富士山麓をめぐる旅|森と水の記憶
新幹線に乗るたび
窓の向こうに
富士山が見えると
つい目で追ってしまいます。
神々しくて
美しい山。
遠くから眺めるだけでも
なぜか心が浮き立つ。
もっと近くで
富士山を見てみたい。
どんな景色が広がり
どんな空気が
流れているんだろう。
そんな思いから
富士山麓を一周する
車の旅に出かけました。
深い森の中へ
最初に訪れたのは
北口本宮冨士浅間神社。
1900年以上の昔から
静かにそこにある。

鳥居をくぐると
ひんやりと
湿り気を帯びた木の匂い。
樹齢数百年の
高く伸びる杉並木。
見上げるほどに高い梢が
空を覆い
長い参道を包み込む。
光がやわらかい。
ゆっくり歩いていくと
森の奥に
朱色の巨大な鳥居が現れる。
そこから先は
山の聖域。

ここは古くから
富士山へ登る人たちが
最初に立ち寄った場所。
神聖な山へ向かう前に
静かに息を整える
はじまりの場所。
そう思うと
深い時間の重みが
この厳かな空気に
溶け込んでいるような
気がします。

本殿の裏に
ひっそりと佇む「登山門」
ここから先は
もう山の懐。
冷たい空気。
山頂は見えなくても
この場所には
どこか厳かで力強い
富士山の気配が
満ちていました。
山が育む水
白糸ノ滝。
岩肌いっぱいに
さらさらと流れ落ちる
幾筋もの白い糸。

水の音が
あたりを満たし
清々しい空気が
頬をなでていく。

富士山の雪解け水が
長い年月をかけて
地中を巡り
この絶壁から湧き出ている。
一筋一筋の水に
長い時間が流れているよう。

すぐ近くにある
音止の滝。

豪快に流れ落ちる水が
青みを帯びた
滝壺に吸い込まれていく。
激しい水音と
立ちのぼる水しぶき。
同じ場所にありながら
まるで違う表情。
いらないものが
すっかり洗い流されるような
そんな感覚になります。
森に眠る青い水
白糸ノ滝の上にある
小さな湧き水、お鬢水。
かつて源頼朝が
この水面に顔を映して
鬢(髪)の乱れを整えたという。

ひっそりとした
美しい水鏡。
透き通った
青みを帯びた水面は
鏡のように
森の緑を映している。
水は湧き続けているのに
波紋一つなく
まるで時が止まったかのよう。
ここは昔
富士山に登る前に
身を清める霊場として
大切にされていた場所だったとか。
神聖な祈りの場。
そんな背景を知ると
長い年月を
静かに映し続けてきた
どこか神秘的な
一枚の鏡のように
思えるのでした。
静かな祈りの場所
鳥の声。
さわさわと
風に揺れる木々。
森の中に
静かに佇む
山宮浅間神社。

この神社には
本殿がない。

この先に
富士山を直接拝む
遥拝所があるだけ。
剥き出しの自然。
遮るものは、何もない。

残念ながら雲が厚く
富士山は
見えなかったけれど
「そこにある」という
大きな気配が
満ちていました。
山の気配
富士山を近くで見てみたい。
そんな思いから
出かけた旅でした。
深い森。
澄んだ湧き水。
静かな祈りの場所。
その一つひとつに
いにしえから続く
どこか神秘的な時間が
今も静かに
流れているような気がします。

次に
新幹線の窓から
富士山を見かけたら
きっと
山のふもとに広がる
森の静けさや
水の音を思い出す。
遠くから眺めるだけでは
感じることのできない
富士山の大きな気配に
包まれる旅でした。
よかったら、みずみずしい風景も

