『見せられた一枚の写真と、職場の「距離感」。みなとみらいの夜に広がる波紋第二話』
あのとき胸に立った小さな波は、予感だったのかもしれない。
三人のはずの席に、四つのフォーク。
その答えを運んできたのは、C子さんだった。
みなとみらいの窓の外では、夏の光が海に沈みかけていて、街のきらめきがゆっくりと色を変えていた。
その静かな光景とは裏腹に、私の胸の奥では、波がひとつ、またひとつと形を変えていった。
C子さんは、正直に言えば少し苦手だった。
送別会を開いてくれたことは本当にありがたかったし、私より二つ年上で、出会いは隣の課の派遣さん。
仕事を頑張っていたし、子育て中という共通点もあって、お昼休みに話すようになった。
まじめな人だから、派遣期間が終わっても直接雇用になり、そこでA子さんと親しくなっていった。 その流れは自然で、何もおかしくない。
ただ、私の心のどこかに、うまく言葉にできない“距離の違い”があった。
ほどなくして、B子さんが来た。
同じ業務で苦楽をともにした人。
ぶつかったこともあったけれど、嫌いになることはなかった。
むしろ、時間が経っても消えない種類の縁がある人だ。
A子さんもB子さんも、今の職場でまだまだ活躍していく人たち。
応援したい気持ちが自然に湧く。
もちろん、C子さんを応援していないわけではない。
ただ、彼女は人とのつながりを、私とは違う形で大切にする人だった。
異動先でも私の知っている人たちとランチや飲み会をよくしているらしい。
会うたびにその話をしてくれる。
私はというと、職場を離れても会う人は多くない。
気心の知れた人と一年に一度会う程度。
B子さんとも、あんなに親しくしていたのに二年近く会っていなかった。
誰かと食事に行っても、他の職場の人にわざわざ言うこともない。
秘密にしたいわけではなく、ただ、言う必要を感じないだけ。
言ったところでメリットもデメリットもないし、
「楽しかったね、また会おうね」で終わる関係が心地よい。
C子さんは、私とは違う。
必ず会った人と最後に写真を撮る。 思い出を大切にしたいのだと思う。
そして、ラインで写真を送ってくれる。 私は送られてきた写真を保存しても、ほとんど開き返すことはない。
その違いが、私の胸の奥で小さな波を立てる。
食事が始まり、以前一緒に働いていた人の話になった。
きっかけはC子さんの
「今月、D子さん、出産するのよ」という一言だった。
その瞬間、A子さんと私は驚いた。
A子さんは「だから、この前こなかったんだ!」
「おかしいと思ったし、そうじゃないかと思った」と言った。
どうやら、B子さんはD子さんは妊娠を知っていた。
D子さんに「秘密にしてほしい」と言われていたらしい。
口火を切ったC子さんに、B子さんは少し「ん?」と思ったようだった。
しかし、その後C子さんが、みんなで撮った写真を私たちに披露した。
私もB子さんも動揺した。
なぜなら、私とB子さんがかつて苦楽をともにしたE子さん・F子さんも写っていたからだ。
私は顔に出さないように、
「E子さん、変わってないね〜〜〜」と言うのが精いっぱいだった。
E子さんは退職して、おそらく私のことを避けている人だと思う。
A子さんとD子さんは、同じ時期に異動してきて仲が良かった。
同じ時期に結婚し、妊娠し、復職した。
その後、それぞれ異動したが、D子さんはA子さんと距離を置きたかったのだと思う。
同じ状況の二人が意気投合したあと、距離を置く。 よく聞く話だ。
私とE子さんも、同じだったのかもしれない。
みなとみらいの光がゆっくりと沈んでいく中で、 私の胸の奥の波は、静かに、しかし確かに形を変え続けていた。
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