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短線「迷子の有栖川」

2025 創䜜倧賞応募䜜品になりたす。よろしくお願いしたす

あらすじ

 有栖川は友人ず埅ち合わせに向かっおいる途䞭、物怪たちや神様が暮らす䌌お非なる䞖界ぞず迷い蟌んでしたった。脱出しようにも、珍しい迷い人を面癜がる物怪や、厄介ごずに巻き蟌たれおしたう。しかも戻るためには原因を探らなくおはならず、簡単に元の䞖界に戻れない



1 䞉毛猫をおいかけお 


 有栖川は、山手線から総歊線に乗り換え錊糞町を目指しおいた。
 今日はゎヌルデンりィヌク初日、友人ずスカむツリヌに登るために前日チケットの予玄たでし、䞊機嫌で今日のプランの確認をしおいた。錊糞町で友人をピックアップしおからバスで゜ラマチたで向かい、スカむツリヌで2時間ほど芋孊したら、すみだ氎族通にいくずいう行皋だ。
 りキりキで乗り蟌んだ電車はむンバりンド客ず長期䌑みのせいで混んでいた。


「あぁ、぀いおない。スヌツケヌスで出口が塞がれおる」

 すいたせんず声をかけながら倧きなスヌツケヌスを抌しやり、人に抌されながらホヌムに出れば、降車した人々の波に流され、あっずいう間に降り階段の堎所に出おしたった。本来ならホヌムにある登り階段から行けば楜に乗り換えられるのだが逆走するには人をかき分けないずいけない。

「面倒だけど䞀旊降りお䞊がるか」

 有栖川は小さくため息を぀きながら流れに逆らわず、䞀床階段を降りおから広いコンコヌスを枡り、総歊線の路線を瀺す黄色い看板を目印に進んだ。癜いコンコヌスは広く、人がばらけおいるので歩きやすく、案倖このルヌトも良いかもず思っおいるず猫の声がした。
 呚りを芋枡せば、我が物顔で䞉毛猫が闊歩しおいた。

「あれ 迷い猫」
「にゃヌ」

 歩みを止めずに眺めおいるず、なんず猫は慣れた様子で䞊りの゚スカレヌタヌに乗ったのだった。しかも誰も猫に反応せず玠通りする様子に、有栖川は驚いた。
 駅員に知らせようか迷い぀぀も、自分ず同じ方向に向かう猫の冒険を芳察しおみたいずいう思いもあり、そのたた猫の跡を远った。
 人々の脚の隙間を瞫うようにすいすい進む猫は、あっずいう間に総歊線の駅のホヌムぞ蟿り着き、ちょうどタむミングよくきた列車に人々ず䞀緒に飛び乗ったのだった。

「え、たじ」

 有栖川も慌おお同じ車䞡に飛び乗り、呚りを芋枡した。車内はそこそこ混んでいお、探すのは無理かず思っおいたずころ、目の端でちらりず茶色いものが動くのが芋えた。よく芋れば、座垭の䞋からヒョロリず尻尟が芗き芋えた。

「やっぱり乗っおるよな  」

 ビックリし぀぀も扉暪の手すりに捕たりながら、もう䞀床チラリず暪目で猫を芋れば、優雅に毛繕いをし、欠䌞たでしおいた。
 有栖川はスマフォを取り出しお撮圱しようず思ったが、人が座っおいる足元を撮るなんお非垞識すぎるし、盗撮に間違えられたら倧倉だず思い盎しおやめた。
 その代わりSNSを開いお“総歊線各駅 猫”や“秋葉原 猫”、“電車に乗る猫”ず怜玢するも、目の前にいる電車に乗る猫の話題はどこにもなかった。
 猫が電車に乗ったらすぐにSNSで拡散されそうなのにおかしいな、ず有栖川は思いながらも「次は䞡囜〜  」ずいうアナりンスにSNSのアプリを閉じ、友人にそろそろ着くずいうメッセヌゞを送ろうずしたずころ、゚ラヌになっおしたった。

「あれ 送信゚ラヌ」

 驚き぀぀も、もう䞀床再送ボタンを抌すも同じく゚ラヌになっおしたい、有栖川はこりずにタップし続けおいるず、電車が駅に到着しお扉が開いおしたった。慌おお端に䜓を寄せようずするも、トンず誰かに背䞭を抌されおしたい、そのたた人に抌し出されるたたホヌムに降りたっおしたった。抌した人間はわからず、降りおいく客に玛れお消えおしたった。

「最悪、端によけおたじゃん」

 悪態を぀きながらも、電車に乗り盎そうず振り返った瞬間、足元で䜕かが通り抜けた感芚に有栖川は慌おお目線を䞋げお芋枡せば、なんず猫も降りおいた。

「わ」

 驚く有栖川を尻目に、猫は優雅に人々の足元をすり抜けおいく。その揺れる尻尟を芋぀めながら思わず远いかけおしたった。ゆらゆら揺れる尻尟に気を取られおいたが、ふず降りおはいけない駅だずいうこずを思い出し、慌おお振り返った瞬間、違和感に気づいた。

「あれ なんかおかしい」

 頭䞊を芋䞊げるず、盞撲取りの栌奜をした青鬌の絵が食られおいた。ぐるりず呚りを芋枡せば、壁は党お朚目調で、倩井は赀い梁がはられ、たるで神瀟仏閣でみかけるような屋根の䞋だず有栖川は思った。前に降りた時はこんな駅構内だったろうかず思いながら、芋枡しおいるず河童が酒を抱きしめおいる日本酒の宣䌝ポスタヌが目に入った、隣には麒麟が瓶ビヌルに足をかけおいおこちらもお酒の宣䌝のよう。

「ん こんなお酒の宣䌝あったっけ」

 他のポスタヌには猫ず犬が描かれおいたが、暪に描かれた文字は厩し字で読めなかった。有栖川は䞍安を芚え぀぀も、ふず西口ず曞かれた看板の先にあった駅名に気づいた。そこには  。

「涌の刻駅 なんだそれ」
「にゃヌ」

 猫の声で慌おお目線を䞋げれば、なんず改札のタッチに猫が前足銖に぀いおいる腕時蚈のようなものを圓おお、ピッず音を鳎らしおいた。

「え」

 先皋たで腕時蚈なんお぀けいただろうか ず疑問に思っおいるず今床は垜子を目深に被った駅員に挚拶するように手を挙げお「にゃっ」ず蚀っおいたではないか。

「ど、どういうこず」

 思わず有栖川も改札ぞず走るが、猫は優雅に改札の機械から飛び降りお倖に出おしたった。

「え、駅員さん 猫 あの猫ず知り合いなの」

 有栖川が駅員に声をかけるも、駅員は黒い煙のように姿を消しおしたった。

「え 消えた」

 振り返るずあんなに人が降りたはずなのに、駅の䞭に人が誰もいない事に気づいた。
 それだけでなく、駅の䞭に貌られおいるポスタヌに描かれたたモノたちがじろりず有栖川を芋぀めたのだった。

「なななな、䜕」

 怖くなり有栖川は思わず改札から出おしたった。駆け出した先には、小さなロヌタリヌがあり道を挟んだ先には簡易の駐車堎があった。その駐車堎のど真ん䞭に先ほど芋た猫が2本足で立っお、䜕かを芋䞊げおいた。

「猫おおおおお」
「にゃ」

 有栖川は思わず駆け寄り、䞡手でガシッず猫を捕たえお抱きしめ、猫の埌頭郚に顔を埋めおいた。

「にゃああああ おたえ人間」
「猫が喋った うわヌヌヌでも今はそれでもいい ここ、なんか怖い」
「そりゃヌそうだろにゃああああ」

 1人ず1匹は凄い圢盞で思わず絶叫しおいた。

「うるせヌぞ」

 埌ろからドスの効いた怒鳎り声でニ人はビクリず䜓を震わせ、思わず瞮こたった。

「すすすいたせんにゃ」

 猫が謝れば、怒鳎った男はフンず錻を鳎らし暪を通り過ぎおいった。
 有栖川はチラリず暪目で芋るず、その男の腕にはびっしりず鱗が生えおいるように芋えた。鱗柄の刺青 ず思うも刺青にしおはやけに光沢があり、オむルでも塗っおいるのかず思うほどテカテカしおいる。
 思い思わず目線を䞊に向けるず、黒いタンクトップを着た筋肉隆々な男の顔は魚人だった。

「っ」
 有栖川が悲鳎を䞊げる前に猫がその口を塞ぎ、ぬっず顔をだしお小声で告げた。
「䜕も喋るな叫ぶなにゃ」

 その蚀葉に必死に頷きながら、有栖川は魚人が去っおいく埌ろ姿を目の端で远いかけた。

「ひゃヌ危なかったにゃ」
「あれっお  」
「ん 魚人にゃ、流石にあのデカさは無理にゃ」

 そう蚀っお猫は有栖川の腕の䞭から抜け出そうずするも、銖根っこを掎たれおしたった。

「や、やめろ そこを持぀なゃ」
「助けおくれおありがずう、猫くん」
「それがお瀌を蚀う態床かにゃ」
「だっお今君を逃したら、ここで1人っきりになっちゃうだろ 嫌だよ。それで、ここっおどこなの」
「勝手に぀いおきお䜕蚀っおるにゃ」
「぀いおきたくお぀いおきたんじゃない たたたた同じ方向だったんだよ」
「涌の刻駅にか」
「錊糞町に おか降りる寞前たで䞡囜駅だったよ 人に抌し出されお降りちゃったけど」
「それは倧倉だったにゃ。でも僕ずは無関係にゃ」
「君が秋葉原から総歊線に乗り換えるずころ芋たんだから」
「たじかにゃ  普通の人間には芋えないのに  」

 猫はショックを受けたようで暎れるのをやめ、びろヌんず䌞びおしたった。可愛さに思わず有栖川の顔が緩みかけるが、気を匕き締めお猫に問いただした。

「それで、ここはどこなの」
「はぁ、ここは人間が䜏む䞖界ず物怪が䜏む䞖界の狭間の䞖界にゃ」
「䞡囜駅に䌌おるけど 」

 呚りを芋枡せば、盞撲堎ず工事䞭のはずの江戞東京博物通はなぜか倧きな朚造建築が建っおいた。たるで装食の倚い神瀟仏閣のような䜇たい、専門家が芋たらあの屋根は入母屋で鬌瓊は䜕の様匏で装食はず語り出しそうなほど壮倧な䜇たいだ。

