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「芸」はしたくない犬

先述のとおり、ニコは9か月を迎える3日前に我が家にやってきました。
それまではペットショップのケージの中にいて、外にお散歩に出たこともなく、名前で呼ばれることも、しつけをされることもありませんでした。

そんなわけで、「お手」「お座り」「待て」などを教えるのにも、最初は少し苦戦しました。
食事の前に「お手」「お座り」を、散歩などの際に「待て」を覚えてもらおうとしても、頭ごなしに「お手!」「お座り!」と言うのでは、嫌な顔をして言うことを聞こうとしないのです。
「なんで、そんなことしなくちゃならないの?」とでも思っているかのようでした。

これまでのわんこたちは割と喜んで、言われたことに従って芸を覚えて得意げにやってみせたものですが・・・
なので、ニコには「褒め戦術」を活用し、言われたとおりの芸ができたときには大げさに「えらいねえ」を連発するようにして、「お手」「お座り」「待て」だけは覚えてもらいました。
人間の言うことに耳を傾けて、立ち止まることが必要な場面もあるからです。

でも、「伏せ」とか「お回り」「ワン!」みたいなプラスαのものにはさらさら興味がないようで、やろうとしないまま今日に至ります。

それに、散歩のときに待つ必要があるときの「待て」は言うことを聞くようにはなりましたが、ご飯のときに「待て」と言われるのはとても嫌なようで、「待て」と言われても気にすることなく、出されたらすぐにむしゃむしゃ食べ始めてしまいます。

なので、私も犬の芸として、「伏せ」やご飯の際の「待て」までしっかりさせなくてもいいかな、と思うようになりました。
先代はご飯を前にすると我を失ってがっついてしまうので、落ち着かせるためにも少し「待て」の時間を持っていたのですが、ニコは我を失うまでにはならないので・・・
人間だって、食べようとしているところを「待て!」と言われたら、嫌な気分になるのに近いかな?と思って、無理にさせようとするのはやめることにしました。

そんなニコですが、この数年で、一緒にソファに座ってくつろいでいる際に
「いいダックス〜」
「いいダックスの人〜?」
みたいな呼びかけをして手を挙げてみせると、お手してきたり、ハイタッチのように人間の手のひらめがけてタッチしてきたりするようになりました。

これは、元は先代ダックスはかなり言葉を覚えるのが得意で、
「いいダックスの人〜?」
だとお手やハイタッチをするのに、
「悪いダックスの人〜?」
というと決して手を挙げなかったことを思い出したことから始まりました。

ニコは、先代ほどには言葉を覚える力はないのですが、「いい」とか「お利口」「えらいねえ」「ありがとうね」みたいな良い響きの言葉はわかっているようです。

なので、「芸」というよりは、飼い主との楽しいコミュニケーションの一つとして、喜んでやってくれるようになりました。

ニコのこの「芸をしろと命令されるのは嫌だ」というスタンスのおかげで、私の中にあった「犬だから芸を覚えるもの」「覚えたほうがよい」という先入観は、いつの間にかなくなっていました。

一緒に暮らすうえで本当に必要なことだけを、無理強いせずに少しずつ覚えてもらえば、それで十分なのだと思えるようになったのです。

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