天然甘味料へのこだわりとアンチドーピング認証、両方を同時に満たす製品は思ったより絞られる
患者やアスリートから「甘味料は天然由来がいい」という相談を受けることは多いが、同時に「アンチドーピング認証も欲しい」まで条件に加える人は少ない。この2条件を同時に確認すると、選択肢は一気に絞り込まれる。「甘いから危険」ではなく、認証の有無という別軸を組み合わせて考える必要がある、という話をしたい。
なぜこの2条件を同時に求める必要があるのか — 通説の検証
アンチドーピング認証を求める理由はサプリメント汚染のリスク回避である。Geyer et al.(2004, International Journal of Sports Medicine)は13か国で販売された栄養補助食品634品を分析し、約15%(94品)からアナボリックステロイドを検出した。いずれも製品ラベルには記載されておらず、外見から判別することは不可能だった。Jagim et al.(2023, Frontiers in Sports and Active Living)の分析では875製品のうちシブトラミン248件(28.3%)、テストステロン等のアナボリックアンドロゲンステロイド228件(26.1%)など、多数の禁止物質が検出されている。WADA(世界アンチ・ドーピング機構)の厳格責任原則により、検査で禁止物質が検出されれば摂取が意図的だったかどうかに関わらず違反が成立し、「知らずに摂取した」という主張は免責にならない。
一方、人工甘味料を避ける理由としてアスリート文脈で注目されているのは腸内環境への影響だ。Suez et al.(2022, Cell)は健康成人120名を対象としたランダム化比較試験で、サッカリンとスクラロースが腸内細菌叢を変化させ耐糖能を有意に障害することを報告した。ステビアとアスパルテームも腸内細菌叢の変化を引き起こしたが、耐糖能への影響は限定的だった。この腸内環境の変化がパフォーマンスや免疫機能にどう影響するかは、まだ研究の蓄積が必要な段階である。この2つの動機はまったく別の軸であり、混同して語られがちなのが気になっている。
認証の種類でどう違うのか — データで見る
Informed Choice(LGC Group・英国)は285物質以上を対象に、市場で購入した製品を月次でブラインドテストする方式だ。上位版のInformed Sportは同じくLGC社の運営だが、出荷前の全バッチを検査する点で異なる。NSF Certified for Sport(米国)は290物質以上を対象に、製造施設の監査と製品検査を組み合わせる。日本では2019年3月にJADA(日本アンチ・ドーピング機構)の認証制度が終了しており、国内ブランドの多くはInformed Choiceへ移行した。Martinez-Sanz et al.(2017, Nutrients)は市販サプリメントの12〜58%に禁止物質の汚染が報告されているとレビューしており、いずれの認証方式であっても認証済み製品を選ぶことで汚染リスクは低減できる。
両条件を満たす製品はどれか — 現場からの視点
2026年3月時点でPF記事が確認した範囲では、人工甘味料を使わず天然甘味料(羅漢果・ステビア等)を使用し、かつInformed Choice認証を取得している製品はBAZOOKA(WPHは羅漢果、WPCは羅漢果・ステビアでInformed Choice取得済み)、MADPROTEIN ホエイプロテイン(ステビア・Informed Choice)、uFit ホエイプロテイン(ステビア・Informed Choice)の3ブランドに絞られる。ブランド名のアルファベット順で並べた。なお、ULTORA ホエイダイエットプロテインは2025年1月にInformed Choice認証プログラムから自主撤退しており、2026年3月時点では対象から外れている。この「絞られる」という評価は具体的なブランド調査の結果であり、今後認証取得や新規参入で選択肢が増える可能性はある。
価格帯には差があり、加水分解工程のコストがかかるWPH製法は、同じブランド内でもWPC製法より価格が上がる傾向がある。2026年3月時点の価格ではBAZOOKA WPHが定期¥8,445/600gと4製品中で最も高く、MADPROTEIN(約¥3,400/kg)・uFit(約¥3,600/kg)はBAZOOKA WPC(定期¥3,840/900g)と近い価格帯にある。吸収速度を重視しないなら、WPC製法の認証付き製品で条件は十分に満たせる。
選ぶときに何を確認すればいいか — 判断基準
私が確認を勧めているのは、①原材料欄の甘味料表示が「不使用」なのか「天然由来のみ」なのかの区別、②認証プログラムの検査方式(事後検査のInformed Choice・事前検査のInformed Sport・施設監査を含むNSF)の違い、③WPC・WPHどちらの製法が自分の用途に必要か、④認証の有効期限や撤退履歴(ULTORAのような例もある)を購入時点で確認すること、の4点である。大会出場でWADA厳格責任原則の対象になるかどうかも、認証の重要度を左右する要素になる。
まとめ
天然甘味料と認証、どちらも満たす製品は現時点で数が限られている。ただし「限られている」ことと「選ぶ価値がない」ことは別の話であり、価格差の多くはWPC・WPHという製法の違いに起因する。認証は自己防衛の手段であり、天然甘味料は腸内環境への配慮という別の軸だ。この2軸を混同せず、それぞれの根拠を確認する習慣が実務的だと思う。