「䜕あれ  」
「江戞もののけ博物通にゃ。江戞時代のご先祖さたがどうやっお暮らしおたか展瀺しおあるにゃ、芋に行くかにゃ 入堎料は」
「埅っお埅っお、手前のは䞡囜囜技通だよね」
「そうにゃ」
「なんでコレは同じなんだよ」
「こっちでも盞撲は人気にゃ。建物を倉えるのは面倒だからそのたた写しおるにゃ」
「嘘だろ」
「こだわりがあるや぀は自力で建おるにゃ、江戞博物通は老人どもが煩くお予算オヌバヌしおるのに建おたずかで凄い揉めたにゃ」
「ぞヌ」

 有栖川は物怪にも予算なんお考えがあるのかず䞀瞬ツッコミそうになったが、すんでのずころで飲み蟌んだ。深く考えたら、呚りの党おが気になっおしたうからだ。突然道に珟れる幜霊のようなものから、道路を走る銬車や牛車、そこに混じるレトロなアメ車。混沌ずしすぎおいお、もしかしおコレは倢なのでは ず思い始めおいた。
 倢ならばなんでもありだ。そしお早く目芚めないず。

「それよりも、お前早く戻ったほうがいいにゃ、ここには人間を食べる物怪もいるにゃ」
 猫は自分の脚の毛繕いをしながら優雅に蚀ったず思ったら、するりず有栖川の腕から逃げ出しおしたった。
「したった」
「早くしないず玄束の時間に遅れるにゃ」

 そう蚀うず猫は走っお逃げおしたった。
 有栖川も慌おお猫の埌を远いかけた。怖い物怪が他にも居るず聞いたばかりなのに眮いおいくなんお、ひどいず思いながら。猫ずいう安心安党可愛い存圚を逃しおなるものかず必死に猫の埌ろ姿、あのゆらゆら揺れる尻尟だけを芋぀めお無我倢䞭で走った。
 猫はスむスむず人もずい、いろんな肌や服装をした物怪たちの足元をすり抜け、信号を枡り路地裏ぞず曲がっおしたった。
 有栖川が路地裏に入った時にはもう猫の姿はなく、芋倱っおしたった。

「はぁはぁ、あれ ここを曲がったず思ったのに」

 呚りは知らない堎所、ふず芋るず小さい神瀟があった。小さな瀟の入り口には灰色の狐が二匹、台の䞊であくびをしながら寝転んでいた。

2 お皲荷さん

「ん もしや石の狐が寝おる  」

 有栖川が近づいおみるず、灰色ではなく、぀るりずした石の狐が動いおいた。石の玉をを転がしおいた石の狐は、有栖川に気づくず目を芋開いお起き䞊がった。

「おやおや 珍しい客人がきたよ、阿っちゃん」
「ん 本圓だ迷子の人間なんお久しぶりに芋たなぁ〜吜ちゃんコレは遊べそうだ」

 石の狐は居䜏たいを正すず、笑みを深くした。その姿はちゃんずした阿吜の呌吞の姿をした、神瀟の入り口にいる石像の姿だ。

「狛犬がしゃべった」
「狛犬じゃない 我らは眷属よ。狛犬は犬や獅子の石像のこずだぞ」
「たぁたぁ、阿っちゃん、別に良いじゃないか。気にしない神䞻もいるし」
「我は気にする」

 有栖川が呌んだ呌称で揉め始めおしたった。その剣幕に有栖川はずりあえず阿ず呌ばれおいる右偎の狐の石像に向かっお謝った。

「あヌ  眷属の阿さん、知識䞍足ですいたせん」
「ふむ 玠盎でよろしい よかろう」
「阿っちゃん もうヌ」

 こういう人には䞁寧に接するのが䞀番だず郚掻の先茩から聞いおいた有栖川は䜎姿勢のたた狐の石像に聞いた。

「それで、倧倉恐瞮ですが、猫を芋たせんでしたか 喋る猫で」
「喋る猫はここら蟺では珍しくないよ」
「そう、どこにでもいる」

 その返答に有栖川は頭を抱えた。そういえばそういう䞖界だったず。物怪だらけならなんでも喋るだろうず、そもそも今、有栖川自身が狐の石像ず話しおいる状態だ。

「どうしよう  そうだ、こういう時こそ神頌みでは」
 有栖川の蚀葉に狐の石像は顔を芋合わせるず声を揃えお蚀った。
「「神頌み、䜕をお願いするんで」」
「元の䞖界に戻しお䞋さい あ、ここじゃダメか、お賜銭っず」

 有栖川は慌おおお賜銭箱の前に行き、小銭を投げお再床お願いした。
 かこんころころ、チャリンず心地よい朚ず金物の音を立おお、お賜銭箱の䞭に小銭が萜ちおいく、パンパンず柏手をし䞀瀌をし、”自分は有栖川です。この䞖界に迷い蟌んでしたったので元の䞖界に戻しおください。あず友達ずの埅ち合わせに間に合うようにしおください。”ず心の䞭でお願いをした。
 瀟の朚の扉がカタカタず小さく揺れ、たるで答えおいるようだ。

「おやおや、瀌儀を匁えおいる。良い若者だね〜」
「本圓だな、でも普通に叶えたら぀たらない」
「阿っちゃん」
「だっお僕らは暇だろう 有栖川、君が僕ず遊んでくれたらいいよ」

 阿の狐の像が飛び跳ね、有栖川に迫った。たるで子犬に戯れ぀かれるような仕草で有栖川は思わず可愛い ず思い撫でそうになったが、すんでの所で手を止めた。

「えっずヌ  遊ぶっお具䜓的にはなにするの ボヌル遊びずか」

 有栖川は少し身を乗り出しお、狐の石像ず遊ぶ姿を想像した。たずえ倢だずしおも、友達に話したら面癜そうだず思ったのだ。

「ボヌル遊びなんお子䟛みたいな遊びはしないしない。ちょっずした謎々さ、今流行っおいるんだろう」
「流行っおいるず蚀えば、流行っおるけど  」
「じゃヌだすよ 黄金の衣はずおも矎しく絶品 なヌんだ」

 阿の狐の石像が早速謎々を出しおきた。有栖川は金色の衣を思い浮かべ、そしお絶品ずいうこずは食べ物かず圓たりを぀けながら答えおみた。

「オムラむス」
「「ぶっっぶヌ ハズレ」」

 二䜓同時にハズレず蚀い枡されおしたい、有栖川は再床捻った。

「絶品っおいうんだから食べ物だろう だったら、衣だから、えヌずえヌず、あの卵が巟着みたいなや぀」
「ん   もしかしお茶巟寿叞のこずかい」
「そう、それ」
「それもハズレ」
「違うのヌ」
「それじゃヌ、ヒントだ 東が角四぀、西は角䞉぀」
「党然わからない 東 西 食べ物じゃないの」
 悩む有栖川を芋お吜の狐の石像は笑いながら蚀った。
「ははは、食べ物ずいう線はあっおいるよ」
「吜ちゃん そういうヒントはダメだ」
「たぁたぁいいじゃないか。それで分かったかい 有栖川」
「党然わからない   東っおこずは右だろ 右に角が四぀あっお、巊に䞉぀ キャンディヌみたいな圢の黄色い食べ物  スむヌツで䜕かあったっけ」

 悶々ず悩みながら有栖川の頭の䞭ではいろんな圢で黄色いものでスむヌツを思い起こしおみるも、党く問題に合いそうなものが出おこなかった。

「もう少しヒントちょうだい」
「仕方ない。次のヒントは 東は癜、西は五匏色 でも違うこずもある。開けおからのお楜しみ」
「えぇ 党然わからん  開けるの やっぱりオムラむスじゃないの あ かに玉䞌 あ、でも角なんおないよな  東ず西で違うっお䜕」

 東ず西で違うものはもしかしお、本圓に東ず西で違うず意味なのでは ず気づいた有栖川はスマフォを取り出しお怜玢しようずするも、圏倖衚瀺でwebブラりザヌは「むンタヌネットの接続がありたせん」ず衚瀺され䜕も怜玢できず頭を抱えた。

「うおおおおお 怜玢ができない〜」
「うはは 文明の利噚に頌りすぎだ。残念だったね〜じゃヌ次のヒントだ 東の衣は俵圢、西の衣は䞉角圢」

 有栖川は頭の䞭でモダモダずしおいた黄色の衣の物䜓が圢になった。そしお、色を狐色に倉えれば  。
「あ もしかしお、いなり寿叞」
「「正解」」
 阿吜の狐は喜ぶようにその堎でゞャンプした。きゃっきゃず喜ぶ二䜓の様子に、有栖川も同じように喜んだ。
「くっそヌ 皲荷だからいなり寿叞かヌヌすぐ気づけば良かったヌ」
「「気づくのが遅い」」

3 狐のお䜿い

「楜しんでる所、申し蚳ないが、先ほど神頌みをした困り他人は君かな」

 埌ろから声をかけられ、有栖川は驚いお振り返った。そこにはスラリずした矎しい癜い狐がお賜銭箱の䞊に座っおいたのだ。

「えっず、貎方は」

 癜い狐は、有栖川を頭から぀た先たでゞロリず芋るず、その堎でぎょんず飛ぶず優雅にバク転をした。
 綺麗な尻尟に身惚れおいるず癜い狐は神䞻の姿、぀たり人の姿に倉わっおいた。袎を手で払い、着物の乱れを正すず、顎に手を圓おお考えるポヌズをしたのだが。

「䜕で狐っおむケメンなの ずるくない」

 思わず有栖川は声に出しおいた。そう、人の姿に化けた狐はさながら韓囜アむドルのように肩幅が広く、キリリずした瞳で背も高い黒髪短髪のむケメン姿だった。こんな人が神䞻をする神瀟があれば、あっずいう間に女性たちやメディアが攟っおおかず、連日人がごった返しお、アクスタやブロマむドが売れるのではないだろうずいうレベルだ。

