやるのか、成果としてどんな状態を目指しているのか、この2つだけは先にしっかり伝えます。
そのうえで、具体的な進め方や細かい判断は本人に委ねます。

先ほどの「これ、やってみて」の反省を踏まえて、
次に似たような案件を任せた時は、渡し方を変えてみました。
「この案件は、来期の顧客との関係を長く続けるためのものだから、まず信頼を積むことを優先してほしい」と、目的の部分を先に伝えたのです。
具体的な進め方は一切指示していません。
それでも、出てきたアウトプットは以前とは比べものにならないくらい、
狙いに沿ったものになっていました。
本人に聞くと「目的さえわかっていれば、あとは自分でどうにか考えられる」と話していて、これが一番印象に残っています。

大枠さえ握れていれば、判断に迷った時に立ち返る軸ができるので、
アウトプットの方向性が大きくズレることはほとんどなくなりました。
逆に、大枠を渡さないまま「まずはやってみて」だけを渡すのは、
地図もコンパスも渡さずに「好きな場所に行ってきて」と言っているようなものです。
プライベートで言うと、何を食べたい、どこにいきたいか話している中で、
なんでもいい!やどこでもいい!と同じような感覚だと思います。
自由に見えて、実は一番動きにくい状態を作ってしまっています。

これは最近のマネジメント研修の議論とも重なる部分があります。
1on1は上司が部下の成長のために時間を割き、コーチングスキルを活用しながら部下の課題解決や目標達成を支援する場だとされていますが、
1on1とコーチングは似ているようで実は別物で、この2つを混同すると現場が混乱すると指摘されています。
新しい環境に入ったばかりの人には、まず安心感を作ることが最優先で、
コーチングだけで進めようとしても機能しにくいとされています。
最近話題になった心理的安全性ですね!

つまり、いきなり質問だけで本人の答えを引き出そうとする前に、
土台となる安心感と方向性を先に渡しておく必要があるということです。
私が最初に失敗した「これ、やってみて」は、まさにこの土台を飛ばしていたのだと思います。

過去を問い詰めるより、未来を一緒に設計する

任せ方だけでなく、1on1での会話の仕方も変えました。
以前は、うまくいかなかったことがあると「なぜそうなったのか」を掘り下げる質問が中心でした。原因を明らかにすること自体は大事なのですが、
これだけを繰り返すと、1on1が過去を問い詰められる場のように感じられてしまいます。

今は、うまくいかなかった話が出た時も、「じゃあ次はどうする?」「そのために何を一緒に変えられる?」という、
未来に向けた問いに早めに切り替えるようにしています。
原因の分析は簡潔に済ませて、
そこから先は「これからどうするか」に時間を使う。
この順番に変えてから、1on1の空気が明らかに軽くなりました。

以前、案件がうまく進まなかったメンバーとの1on1で、「なぜこうなったと思う?」を何度も重ねてしまい、本人が徐々に言葉少なになっていき、関係値も徐々に開いていったことがあります。
悪気はなかったのですが、結果的に詰問のような空気になってしまいました。次の1on1では、原因の確認は一言だけにとどめて、すぐに「次の案件では、どこを一緒に工夫できそうか」という話に切り替えてみたところ、
本人から自発的にアイデアが出てくるようになりました。
同じ人でも、問いの向きひとつで反応がここまで変わるのかと、
正直驚いた出来事でした。

世代によって指示への反応の仕方が違うとも言われていて、
指示を出してもなかなか動かない、褒めているつもりがプレッシャーになっているといった悩みを抱えるマネージャーは少なくないようです。
過去を問い詰める形の対話は、こうしたすれ違いをさらに広げてしまう可能性があると感じています。未来志向に切り替えることで、部下も「責められている」ではなく「一緒に考えてもらえている」と感じやすくなるようです。

これは、指示の出し方そのものにも当てはまる話だと思います。
私が育ってきた環境では、細かく指示を出さずに任せることが「信頼」だと捉えられていた面がありました。ですが今のメンバーにとっては、大枠すら渡されないまま任されることは、信頼ではなく単なる放置に感じられることもあるようです。世代が違えば、同じ「任せる」という行為の受け取り方も変わってくる。ここに気づいてから、大枠を渡すことは、相手への配慮でもあるのだと考えるようになりました。

大枠を渡し、未来を一緒に見る

任せ方も、1on1での会話も、根っこにある考え方は同じです。
何もない状態で自由だけを渡すのではなく、先に大枠という土台を渡す。
過去だけを掘り下げるのではなく、そこから未来へ視点を移す。
どちらも、相手を突き放すのではなく、
一緒に前を見る姿勢に近いものだと思います。

この2つを続けてきて感じるのは、マネジメントというのは、
部下の代わりに答えを出すことでも、部下を試すことでもないということです。土台を渡し、視点を未来に揃え、そのうえで本人が自分の答えにたどり着くのを一緒に見守る。手も口も出しすぎず、かといって何も渡さないわけでもない。このちょうどいい距離感を探り続けることが、今の自分にとってのマネジメントの実態に近いと感じています。

もし今、部下に任せた仕事の質にもどかしさを感じていたり、
1on1がなんとなく重い空気になっていると感じているなら、
渡している情報の量と、話している時間の向きを、
一度見直してみてください。
案外、悪いのは本人の能力ではなく、渡し方や話す方向だったりします。

正直に言うと、大枠を渡すことも、未来志向で話すことも、
最初は少し歯がゆく感じました。
細かく指示を出したほうが早いですし、原因を徹底的に掘り下げたほうが仕事をしている実感もありました。
それでも、渡し方と問いの向きを変えてから、部下が自分の言葉で考え、
自分の言葉で次の一手を語るようになった姿を見ると、
この歯がゆさは手放してよかったと思っています。

とらっきー

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