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【参加レポート】宇宙開発を「文化」と「芸術」から考える〜ミッション∞インフィニティ展 トークイベント〜

東京都現代美術館で開催中の「ミッション∞インフィニティ|宇宙+量子+芸術」展。皆さん、もう行かれましたか?


先日、この展覧会の関連プログラムとして開催されたトークイベント「人文社会科学の視点から、宇宙開発と文化を考える」に参加してきました。

宇宙開発というと、ロケットや衛星といったテクノロジー(理系)のイメージが強いですが、今回は人文社会科学(文系)や芸術(アート)の視点から宇宙を語り尽くすという、非常に刺激的な2時間でした。会場内は撮影禁止だったため、私の必死のノートテイキングをもとに、当日の熱気と学びを皆さんにおすそ分けしたいと思います!

登壇されたスペシャリストたち

今回は、宇宙開発、ビジネス、建築、そしてアートの最前線で活躍される豪華な顔ぶれが揃いました。(敬称略) 柳川 孝二(宇宙人文・社会科学研究会代表)、佐野 智(国際社会経済研究所)、大野 琢也(鹿島建設)、大塚 成志(JAXA)、森脇 裕之(多摩美術大学、本展参加アーティスト)、モデレーターの岡田 裕樹(神戸大学大学院)の皆様です。

宇宙開発には「文系の知」が不可欠(柳川 孝二氏)

最初のプレゼンは、宇宙人文・社会科学研究会の柳川氏。2030年代には日本人も月面に降り立つ計画(アルテミス計画など)が進む中、「月に行って、その後どうやって暮らすのか?」という議論には、人文社会科学の知見が絶対に必要だと力説されました。

柳川氏が提示した「宇宙活動のマンダラ図」が印象的でした。自然科学と人文社会科学を掛け合わせ、最終的には地球と宇宙の調和や新しい人類社会の構築を目指すという壮大なビジョンです。 エンジニアリング、サイエンス、デザイン、アートをひとつの円卓に乗せて議論することで、新しい宇宙の概念が生まれるというメッセージに深く頷きました。

人類が宇宙を目指す「50の理由」(佐野 智氏)

続いては、国際社会経済研究所の佐野氏。人類がなぜ宇宙に行くのか、その理由をプリミティブな冒険心から始まり、ビジネス、安全保障、そして哲学的な領域まで「50の理由」として整理してくれました。

特に面白かったのは、宇宙に出ることで新しい哲学や倫理が生まれるという視点です。異なる重力環境で何世代も暮らしたとき、私たちはそれを「人類」と呼ぶのか?宇宙空間での知性の拡張(AIとの融合など)が、次の文明を起動するOS(羅針盤)になるのではないか、という未来予測はSF小説のようでワクワクしました。

重力による「人類の分断」を防ぐ宇宙建築(大野 琢也氏)

鹿島建設の大野氏からは、度肝を抜かれる宇宙建築の構想「ルナグラス」の紹介がありました。(※アイキャッチ画像の美しいパースがそれです!)

月面の重力は地球の6分の1。もし月面で生まれ育つ世代ができたら、彼らは地球の重力(1G)に耐えられず、地球に帰れなくなるかもしれない。それは「重力による人類の分断」という悲劇を生むのではないか。

大野氏は、この課題を物理的に解決するため、遠心力を利用して月面に「地球と同じ1Gの重力」を発生させる巨大なグラス型の人工重力施設を構想しました。会社からの命令ではなく、大野氏個人の「人類の未来への危機感と探求心」から生まれたこの美しくも骨太なアイデアに、会場も魅了されていました。

宇宙と地域を「アート」が繋ぐ(森脇 裕之氏・大塚 成志氏)

最後は、JAXAの大塚氏とアーティストの森脇氏による対談。テクノロジー中心になりがちな宇宙開発において、いかにして一般市民や地域と繋がっていくか。そのハブとなったのが「種子島宇宙芸術祭」の取り組みです。

大塚氏が種子島に赴任していた際、美しいロケット発射場があるにもかかわらず、宇宙と地域の連携に課題を感じていたそうです。そこに森脇氏たちアーティストが入り、種子島の洞窟にプラネタリウム(メガスター)を持ち込んで上映するなど、地元の人も驚くようなアートプロジェクトを展開しました。

ロケットの打ち上げという強烈なテクノロジーの風景を、アートというフィルターを通すことで、宇宙がより身近な「文化」として地域に根付いていくプロセスが語られました。

パネルディスカッション:アートがもたらす「多様性」

モデレーターの岡田先生が、複雑な議論を見事にまとめてくださいました。

科学や技術は「普遍的な真理」を求めるベクトルを持っていますが、アートはその逆で、正解のない「多様性」を生み出すアプローチです。宇宙という未知のフロンティアに進出するからこそ、特定の価値観に縛られない多様な視座(アートの思考)を確保しておくことが、人類が生き残るための鍵になる。

宇宙空間から地球を眺めることで国境の無意味さを悟る「オーバービュー・エフェクト(概観効果)」のお話もありましたが、宇宙開発は単なる技術競争ではなく、「私たちが人間としてどう生きるか」を問い直す壮大な文化事業なのだと強く感じました。

あっという間の2時間。宇宙開発に対する見方が180度変わる、知的好奇心が満たされるイベントでした。 「ミッション∞インフィニティ」展は東京都現代美術館でまだまだ開催中です。アートを通じて宇宙を体感できる貴重な機会ですので、皆さんもぜひ足を運んでみてください!



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