「そりゃヌ流行りだったり、その地域でりケの良い顔立ちに化けるからね」
「そうなんだ  。っおそうじゃなくっお貎方は誰なの」
「あぁ、倱瀌。僕は神䜿しんし の䌊織だ。珍しく願い事がこちらの䞖界でされたから芋にきたんだ。迷子の有栖川さん」
「さっきのお願い事っお届いおたんだ それじゃヌ自分を元の䞖界に」

 有栖川は喜びながら、䌊織の手を握ろうずしたずころ、䌊織はヒラリず避けお、有栖川の顔を芗き蟌んだ。「ふヌん。なるほどね」ず小さく呟くず有栖川の呚りを歩きながらじヌっずたた芳察を始めた。「ふむふむ、あヌそっかぁヌなるほどねぇ」ずたた䞀人玍埗するずやっず立ち止たり、有栖川に笑みを浮かべた。

「君は良い目を持っおいるし、戻る前にちょっず頌たれ事を受けおくれないか」
「え、嫌ですよ。それよりも早く垰しお欲しいですけど」
「ダメダメ。ただで垰る方法を教えるわけにはいかない、こっちも慈善事業じゃないんでね」
「お賜銭したのに」
「それは神䜿しんし であるこの僕を呌び出したお駄賃さ。むしろ栌安だよ。嫌なら別に良いさ、他の神瀟に行くず良い」

 狐の蚀葉に有栖川は項を垂れた。他の神瀟なんお土地勘のない堎所で、スマフォ怜玢無しで歩き回るのは無謀ではないかず考えながらも、諊め切れずにスマフォを開くもやはり圏倖。有栖川はスマフォず睚めっこをしおから顔を䞊げた。

「うぅぅぅ  自分で出来る事ならやりたすけど」
「ありがずう 君ならそう蚀っおくれるず思ったよ 早速だが、ここに行っお、偏屈な爺さんにこれを枡しおくれ」

 そう蚀っお枡されたのは、䜕凊から出したのかいきなり目の前に珟れた倧きな颚呂敷で包たれた正方圢のもの。たるで手品のように珟れた颚呂敷の荷物を、䌊織は「はい」ずいっお差し出しおきたため、有栖川は慌おお䞡手で持おば、そこそこな重さだった。

「このくらいのお䜿いをどうしお自分が」
「蚀っただろう。偏屈だっお、面倒なんだよ。堎所はここ」

 そう蚀っお、䌊織は玙に曞いた地図を有栖川に握らせた。

「じゃヌよろしくヌ。終わったらここにきお、鈎を鳎らしおくれ」

 そういうず、神䜿の狐は消えおしたった。

「消えた」

 手に握らせられたメモ玙には、ざっくりずした地図が描かれおいた。

「「がんばれよ」」
「え それだけ ねぇ䞀緒に着いおきおよ〜䞀緒に遊んだ仲じゃないか」
「我らは眷属故、神瀟の境内から出るこずはできぬ」
「そうそう、あくたでも僕たちはこの堎所を守る圹割だからね〜」
「ぇヌヌヌ 䌊織さんは「あれは別」」
「圌は神様に盎接お仕事を頌たれる立堎だし、元は劖だったりするし。僕らずは違うだよ」
「それよりも早くお䜿いを枈たせおこい。戻れるものも戻れなくなるぞ」

 阿に指摘され、有栖川は慌おお境内を飛び出した。

「スマフォで自動案内にすれば楜なのに」

 ぶ぀ぶ぀ず文句を蚀いながら有栖川は貰った玙を色んな角床にしながら、知らない街の䞭を進んだ。
 どういうわけか、道すがらすれ違う物怪たちは有栖川が持っおいる颚呂敷をみるず、ぎょっずしお道を開けおくれたため怖い物怪ず遭遇する心配はなさそうだった。
 颚呂敷には可愛らしいデフォルメされた狐ず鍵ず皲穂が小さく散りばめられおおり、意倖にもセンスが良く、グッズずしお売っおたら買いたいななど有栖川は勝手に思っおいたのだった。

 䜕床目かの角を曲がった所で、やっず目的の堎所に蟿り着いた。倧きな朚の門構えに、朚の桶にお花が生けられた、小排萜た日本料亭のような堎所で玄関の暪の看板には傘の絵が描かれおいる。
 手曞きの地図にも目印は看板に描かれた傘ずあった。

「ここかな すいたせん」
 
 

4.傘ず老人


「はヌい」
 少し甲高い声の女性から返事があり、匕き戞の扉が開いた。そこには倧きな番傘を差した女性 ではなく、頭が番傘の女性が品の良い着物を着お立っおいた。

「あら珍しい、人間じゃない。あヌお皲荷さんのお䜿いにいらしたのね、どうぞ䞊がっおちょうだい」
「えっず  お邪魔したす」
 䞭に入るずクネクネず曲がった石の通路の䞡脇には緑豊かな自然な新緑の庭が広がっおいた。奥の日本家屋の入り口ではなく、案内されたのは建物に沿っお裏偎ぞ、瞁偎のある䞭庭だった。
 瞁偎には、黒い玗の着物を着こなしおいる頭の倧きなお爺さんが1人将棋を打っおいた。

「ぬらりの爺さん、お皲荷さんからのお䜿いですよ」
「ん 䌊織はどうした」
「えっず䌊織さんに頌たれお  」
「あや぀逃げおったな」

 深いシワが刻たれた老人は忌々しげに舌打ちをした。老人は有栖川に気づくず手招きした。

「ずきにお䞻は将棋は打おるか」
「いえ党然 党く知りたせん」

 明らかなフラグだず思い有栖川は盎ぐに答えお、荷物を目の前の老人に差し出すも手で暪に逞らされおしたった。

「あの、荷物  」
「簡単な打ち方を教えおやる、そこに座れ」
「えヌ」

 䌊織が嫌がった理由はこれか ず有栖川は思い぀぀、荷物を瞁偎に眮いおさっさず垰ろうず振り返ったが、なんず先ほどたでの石の道が消え、枯山氎の庭に様倉わりしおいた。
 そしお番傘の女性はいなくなっおいた。

「ほれ、終わるたで出れんぞ」
「うっそヌん」

 有栖川は仕方なく老人ず将棋を打぀事にした。瞁偎に腰掛けお初めお芋る将棋盀はTVで芋るようにズッシリずした朚の台だ。

「安心しろ、五将棋にしおやる。王将、金将、銀将、飛車、角行だけでやる子䟛向けだ」

 そう蚀っおパチパチず小気味良い音をさせながら将棋の駒を眮いおいった。
 将棋版の真ん䞭に五マス分の範囲にコマを配眮しおいく。
 
「お爺さん、自分早く垰らないずいけないんだ。友達も埅っおるし」
「お䞻は迷子の人間だろう 平気平気、䌊織がなんずかするだろうから、ほれ䞊べたぞ。駒はな王将は党方䜍に䞀マスだけ動かせる。金将は䞊䞋巊右斜め䞊ず埌ろに䞀マス、銀将は前方斜め前に䞀マス、飛車は飛び越えはできぬが斜めに䜕マスも移動できる。歩兵は前進のみ䞀マス。芚えたか」
「な、なんずか」
「王将を取れば勝ちだ。さおず、実地あるのみ、それじゃヌ打っおみようか」
「もう」
「ほれ、じゃんけんぜん」

 老人に急かされお、思わず有栖川はパヌを出しおしたった。老人はグヌ。

「お䞻が先行じゃ」
「えヌ  えっず、銀将が䞀個前」

 ずりあえずコマを䞀個進めるず、老人は角行を斜め前に進めた。
 有栖川はその次に、老人を真䌌しお角行を斜め前に進めたずころで、老人の角行
に自身の角行を取られおしたった。

「あっ」
「ちゃんず䜍眮を把握せい」
「えヌヌヌ芚えきれないよ。えっず斜めに進めるんだから、ここに入っちゃだめで  んヌ 歩兵を前かな」

 悩みながら進めるもあっずいう間に「王手」ず老人に蚀われ、逃げるように王将を進めおしたい、あっずいう間に詰んでしたった。

「なんじゃなんじゃ、あっずいう間に終わっおしたったじゃないか、もう少し考えろ」
「考えろっお蚀われおも、ゲヌムみたいにアシスト機胜があるわけじゃないのに無理」
「そんなんじゃ、あっずいう間に脳が退化するぞ、よく考えるんじゃ」

 老人はそう蚀うず、たた将棋を䞊びなおした。有栖川はうげヌず嫌な顔をするも、老人は気にした颚もなく将棋を再開した。
 庭を芋れば、足元にたで倧きな池が広がり倧きな鯉が数尟優雅に泳いでいお、涌しげだが、あたりの倉わりように有栖川は倧きなため息を぀いた。

「い぀になったら垰れるんだ  」
「手加枛しおやるからほれ、やれ」
「はぁ」

 老人に促されお、もう䞀床やっおみるも惚敗。今日習ったばかりのゲヌムをそう簡単に理解できるはずもなく、これがアクションゲヌムだったら埗意なのだが、戊略系は苊手だった。戊略ゲヌムはい぀も友人に任せっきりにするか、AIに聞いおしたっおいた。

「スマフォの電波が入ればわかるのにヌ」
「最近の若いのはみんなスマフォ、スマフォ蚀うのう」
「聞けばなんでも教えおくれるんだよ」
「それで、それはおたえさんの身になったのか」
「それは  」
「教えおもらっお、それを実践で䜿ったか 癟聞は䞀芋にしかず、経隓に勝るものはなし。AIが間違ったこずを䌝えおきたずきに刀断できるのか 党お鵜呑みにしおいいのか」

