看板のない場所へ
それでも、11月から動き出すことにした
「おっす! 今日、お茶するかい?」
先週末、LINEが届いた。
以前の職場で大変お世話になった、元上司からだった。
僕が社会人生活の中で出会った上司のなかで、
最も尊敬している人。
リーダーシップ。
ロジカルシンキング。
問題解決力。
どれも一級品だった。
「この人みたいになりたい」
そう思える人に、これまで何人も出会えたわけではない。
だから、迷わず返信した。
「おつかれさまです。ぜひお願いします!」
待ち合わせは、バンコク市内のカフェ。
「久しぶり。元気か?」
「なんとかやっています」
「飲み物、買ってきますね」
カフェラテの無糖を注文し、席に戻った。
「年内に独立することに決めました」
近況を話しながら、僕は伝えようとしていたことを切り出した。
「僕、年内に独立することに決めました」
独立を考えるようになった、一番大きな理由。
それは、解雇を経験したことだった。
解雇されたのは初めてだった。
次の仕事は見つかるのか。
これから、どうやって生活していけばいいのか。
そんな不安が、ずっと頭から離れなかった。
そして、何度も考えた。
もし会社がなくなったら、自分には何ができるんだろう?
会社の看板がなくなったとき、自分には何が残るのか。
この先、自分で食べていける力を身につけなければ、いつか苦労するのではないか。
その問いが、消えなくなった。
その後、僕は以前の職場の後輩が働いている会社へ移った。
今も、そこで働いている。
ただ、働き方が特殊な環境だったこともあり、
以前から考えていたことがあった。
一度、会社を離れてみたい。
そして、自分で仕事をつくってみたい。
考え続けた結果、ここにたどり着いた。
独立すると、すべてを自分で考える
「いつからスタートするん?」
「11月から本格的に動きます」
「今日は、いろいろ聞いてもいいですか?」
「ええで」
そこから、さまざまな話を聞いた。
掛け持ちしている仕事の数。
能力やスキル。
時間の使い方。
優先順位の立て方。
税金。
名刺。
日本とタイを往復するタイミング。
信用や信頼の積み重ね。
コストへの意識。
独立すると、会社員のときとは違う。
これまでは会社が考えてくれていたことも、
すべて自分で考えなければいけない。
どんな仕事をつくるのか。
時間をどう使うのか。
いくら稼ぐのか。
何にお金を使い、何を削るのか。
全部、自分次第だ。
会社員であれば、組織のなかで役割が与えられる。
一方で、独立すれば、自分で役割をつくらなければならない。
自由になるということは、同時に、すべての責任を引き受けることでもある。
「できること」と「やりたいこと」を重ねる
そのなかでも、特に印象に残ったのが「CAN」と「WANT」の話だった。
CANは、できること。
WANTは、やりたいこと。
独立して仕事を続けていくなら、この二つが重なる場所を見つけることが重要だという。
話を聞きながら、僕自身のことを考えていた。
自分にできることは何なのか。
本当にやりたいことは何なのか。
その二つが重なる場所は、どこなのか。
考えてみると、まだ明確な答えはない。
もし、CANとWANTがほとんど重ならなかったら、どうすればいいのだろう。
正直、不安もある。
それでも、考えているだけでは何も始まらない。
まずは一度、書き出してみることにした。
自分のCANとWANTを、思いつく限りすべて出してみる。
そこから、これから何を仕事にしていくのかを整理する。
どんなポートフォリオができあがるのか。
今週中に、形にしてみようと思う。
独立するなら、生活も自分で設計する
もう一つ、強く印象に残ったのが「コスト」の話だった。
独立について考えていると、どうしても「何を仕事にするか」に意識が向く。
しかし、それだけではない。
仕事をつくっても、生活が続かなければ意味がない。
独立するなら、自分にはいくら必要なのか。
何にお金を使うのか。
何を削るのか。
何を残すのか。
そこまで考えなければいけない。
僕は、現金をほとんど持っていない。
なるべくお金を投資に回しているからだ。
本音を言えば、できるだけ取り崩したくない。
家族の未来のために、備えておきたいと思っている。
ただ、独立する以上、そうも言っていられない。
まずは、自分にかかる固定費や生活費を見直す必要がある。
先日スーパーに行ったときも、いつも買っている商品より、安いものを選んだ。
今月から、一人で食事をするときは、
100バーツ、約475円以下を目安にしている。
今年まで契約している賃貸をどうするのか。
妻の職場との通勤距離をどうするのか。
このあたりは、家族とも話し合わなければならない。
ただし、何もかも削ればいいとは思っていない。
疲れを取るための身体のメンテナンスまで、
削ってしまえば、仕事を続けられなくなる。
だからこそ、削るところと、削ってはいけないところを決める。
何に使うのか。
何を削るのか。
何を残すのか。
生活そのものを、自分で設計する必要がある。
まだ、何をするかは決まっていない
この先、いろいろ大変なことがあると思う。
収入が安定しないかもしれない。
家族に負担をかけることもあるかもしれない。
一度、まずは動いてみる。
情けないけれど、成功する自信は一切ない。
何をすればうまくいくのかも、まだわからない。
とりあえず、やってみる。
現時点で、僕にできること。
それは、人材紹介での営業経験を活かせる何かだと思っている。
その経験を、どう仕事につなげていくのか。
今のところ、業界に特別なこだわりはない。
すべてが明確に決まっているわけでもない。
それでも、可能性を最初から閉ざすことはしたくない。
一つずつ考えていく。
11月から、本格的に動き出す
11月から、本格的に動く。
スタートまで、あと1か月半。
それまでに、できる準備を進める。
目標にしていたソロプレナーに向けて、いよいよ始動する。
まだ、何も完成していない。
仕事も、仕組みも、確かな自信もない。
会社の看板がなくなったとき、自分に何が残るのか。
その答えは、まだわからない。
けれど、看板のない場所へ行ってみる。
そこで、自分に何ができるのかを確かめてみる。
ここから、一つずつつくっていく。