 老人の蚀葉に有栖川は思わず口を尖らせた。有栖川は叀い考えだなぁず思いながらも、䟿利なものなんだから有効掻甚しお䜕が悪いのかさっぱりわからなかった。

「でも将棋も今やAIず察戊できるし」
「それは楜しいのか 人ずやっおこそ、心理戊が働いお面癜いだろう こうやっおワシに捕たっお将棋を打぀なんおAIにはできんだろう」
「それは そうだけど  」
「党お答えを芋お歩くなんお぀たらないじゃぁ無いか。䞀昔前前にはスマフォなんお無かったんだからなぁ。あえお知らずに飛び蟌むのも䞀興よ」
「んヌ確かに芪の䞖代に出来たっお蚀っおたけど  自分からしたら、スマフォ無しで倖出なんお怖いよ」
「  今はそういう状況じゃないか」
「  確かに」
「王手」
「うヌヌヌ逃げ堎がないぃ〜参りたした」
「孊び続けるこず、䜓隓するこずは倧事だ。ほれ、もう䞀床」

 有栖川は諊めおたた駒を手に取った、あぁでもないこうでもないず先手を読もうずしおみるが䞊手く行かなかった。惚敗続きで嫌になっおきたタむミングで軜やかな声の青幎が声をかけおきた。

「ぬらりの爺さんに捕たった子は君だね。はい、甘いものでも食べお頑匵っお」
「あ、ありがずうございたす」

 芋䞊げれば、ゞヌンズに癜いTシャツをきた青いビニヌル傘の頭をした物怪だった。
 持っおこられたお盆の䞊にはピンク色の緎り切り菓子で䜜られた぀぀じず玫色の花菖蒲、そしお緑茶だ。

「わヌ緎り切り菓子だ おばあちゃんの家で食べたこずある」

 有栖川は花菖蒲の緎り切り菓子を受け取り、菓子切りでサクッず切っお口に含んだ。甘いあんこの味が口の䞭にひろがり、舌觊りの良いよく緎られたあんこに舌錓し、甘くなっおしたった口の䞭を少し苊味のあるお茶で流しおさっぱりさせる。

「やっぱり茶菓子にはお茶だよねヌ。日本の心」
「なにを蚀うずるんじゃい、ほら次の手を打たんか」
「はいはヌい」

 有栖川は盀䞊の駒をみた。逃げ回った駒は、歩兵、金将、銀将、ひず぀あいお、角行、その䞋に王将ず飛車が控えおいる。
 なんずかしお、角行か飛車の前に老人の王将を持っお行きたいのだが、なかなか䞊手くいかない。

「ぬなりの爺さん、お茶冷めないうちに飲んでよね。玠人盞手に本気になっちゃダメだよ」
「うるさい。わかっずるわい」
「じゃ〜僕が䞀手いれおいい」
「はぁ 青葉よ、䜕をっお勝手に打぀な」

 青葉ず呌ばれた青幎はしれっず老人の駒を動かした。王将が端っこから動き、前に躍り出たのだ。
 有栖川は、これ幞いず飛車を暪に䞀個ずらし、王手を取った。
「やったヌ初めおの王手」
「ただ王手なだけじゃい」

 そう呆れながらも老人はやる気なさげに、王将を斜めに動かし有栖川の角行の前に移動させた。このたたでは王将に取られおしたうず慌おお移動しお老人の金将を奪うも、盞手の角行の範囲に入っおしたい奪われおしたった。

「あぁああ負けちゃうよヌヌ」
「倧䞈倫、いけるよ。がんばれ、がんばれ」

 奪った金将を配眮しなおしお、なんずか守りに培しながら進めおいるず、青葉が有栖川にこっそりず「金将を前にすすめお」ず囁いた。蚀われるたできづいおいなかったのだが老人の王将の前に、有栖川の金将がいたのだ。蚀われた通りに進めるず老人は唞っお「参りたした」ず告げたのだった。

「勝った」
「うん、勝ったよ」
「やったヌヌヌ やっず勝った 垰れるヌ」
「おめでずうヌ」

 喜ぶ有栖川を尻目に老人は倧きなため息を぀いお、緎り菓子を䞀口で食べおしたった。
 なんで勝おたのか有栖川はさっぱりわかっおいなかったが、喜びながら残りの茶菓子を食べ、お茶を䞀気に煜り勝利に酔いしれた。

「こや぀党然ルヌルをわかっおおらんぞ」
「そりゃヌそうでしょう。今日初めお将棋をやったらしいじゃないですか。ほらほら、ぬなりの爺さん庭を元通りにしおくださいな」

 青葉に促され、老人は指を鳎らした。するず庭がゆらめき、池の氎が匕き、地面から草朚が生え、来た時の庭にもどったのだった。

「おぉお、CGみたい」
「出口たで案内するよ」
「ありがずうございたす」

 有栖川は元気に返事をするず、老人にも挚拶をした。

「ぬなりのお爺さん、将棋難しかったけど面癜かったです」
「お、もう䞀局やるか」
「もういいです いいです 遠慮したす じゃ」

 逃げるように有栖川は瞁偎から飛び出した。その埌を青葉がおいかけ「こっちだよ」ず出口ぞず案内した。

「ふん。今時の若いもんはたずもに将棋も打おんのか」

 お盆を片付けに来た番傘の物怪は老人の呟きにおかしそうに突っ蟌んだ。

「ぬなりの爺さんが、打おない子ばっかり捕たえるからでしょ」
「昔は打おる奎が倚かった」
「い぀の時代の話です 今や人間の䞖界では什和ですよ。番傘もかなり枛ったらしくお、青葉みたいな子が増えたしたしねぇ〜若い女の子はフリルなんお぀けおるし」
「  」
「ふふふ、それよりあの迷子の人間は元の䞖界に戻れるんですかねぇ」
「時間の捩れは盎しおやったわい。あずは他の奎らがなんずかするだろうよ」
「あら、そんなこずしおたんですねぇ」

 番傘はおかしそうに笑いながら「玠盎におっしゃればいいのに」ず呟きながら郚屋の奥ぞず消えおいった。

5 アパヌトずモグラ

「䌊織さヌん お䜿いおわりたしたヌ」  

 有栖川は神瀟に戻り、カランカランず小気味よく鈎を鳎らした。

「ありがずう、早かったね」
「うわっ びっくりした。埌ろから珟れないでくださいよ」
「あははは、うんうん。よくなっおるねぇ」

 䌊織は有栖川の党身を芋回しながら1人頷いた。

「 それより早く元の䞖界に戻しおください」
「それには、たず君がここに来た原因を聞かないずね」

 有栖川は確かにただ話しおいなかったず思い、ここに来た原因である猫に぀いおかい぀たんで話した。

「぀たり猫を远いかけおいたらこっちに来たず」
「远いかけおる぀もりはなかったんだけど、たたたた同じ方向だったず蚀うか  」
「んヌそうなるず、その猫を捕たえないずダメだね」
「えヌ」
「阿吜、君たちは猫を芋かけたかい」

 䌊織が問いかけるず二䜓は銖を傟げ぀぀も、お互いボ゜ボ゜䞍思議な蚀葉を話し合うず、䌊織に向き合い、告げた。

「今日、朝の時間垯には猫が通ったが有栖川が来た時間垯の前埌にはこの神瀟の前には通っおいないです」
「きっず建物の屋根か塀を䌝っお移動したんだず思いたす。そうそう、時間を気にする猫ずいえば神楜かニケじゃないかな 数幎前に猫又になった猫達で、色んなバむトをしおいるせいか、い぀も時間に远われおいる」
 二䜓の蚀葉に有栖川は驚いた。
「物怪もバむトするんだ  」
「この䞖界もお金は必芁だからね、地獄の沙汰も金次第っお蚀うだろう」

 䌊織は芪指ず人差し指で円を䜜っおニダリず笑みを浮かべた。有栖川には、悪人ヅラに芋えた。
 あの猫はバむトに向かっおる最䞭だったたら悪いこずをしおしたったかもしれないず有栖川が少し思っおいるず、ちょうど焊茶色の猫が神瀟の境内、有栖川たちず狐の石像の間を暪切った。
 すかさず二䜓の狐が軜やかに猫の行き先をふさぎ有栖川に教えた。

「この子が神楜だよ。君が探しおいるのはこの猫かい」
 神楜は目元に少し傷のあるふっくらずした猫で、いきなり道を塞がれ毛を逆立おた。
「ん なんだ いきなり通せんがずは 阿吜ず遊んでる暇はないぞ」
「阿吜さんありがずう、でも猫違いだ。もっず薄い茶色の猫だよ。こんにちは、神楜さん」
「あん 初めお芋る顔だな はじめたしおだな なんだ、なんだ、猫探しか 阿吜が手䌝うなんお珍しいな」
「圌はお参りをしおくれたからね。神楜は今日、ニケにはあったかい」
「おうよ」
「今日ニケは涌の刻駅を䜿ったか そんずきにこの子ず䌚ったらしいだよ」
「あ〜〜〜なんか倉なのに絡たれたずか愚痎っおたのは、お前のこずだったのか 䜿っおるはずだぜ、秋の原から  頌たれものの荷物運んでたからな」

 神楜は䌊織の存圚に気づき、蚀葉を詰たらせた。ひくりず髭を震わせるず少し早口で蚀い切った。
 䌊織はにっこりず優しい笑みを浮かべながら䞀歩前に出るず、神楜に聞いた。

「そう、ありがずう。ちなみにニケは今どこにいるか知っおるかい」
「し、しらねぇヌな。次のバむトに行っちたったからな。それじゃ俺も次のバむトがあるからさ」

 そう蚀うず、明らかに䌊織から逃げるように神楜は去っおいった。

「  䌊織さん嫌われおるの」
「嫌われおないよ。ただ、僕はここの譊察  ずは違うけど、パトロヌルも兌ねおるからね。あの猫、やばいバむトにでも手を出しおるいるのかもねぇ〜」
「䌊織さんの顔が怖い」
 有栖川が思わず䞀歩䞋がるず、有栖川の䞡脇に阿吜が挟むように座っお芋䞊げお蚀った。
「䌊織様は神䜿しんし だからねヌ」
「匷いからな。悪さする奎はコテンパにしちたうんだよ。最近、䜎玚の物怪の間で闇バむトが流行っおるらしいですよ、䌊織様。噂皋床なんですけどね」
「ぞヌ  ん  闇バむト  物怪なのに」

 有栖川は蚀葉のチョむスに違和感を感じながらも、ふずお䜿いの時に颚呂敷芋おみんな避けおいたのは、䌊織が怖いからその荷物を持぀自分を避けおいたのでは ず気づいた。
 䌊織を芋れば、懐からメモ甚玙を取り出しお䜕かメモをし、折りたたんで鳥の圢にするず、息を吹きかけた。するず、メモの鳥はパタパタず空ぞず矜ばたいおいった。

「よし、ニケか。僕は知らないけど、猫を探すならここら蟺の猫を束ねおるボス猫を蚪ねるのが䞀番だ」
「ボス猫なんおいるんだ」
「もちろん 茶々䞞っおいう化け猫さ、早速䌚いに行こうか」
「「いっおらっしゃいたせヌ」」

 有栖川が神瀟の境内から出発した時ずは打っお倉わっお、阿吜の石像は瀌儀正しく䌊織を芋送った。

「䌊織さんっおすごく偉い人 あの二匹 が瀌儀正しいよね」
「あはははは、圹割が違うからね〜あず少しだけ僕の方が長生きだからじゃないかな」

 にっこりず埮笑む䌊織の様子に、有栖川はそうゆうものなのかヌず玍埗した。そしお、やはり䌊織ず䞀緒に歩くず、道すがら出くわす物怪達は明らかに避けるモノず、瀌儀正しく挚拶をするモノずで二極化しおいた。
 有栖川は心匷いず思いながら、぀いおいくず少し叀めかしいアパヌトにたどり着いた。
 アパヌトの入り口にたむろしおいたのは、可愛いらしい猫達。二本足で歩く猫や、小孊生くらいの倧きさの猫が座り蟌んでいたり、お菓子を食べおいたりしおいた。
 䌊織がくるずすぐに通路を開け、「茶々䞞さん今日は家にいたっす」「ありがずう」ずいうやりずりをするず、䞀匹の猫ぱレベヌタヌのボタンを抌䞋し、゚レベヌタヌの箱がくるず、すぐに最䞊階のボタンを抌䞋しお「どうぞどうぞ」ず䞭に案内するず、扉が閉たるたでお蟞儀しおいた。

「  䌊織さん䜕者」
「あははは、茶々䞞ず仲がいいからねヌ。人間達の䞖界でいうずころの瀟長ず仲のいいお友達っお感じじゃないかな だから䞁寧に盞手しおくれるだけだよ〜。あずここのアパヌトは党宀猫しか䜏んでいないから」
「え 猫アパヌト 猫カフェならぬアパヌト」
「おや 猫カフェみたいに撫でに蚀ったり遊んじゃダメだよ ここの猫はみんな、物怪だからね。むタズラくらいで枈めばいいけど、䞋手したら䜓乗っ取られちゃうから」
「ぇ  」

 撫でたくお、わきわきず䞡手を動かしおいた有栖川は、䌊織の蚀葉ですぐさた手を匕っ蟌めた。
 チンずいう叀めかしい゚レベヌタヌ音が響くず、ちょうど最䞊階に到着するず暗い掞窟の䞭だった。

「え」
「おやおやヌ。誰かが䟵入したねヌ」
「え、䟵入っおなんですか」
「このアパヌトは茶々䞞の瞄匵りなんだよ、アパヌトの空間を䜜り出しお猫の物怪達が安心に暮らせるように䜜られた堎所なんだけど  誰かがそこに穎を開けお䟵入しようずしおいるっお蚀った方がわかりやすいかな」
「えぇヌ それっおたずいんじゃないですか」
「たずいねヌ、たぁヌ茶々䞞のほうでも察凊しおるだろうけど」

 そう蚀いながら䌊織は有栖川の手を握った。有栖川は䌊織の突然の行動に驚き、ドキドキしおしたった。むケメンに手を握られるっおこういうこずなのか ず䞀人興奮しおいるず、䌊織の緊匵した声が響いた。

「くるよ。構えお」
「え」

 䌊織が芋据える芖線の先は真っ黒な掞窟だ。有栖川は思わず握られおいる手を握り返すず、生ぬるい颚が襲っおきお思わず目を぀ぶっおしたった。
「あれ」
 目を開けたはずなのに、たるで目を぀ぶったたたの真っ暗闇で、有栖川は䞍安に襲われた。䞀瞬緩みかけた手をギュッず握る感觊で、今䌊織ず手を握っおいたこずを思い出し、もう片方の手で握っおいる手を探り掎んだ。
「い、䌊織さん いたすよね 真っ暗で䜕も芋えないんですけど」
「いるよ」
 䌊織が声を発した瞬間、がっずいう音ず共に青癜い炎が二人の間に浮かび䞊がった。
「なんで真っ暗なんですか」
「ここに入っおきた時ぱレベヌタヌの光があったからね、掞窟ずは本来真っ暗なモノなんだよ」
「そ、そうですよね。な、なんで゚レベヌタヌが消えちゃったんですか そ、それに、ここから出れるんですか」
「んヌ  たぁ、ずりあえず前に進むしかなさそうだ。埌ろは  なさそうだからね」
「あの 手を離さないでくださいね」
「あははは、もちろん。  危ないからね。虫は平気」
「その間が怖い でも聞かない 虫は嫌いです」
「そっかぁ〜たぁ、知らぬが仏だ。僕から離れないでね」
「もちろん」
「いい返事だ」

 そういうず、䌊織はちらりず背埌を芋るず、歩き始めた。二人の間に揺れる狐火はお互いの顔ずほんのりず足元を照らす皋床の明かりだった。
 埮かに聞こえる、四方八方から聞こえるカサカサ音に有栖川は鳥肌が立ちっぱなしだ。必死に「䜕も聞こえない䜕も聞こえない」ず唱えながら、照らされおいる床だけを芋぀め、しっかりず䌊織の手を握り締め密着しながら歩いおいく。
 時折、䌊織が腕を振るうず倉な音がする皋床だ。

「おっず、扉があるな」
「扉」
 有栖川が前を芋るも、暗闇で䜕も芋えない、䜕か蠢いた気がしたがそれは気のせいだろう。
 どうやら䌊織には芋えおいるようで、楜しげに埮笑んだ。

「入っおみよう」
「え、だ、だ、倧䞈倫なんですか」
「なんか術の気配があるんだよねヌ」
 そういうず、䌊織は暗闇に手を䌞ばし、ギヌずいう音ず共に扉をあけおしたった。有栖川は握られた手を振り解けるわけもなく、䌊織に続いお扉の䞭に入った。

「おや、提灯があるな」
 䌊織が指を振るうず、ボッボッボッずいう音ず共に呚りが明るくなった。円圢に掘られた郚屋のような堎所には、倩井に提灯が䞊び宀内をほんのりず照らしおくれおいた。

「ここには、虫いないんですね」
「ん   うん」
「そ、その間はなんですか」
「こういう所にいる虫っお明るいのが嫌いなんだよ」
「  」
 思わず有栖川は䌊織の腕にしがみ付いた。
「あははは、倧䞈倫倧䞈倫、危険なのは排陀するからさ」
「危険じゃないのは排陀しないっお聞こえるんですけど  」
「あヌ、そうそう、この郚屋はたぶん、あの掞窟を䜜った物怪ずは別の物怪が䜜った郚屋だず思うんだよね」
「無理やり話倉えたしたね いいですけど 掞窟ず違うっおどいうこずですか」
「知性を感じられる。みおご芧」

 そう蚀われお、よくよく芋れば、壁には倪陜ず䞉日月ず波の方に圫られた壁があった、それぞれの壁の前には台座が眮かれおいる。
 床には読めない挢字でびっしりず曞かれおいるず思ったが、掘った文字の䞭に色の぀いた泥を流し蟌んであるようだった。しかも床には色々な物が雑倚に眮かれおおり、物眮かず思うほどだ。

「知性っおいうより、汚郚屋ですよ」
「あははは、確かに散らかっおいるね。でも、床ず壁の圫り物は意味がある物だ。もしかしたら、僕たちよりも前に来たモノが䜜った術かもね」
「はぁ  それはどいう」
「これはただ動くな」
 䌊織は地面に掘られた文字の䞊にある砂を、足で退けながらぶ぀ぶ぀ず呟き始めた。するず床が光り、空気が枊を巻いたかずおもうずそのたた扉の倖ぞず突颚ずなっお出おいった。

「どう」
「どうっお  あ、空気が軜くなった」
「柱んだ空気を綺麗にしおくれる術だったんだ。さお、空気も綺麗になったし、扉も閉たったこずだ、しばらくは安党だろう」

 振り返れば、確かに扉はしたっおおり、その扉には”封”ずいう文字が曞き蟌たれおいた。

「手は離しお平気だよ」
「あ、はい」

 慌おお手を離すも、やはり異様な空間にいる状況に有栖川は身の安党ず心の安心のために、䌊織のそばにピッタリず匵り付いた。

「すごいガラクタばかりですけど」
「面癜いよねヌ、月の前には月ね〜」

 䌊織は壁を眺めながら楜しげに考えおいるようだった。有栖川は、この謎な壁ず台に銖を傟げるばかりだった。

「䜕か意味があるんですか 月の前に眮いおあるのは月のランプですよ、倪陜の壁の前にお札 倪陜のランプじゃなく」
「んヌそこだよねヌ」
「あ、海の前には皲穂 なんだこれ」
「ん〜〜〜〜〜」

 床に散らばった物を芋れば、おもちゃやランプず様々な道具がある䞭、壁ず台座だけが異様な雰囲気だった。
 䌊織は床に散らばった物を手に取りながら、䜕やら仕分けをし始めた。

「䌊織さん、䜕しおるんですか 脱出に䜿えそうな道具はなさそうですけど」
「ん〜〜君は神様を知っおいるかい」
「神様 たぁヌそこそこ」
「倪陜神の名前は」
「アポロン」
「あははは それはギリシャ神話の倪陜神だよ、日本の神様だよ」
「日本の神様  あたおらすおおのかみ」
「正解、倩照倧神を象城するものは、鏡ず皲穂、そしおお札」

 䌊織は床に散らばっおいた䞭から芋぀けた萎びた皲穂ず手鏡を手にずっお、台座の䞊に眮いた。地面に萜ちおいたハタキで埃を少しはらい、手ず手を合わせお拝んだ。

「神様を祀っおるっおこずですか」
「んヌ祀っおるずいうか、お力を借りるためのものかな」
「じゃヌ月は誰になるんですか 月の神ずいえばルナだず思うんだけど、日本の神様」
「ルナはロヌマ神話だろう、䜕で倖囜の神を知っおお日本の神を知らないんだ」「えぞぞ、スマフォゲヌムで〜」
「はぁ、日本神様は月読呜」
「぀くよみのみこず 女神様っぜいね」
「男だ」
「えヌ そうなんだ。語圙感的に女性ぜいのに」
「あははは、珟代の子的にはそうなのか 月読呜を象城するのは月ず暊ず氎」
「暊っおこずはカレンダヌ あった あ、ペットボトルの氎あるよヌ」
「それでいいだろう」
 有栖川は芋぀けた日めくりカレンダヌずペットボトルを台座に眮いた。䌊織が埃を祓い、先ほどず同じように有栖川も䞀緒に䞡手を合わせた。
「ここから早く出られたすように」
「  」
「よし それじゃ次は海ですね ポセむドンじゃ無いだろうし」
「須䜐之男呜だ、八岐倧蛇ず草薙剣、は無いかららコレでいいだろう」
「蛇のぬいぐるみにお土産の剣  こんなんでいいの」
「月の代わりにランプが眮いおある時点で、倧䞈倫だろう」

 先ほどず同じように䞊べお埃を祓い、手を合わせた。

「䜕も起きたせんね」
「いや、ゆっくりずだけど動いたね」

 䌊織は有栖川の手をたた掎み、床に描かれた文字の䞊に移動し、唱え始めた。

「掛かけたくも畏かしこき䌊邪那岐倧神いざなぎのおほかみ、筑玫぀くしの日向ひむかの橘たちばなの小戞をどの阿波岐原あはぎはらに、埡犊みそぎ祓はらぞ絊たたひし時ずきに生なり坐たせる祓戞はらぞどの倧神等おほかみたち、諞もろもろの犍事たがごず、眪぀み穢けがれ有あらむをば、祓はらぞ絊たたひ枅きよめ絊たたぞず癜もうす事こずを聞きこし食めせず、恐かしこみ 恐かしこみ 癜もうす」

 有栖川は、思わず「神瀟の神䞻さんみたい」ず蚀いそうになった蚀葉を飲み蟌んだ。䌊織が唱え終わったず同時に、壁が光り、床も光ったのだ。
 そしお扉の方でドンずいう倧きな物がぶ぀かる音がした。それは䞀回だけでは終わらず、䜕床も䜕床も聞こえ、有栖川は恐怖で䌊織の腕にしがみ぀いた。

「い、䌊織さん」
「倧䞈倫」

 先ほどよりも倧きな音ず共に空気が揺れ、思わず有栖川は目を぀ぶった。
 次の瞬間、たるでゞェットコヌスタヌで萜ちるかのような浮遊感ずぐるりずたわったような感芚がおきた。

「うヌ」
「もう倧䞈倫だよ、目を開けおご芧」

 䌊織に蚀われお目を開けるず、そこはアパヌトの廊䞋だった。振り返るず、黒いタンクトップをきた筋肉隆々の毛むくじゃらの男の埌ろ姿。そしお足元には倧きな蛇ではなく、倧きなミミズがのたうち回っおいた。
「ひぃっ」

6 捕たえた

「やぁ、久しぶり茶々䞞殿」
「よう。䌊織殿、久しぶりだな、内偎から攻撃しおくれたのは䌊織殿だったか、助かったよ」
「こちらこそ」

 䌊織が話しかけお振り返った毛むくじゃらの男は、筋肉隆々の倧きな猫だった。物怪だず知らなければ、倧きな着ぐるみだず思うような姿だ。

 長い廊䞋には扉が䞀぀だけで、どうやらこのフロア党郚がボス猫の郚屋のようだった。手には日本刀を持ち、足元でのたうち回っおいた倧きなミミズを半分に切り捚おるず、そのたた廊䞋の手すりの倖ぞず投げ捚おた。

「おヌい、焌き捚おおおけ」
「「はヌい」」

「あ、あれ、あれ、ミミズ お、おっきぃ  」
「うん。ミミズだね、さっきたでいたのが、圌の䜏凊だったんだよ」
「え」
「それで、䌊織殿、なんの埡甚で」
「あぁ、実は猫を探しおいおね。君のずころにニケっおいう新猫はいる その猫に匕き寄せられお、この子がくっ぀いおきおしたったらしくっおね」
「ん   あぁ、人間か。ずりあえず䞭に入っおくれ」
「お邪魔するよ」
「お邪魔したす」

 茶々䞞はすぐ近くにあった扉を開けるず二人を郚屋の䞭に案内した。郚屋の䞭は広々ずしおいるだけでなく、なぜかダンベルやらベンチプレスが䞊んでいた。
 有栖川は思わず「ボディビルダヌ」ず呟いおしたうほどだ。どうやら茶々䞞は䜓を鍛えるのが奜きな猫のようだった。

「盞倉わらず鍛えおるね〜」
「若い奎に負けおらんねぇヌからな日々䜓を鍛えおねヌずな」
「すごいよねヌ。慶長あたりから生きおるんだよヌ」
「ぞヌ  」

 慶長っおい぀の時代だっけ ず有栖川が思わずスマフォを取り出すも、䜿えないこずを思い出しポケットにしたった。
 それよりも、先ほどの珟象はなんだったのか有栖川は聞きたかったが、二人は党く気にした颚もなく話が進んでいった。

「䞖の䞭にはもっず長生きしおる奎がゎロゎロいるさ。それで新顔の猫のニケだが。あい぀、金皌ぎであちこち駆けずり回っおるからな。なんだっかな、なんずかむヌツだったか  飛脚みたいな仕事しおいるんだよ」
「ぞヌもしかしお人間の䞖界のモノをこっちに持ち蟌んでる」
「さぁな、だがそこの人間がくっ぀いちたったっおこずはそうかもな」
「それはよろしくないね〜」
「そうだなぁ〜。よっし、いっちょこっちに呌ぶか」

 そう蚀うず、茶々䞞はベランダに出お䞀声鳎いたのだった。「に"ゃ"ぁ"お"」ずのぶずく䜎い声が響くず、あちこちから小さな「にゃぁ」「にゃっ」「にゃヌん」ず猫の返事が聞こえた。
 思わず有栖川は「すごい」ず呟いおいた。

「これで、すぐに来るさ。そうだ、茶でもだすわ」
「ありがずう」

 茶々䞞が入れたむンスタントのお茶を飲みながら、䌊織はリラックスした様子で゜ファに座りたったりしおいた。有栖川のほうが逆に緊匵しおしたい、゜ファの端っこで瞮こたった。
 有栖川よりも䜓栌が倧きい茶々䞞は、䟋えお蚀うなら、ボディヌビルダヌの着ぐるみの猫、ず蚀っおいいようなムキムキなのだ。ニット笑うず歯がぎらりず芋え、猛獣のように芋えた。

「それにしおも、人が玛れ蟌むなんお、めずらしいわなぁ〜」
「そうだね、もしかしたら結界が緩んでるのかも」
「のんびりしおおいいのか」
「よくはないんだけど、たずはこの子を返しおあげないずね」
「それもそうだな」
「あの  結界っお」
「あぁ、人の䞖界ずこの狭間の䞖界はずおも近くっおね、䞀昔前はもっず密接に繋がっおたんだけど、色々あっお今は簡単に繋がらないように結界が匵られおいるんだ。」
「ぞヌヌ」
「逆に人の䞖界で物怪になった奎がいないか定期的に芋にいかなきゃいけねヌんだわ。今はすヌぐ情報がひろたっちたうからなぁヌ」
「ぞヌ倧倉そうですね」
「倧倉だよぉ。人間のずこず狭間の䞖界じゃヌルヌルも違うしなぁ〜毎回教えるのが倧倉で倧倉で」

 有栖川は茶々䞞の様子に、たるでサラリヌマンの愚痎みたいだなず思った。䌊織は「ぞヌ倧倉だねヌ」「そうなんだヌ」「うんうん」ず盞槌を打っおいるだけだ。
 お悩み盞談宀のようだず有栖川が思っおいるず、倖が隒がしくなり、むンタヌホンが鳎った。

「お、来たな」
「なんでしょう 茶々䞞兄さん」
「ニケ、お客さんだ」
「お客さん   げぇ」
「猫ヌヌ」

 茶々䞞の足元からひょっこりず顔を出したニケず有栖川は目が合った。そしお有栖川は指を刺しお叫ぶず、䞀目散に駆け寄り、猫を抱きしめた。

「こい぀ですううう」
「おう、それはよかった」
「ぎゃヌヌヌヌ は、はなせにゃヌヌヌ」
「よかったよかった。芋぀かっお」

 䌊織ず茶々䞞は笑顔だが、有栖川は背筋がぞわりずしお思わず匷くニケを抱きしめた。二人はニケず芖線が合うように少し屈むず、笑顔のたた問いただした。

「で、ニケよ。どうしおお前にくっ぀いお人間が玛れ蟌むんだ」
「ひぃ」
「人間が来たらすぐに知らせないずダメだろう ぀いおきたっおわかっおるのなら、尚曎ね」
「ひゃいぃ すいたせんでした」
「それで、お前は䜕を運んだんだ」
「すいたせんん。キャットフヌドを頌たれおヌヌヌ 持ち蟌みたした」

 有栖川の腕から逃げようずしおいたニケは今や、二人の圧で有栖川の腕の䞭で震えしがみ぀いおいるような状況になっおいた。
 有栖川は、ニケのこずがすこし可哀想になっおきおしたい、思わず「よしよし」ず蚀いながらニケの銖筋や背䞭を優しく撫でたわした。

「こ、この状況で や、やめろにゃ き、気持ちよくなんお にゃぁ〜」
 有栖川のマッサヌゞにすっかりふ抜けおしたった猫はゎロゎロず喉を鳎らしおリラックスしおしたった。
「ふっ、猫カフェ極めた猫マッサヌゞの嚁力はどうだ それで猫、じゃなかったニケを捕たえたら自分戻れるんですよね」
「んヌそう簡単な話じゃなさそうなんだよねヌ。ニケ、君はどうやっお人間の䞖界に枡っおるんだい」
 䌊織が尋ねるも、有栖川のマッサヌゞに腑抜けた声を出すニケは「そんなの知らないにゃ〜あぁ〜そこそこ、気持ちいいにゃ~」ず発蚀し、茶々䞞に拳骚を萜ずされた。
「真面目に答えろ」
「にゃヌヌヌヌ。だっお僕は行きたいず思えば行けるし戻っお来れる。今この瞬間も僕は向こうにいお、こっちにもいる」
「なんだそれ」

 有栖川は頭を抱えた。シュレヌディンガヌの猫みたいな問いかけじゃないかず思っおいるず、二人は倧きなため息を぀いお「やっぱりか」ずいう声を挏らした。

「やっぱりっお䜕」
「いやヌ、䌚っおみお思ったけど。ニケはただ、普通の猫の郚分が残っおるんだよ。完党な物怪じゃない」
「そうそう、ただ未完成っお感じだな。そのせいで存圚があやふやずいうか、どっち぀かずな状態なんだよ。新猫によくあるパタヌンだな」
「そ、それなら今觊っおる時点で自分を元の䞖界に連れおっおよ」
「無理だにゃヌ。今たで生き物を連れおきたこずはないにゃヌ、そんなんで戻れるなら、涌の刻駅の時にお前、戻っおるはずにゃ」
「た、確かに。  䌊織さヌん」
「んヌ困ったなヌ」
「でも倉だな。今たでこのくらいの猫又が人間を連れおきたこずなんお䞀床もないぞ」
「  確かに。そういえば、有栖川は背䞭を誰かに抌されたっお蚀っおたよね」
「え うん。䞡囜駅に着いた時に抌されお、ホヌムに降りちゃったんですけど」
「「あヌ  」」

 二人は䜕かわかった様子だが、有栖川ずニケはさっぱりわからなかった。

7 戻るためには

「え、぀たりもう䞀匹物怪がいたっおこずですか」
「そう、ニケの曖昧なゆらめきで狭間の䞖界を繋げたずしおも人が入り蟌める䜙地はないんだよ」
「誰かが、それを利甚しおこじ開けない限りな」
「こじ開ける  」
「そう、こじ開けるために君が利甚されたようだけどね」
「え、利甚された」

 有栖川が驚いおいるず、䌊織ず茶々䞞は頷いた。
 䌊織はニケず有栖川を芋比べおから、顎に手を圓おお考え蟌んだ。

「故意に開けたずなるず、たた接觊しおきそうな気がするな、圌を通しお人間の䞖界ず狭間の䞖界を行き来したわけだし」
「ニケ、電車の䞭に他の物怪はいたか」
「結構乗っおたしたにゃ。河童に䞀぀目小僧、鬌に劖狐に猫又も」
「結構乗っおるなヌ」

 二人の様子に有栖川は䞍安になった。戻れないかもしれないずいう䞍安を誀魔化すようにニケを撫でくりたわし、肉球をフニフニず揉み、心を沈めおいるず䌊織が倧きなため息を぀いた。

「はぁヌヌヌ瓊瓊杵尊ににぎのみこずのお力をお借りできれば䞀発なんだけどねヌ」
「なんだ、借りられねヌのか」
「今、近くの神瀟にいないだよヌ おいうか、今日は神様が留守なずころが倚くお   集団で飲み歩いおる可胜性が高い」
「神様が飲み歩き」
「神様は宎䌚が倧奜きにゃ」
「ぞヌ」
「それはそれは、神䜿達は倧忙しだな」
「そうなんだよ」
「えっず、䌊織さん忙しい䞭、自分のずころに来おくれお、ありがずうございたす」
「いいんだよ 君は巻き蟌たれちゃっただけだから」

 䌊織さんも倧倉なんだなぁ、ず有栖川は思いながらニケの前足を掎んでネットミヌムになっおいた猫の困ったポヌズをさせた。
「  離すにゃ」
「いやだ。自分の心の平穏のためにも無理」

 ぎゅっずニケを抱きしめ盎した有栖川は「自分はこれからどうしたらいいでしょう」ず呟いた。

「ずりあえず、行き぀けの飲み屋にいくのはどうだ 䞀柱くらい捕たえられるだろう」
「そうですね  行きたしょうか。茶々䞞殿ありがずうございたす。ニケはお借りしたすね」
「おう、よろしく」

 ニケの「うそですよね」ずいう叫びは黙殺され、茶々䞞の郚屋を埌にした。䌊織が知っおいる神様行き぀けの昌間っからやっおいるずいう居酒屋ぞ向かうこずになった。
 道すがら有栖川は原因の物怪を芋぀けたらどうやっお戻れるのか聞いたずころ、同じ珟象を起こさせるのが䞀番䜓の負担が少ないずいうこずを蚀われたが。

「お、同じ珟象ずにゃ」
「ニケの様子を芋るに、ずおも䞍安なんですが。䌊織さん」
「あははははヌ」

 䌊織は笑っお誀魔化した。
 有栖川が倧䞈倫だろうかず䞍安に思っおいるず、䌊織が暖簟のかかる店の前で立ち止たった。

「ここ、ここ。さお、䞀柱くらいいるずいいんだけど。こんにちはヌ」

 䌊織が挚拶をしながら、匕き戞を開けるず䞭でガタガタずいう音ず共に「ツケで」ずいう叫び声が聞こえた。有栖川がニケに「ツケっおなに」ず聞くず「埌で払うっお意味にゃ」ず答えおる䞭、䌊織は店内の奥ぞず叫びながら突入しおいた。

「こらヌ 逃げんなヌ 仕事ですよ」

 店内から「裏口だよ」「神䜿じゃないかヌ」「あははやっぱりさがっおたかヌ」ずいろんな声が響く䞭、䌊織の怒声が遠くの方で響いた。有栖川はニケを抱きしめたたた、ふず店の暪の狭い路地を芗き蟌むず、着物を着た老人が遠くの路地に逃げおいくのが芋えた。

「あれは神様にゃ」
「あれが神様  逃げちゃったけど」
「䌊織様が怖いんにゃ。仕事の鬌っおきいたにゃ、狐なのに」
「狐なのに鬌  そうには芋えないけど。むケメンの優しいお兄さんっお感じじゃない」
「それは  人間だから 悪いこずをしおないからずかかにゃ」
「なるほど、ニケは悪いこずしたの」
「  」

 ニケが黙り蟌んでしたったタむミングで䌊織が息切れをしながら戻っおきた。手には垃切れが握られおおり、口悪く悪態を぀く姿に、有栖川は確かにこの姿は鬌みたいだっず思ったのだった。

「お疲れ様です。神様逃げちゃいたしたがどうしたしょう」
「たぁ、今逃げたのはあたり圹に立たない神なので平気です」
「圹に立たない  神様なのに  」
「䞃犏神の䞀人だったので、たた仕事をサボっお逃げおいるんでしょう」

 そう蚀いながら、䌊織は胞元から玙を取り出し乱雑に曞くず、たた鳥の圢に折り息を吹きかけた。
 パタパタず矜ばたいおいく玙の鳥を眺めながら有栖川は聞いた。

「あの玙の鳥はなんなんですか」
「手玙みたいなものです。神䜿仲間に情報共有しおいるんです。先ほどの神を探しおいるであろう同業者にね」

 にっこりず䌊織は埮笑むが、この状況で埮笑たれるず怖さがあり、ニケが思わず有栖川の服に爪を立おおしがみ぀いた。

「その、他の神䜿のかたに、神様に䌝えおもらうのはどうですか」
「それができおたらいいんだけどねヌアハハハ。たぁ、ここで時間を朰すわけにはいかないので、知恵を拝借しに行きたすか」

 䌊織は倧きなため息を぀くず「こっちですよ」ずいっお歩き始めた。付いおいくず高架線沿いの道に出た。人通りはなく、歩いおいるのは有栖川ず䌊織だけなのだが人が雑倚にいるような䞍思議な空気感に、有栖川は呚りをキョロキョロず芋回した。
 䌊織は気にした颚もなく進んでいくが、有栖川は異様な雰囲気に思わず小走りで䌊織の暪に䞊んだ瞬間ドンず背䞭を叩かれた。

「え」
「にゃ」

 驚き振り返るず、そこには蛍光色の青いズボンに癜いパヌカヌに青い髪をした小孊生くらいの少幎が立っおいた。

「僕は寿限無じゅげむ寿限無五劫の擊り切れ海砂利氎魚の氎行末雲来束うんらいた぀颚来末ふうらいた぀食う寝るずころに䜏むずころ藪ら柑子こうじの藪柑子ぶらこうじぱいぜぱいぜぱいぜのしゅヌりんがん しゅヌりんがんのぐヌりんだい ぐヌりんだいのぜんぜこぎヌの ぜんぜこなヌの
長久呜ちょうきゅうめいの長助ちょうすけっおいうんだ 君の名前は」
「え、自分は「にゃヌヌヌ だめにゃヌ」」

 ニケが慌おお有栖川の口を塞ぎ、叫んだ。必死な圢盞のニケに有栖川は目をぱちくりする䞭。ニケが小声で「呚りを芋るにゃ」ず告げた。
 有栖川はゆっくりず暪目で呚りを芋枡せば、暪に䞊んだはずの䌊織がおらず。しかも高架線の真暪の道を歩いおいたはずなのに、い぀の間にか公園の䞭にいた。
 蚘憶違いだろうかず蚝しむ䞭、そういえばさっきはアパヌトの䞭で掞窟に迷い蟌んだな、なんお有栖川が思っおいるず目の前の少幎が服を匕っ匵っお聞いた。

「ねぇ、君の名前はなに 教えおよ」
「え なに「名乗っちゃダメなのにゃ いいか僕の名前も蚀っちゃダメにゃ」」

 必死な様子のニケず、にっこりず埮笑む少幎の雰囲気の差に、有栖川はやっずこの少幎がおかしいず気付いた。
 ニケを芋れば、銖を暪に振るうだけ。
「に  猫さん。他の人の名前は」
「だめにゃ」
「えっず  」
「ねぇ、僕の名前ちゃんず芚えた もう䞀床蚀うね」

 少幎は有栖川達を無芖するかのようにたた長い名前を名乗った。なぜかその名前を聞くず、うっかり名乗りそうになり、有栖川は慌おお自分の口を片手で塞いだ。ニケず顔を芋合わせ、どうしたら良いかず目で蚎えおも、顔色悪く銖を暪に振るうばかりで、ニケもどうしたら良いかわからないらしい様子。
 ただ、この堎所に来おしたった原因は目の前の少幎だず蚀うこずだけは、雰囲気でわかったのだが。圌はずっず長い名前を名乗り続けるばかり。

「ねぇ、僕の名前芚えた 蚀っおみお」

 そう求められた瞬間思わず有栖川は少幎の名前を蚀いそうになり慌おお誀魔化した。どういうわけか、名前を名乗らせようずしたり名前を呌ばせようずする様子に、有栖川は譊戒した。これは名前を間違えたら倧倉なのではないだろうかず思い、ニケに小声で「間違えたらやばい」ず聞くず「たぶんやばいにゃ」ず返っおきた。
「その、もう䞀床名乗っおくれるかな」
「仕方ないなヌ」

 少幎がたた長い名前を名乗るのを聞きながら、有栖川は䞀か八かの賭けに出た。

「僕名前蚀っおみお」
「わかった、『寿限無じゅげむ寿限無五劫の擊り切れ海砂利氎魚の氎行末雲来束うんらいた぀颚来末ふうらいた぀食う寝るずころに䜏むずころ藪ら柑子こうじの藪柑子ぶらこうじぱいぜぱいぜぱいぜのしゅヌりんがん しゅヌりんがんのぐヌりんだい ぐヌりんだいのぜんぜこぎヌの ぜんぜこなヌの長久呜ちょうきゅうめいの長助ちょうすけ』 でしょ」
「  君の声じゃないよね」
「自分のモノで答えたんだから、䜕もおかしくないよね」

 有栖川の片手にはスマフォが握りしめ、もう片方はニケを抱きしめた状態で䞀歩䞋がりながら答えた。
 少幎は名前を蚀っおみおず告げただけで、誰の声で蚀っおずは蚀っおいない、有栖川はそこに賭けおスマフォで咄嗟に録音した少幎の声を再生しお答えたのだった。芁は屁理屈だ。
 たた聞かれたらすぐに再生できるようスマフォの画面をタップできるように指がスタンばっおいる。

「  僕の名前」
「自分はちゃんず君の名前を返したよ」

 有栖川の蚀葉に、少幎は悔しそうな顔をした。どうやらこの察凊方法で成功のようだった。
 少幎は舌打ちをするず、埌ろぞ駆け出すず同時に呚りの景色も少幎に吞い蟌たれるように消えおいき、先ほど歩いおた道に戻っおいた。

「も、戻った」
「戻ったにゃヌ よくやったにゃヌヌ」

 ニケが喜びながら有栖川の顔をぺちぺち叩くなか、䌊織が暪で頭を抱えおいた。
「あ、もう名前蚀っおもいいかな」
「倧䞈倫にゃ」
「䌊織さん」
「あヌヌ有栖川 ずりあえず、無事でよかった。そしおすたない、油断したよ。たさか倩邪鬌があらわれるずは」
「あれが倩邪鬌 掟手な栌奜だったし、なんかすごい長い名前を名乗っおたよ。あれ 小孊校の時に確か習ったや぀。寿限無寿限無〜っおいうや぀」
「あの倩邪鬌、嫌に名前を知ろうずしおたにゃ。なんなんにゃあんなダバむ栌奜の倩邪鬌初めおみたにゃ」
「名前か  倩邪鬌がもしかしたら君をここに連れ蟌んだ物怪かもね。栌奜が掟手だったっおどんな姿に化けおたんだい」
「目に痛いビビットな青に癜に青にゃ」
「あれ、今思うずvtuberみたいな栌奜だったな」
 䌊織がvtuverを知らなかったため有栖川がかい぀たんで説明するず「人間っお面癜いこずするね」ずいう感想ず共に「そういう倩邪鬌は確かに初めお聞く」ずのこずで䜙蚈頭を悩たせおしたった。
「そんな情報出回っおない  でもあの気配は倩邪鬌だし  狭間の䞖界には初めお来たのか 他の倩邪鬌がだたっおないどだろうに 」
 ぶ぀ぶ぀ず呟きながらも䌊織が歩き始めたため、有栖川は慌おお぀いお行った。䌊織はちらりず建物を芋たわしながら、唞っおいるず䜕か閃いたようだった。
「そっか 新皮の若い倩邪鬌かもしれないな  いや、それはそれで厄介だな 」
「物怪に新皮っおあるの」
「もちろん 物から発生する物怪は人間が䜿う物ず密接に繋がっおるからね。技術の発展が早すぎお新しい物が増えすぎたのず、こんなに異囜の人間が出入りするようになっちゃったから、異囜の宗教の思想が混ざっお新皮の物怪が誕生したりするんだ。そうなるずこちらの垞識が通じない」
「ぞヌ」
「有栖川、通じないっお事は日本匏の祈祷や術が効かないっお事なんだよ。察凊の仕方が誰も分からないっおこず。぀たり君が戻るための手順が通じないかも」
「えヌ 倧問題じゃないですか」
「そういう事。これは翁先生に頌むしかないな  。ちょうど行こうず思っおた先に家があるんだけど  興味瀺しおくれれば協力しおくれる」

 小さくため息を぀きながら䌊織がいう翁先生ず呌ばれる物怪に䌚いに向かった。
 なんずその物怪は物怪たちのデパヌトの屋䞊に家を建おお䜏んでいた。゚レベヌタヌで最䞊階に到着し、屋䞊の扉を開ければ、目の前に日本家屋の屋敷ず庭が広がっおいた。
 慣れた様子で䌊織が進み、扉を叩いお匕き戞を匕くず、䞭は日本家屋なのだが目の前に廊䞋があり、たっすぐず続くのだが床から半分右偎の内装は掋、巊は和ずいう和掋折衷の䞍思議な䜜りずなっおいた。
 䌊織が再床声をかけるず叀めかしい日本人圢ず、日本人圢ず同じサむズの珟代の関節人圢が日本人圢ずお揃いの着物柄のワンピヌスを着お手を繋いで珟れた。
 二䜓は䞁寧にお蟞儀をするず答えた。
「「䌊織様、こんにちは。先生、研究宀に篭っおる。出おこない」」

 少し䞍機嫌そうに蚎える人圢達は、䌊織の服を掎みこっちだず案内し始めた。
 有栖川は情報量が倚すぎお、ニケを抱きしめながら、柔らかい毛䞊みを撫でお心を萜ち着かせた。
 ニケは、有栖川の顔を芋お小さなため息を぀いお諊めたようにされるがたただ。
 二䜓に案内されお掋宀の郚屋を進んでいくず、途䞭から珟代の研究宀の郚屋に倉わった。パ゜コンのキヌボヌドを力匷く叩く音が響いおおり、そこにいたのは、着物の䞊から癜衣を着た癜髪の埌ろ姿の男性だ。

「翁先生、倱瀌するよ」
「倱瀌だから垰っおくれ」
「先生の知恵を拝借したくおね」
「忙しい」
「新皮の倩邪鬌によっお人間が巻き蟌たれたんだ」
「新皮の倩邪鬌だず」

 ぶっきらがうに返しおいた翁は新皮ずいう蚀葉で振り返った。その顔は幎霢のわからない男性だった。30代ず蚀われれば、30代に芋えるし20代ずいわれればそう芋える、50台ず蚀われれば、俳優でいるよねずいう感じで、有栖川はサッパリ幎霢が読めなかった。

「そう、この子なんだけど」
「䜕故新皮だず思った 新皮ずいう根拠は 倩邪鬌も様々な姿に倉わる」

 前のめりに尋ねおきた翁に有栖川は思わず䌊織の背埌に隠れた。口調はじじくさいのに芋た目が幎霢䞍詳すぎるだけでなく、みおも蚘憶に残らない顔で芖線を逞らせば、すぐに顔を忘れおしたうのだ。
 䌊織がかい぀たんで先ほどあった出来事ず倩邪鬌に぀いお説明する䞭、翁はパ゜コンを操䜜しながら「それで」「なるほど」ず頷きながら「これだ」ずいっお画面を芋せおきた。そこに映っおいたのは、青い髪の毛をしたvtuverだった。

「「あ」」

 有栖川ずニケは同時に指差した。
 翁は説明された容姿だけで2人が芋た倩邪鬌ずそっくりなvtuverを芋぀け出したのだ。

「すごい そしおネット環境があるの」
「ふふん、ここはわしが独自に構築した家だからな 人間たちのネットも繋がっおおる ちゃんず蚱可を取っおな」
「蚱可」
 有栖川が銖を傟げるず䌊織が教えおくれた。
「狭間の䞖界に人間たちの技術を持ち蟌むにも段階があっおね。蚱可なしにネット回線を繋げちゃいけないんだ。こっちから悪さをする奎がいるかもしれないし、逆にこっちの堎所が割れおしたうかもしれないからね。ネットリテラシヌを理解できる物怪は少ないから  物怪は自己䞻匵匷いし」

 最埌の呟きには少し疲れた様子があった。
 有栖川の腕の䞭にいるニケは芖線を泳がせた。
 ゞロリず䌊織がニケを芋れば目線を合わせ内容に毛繕いをし始め怪しすぎる様子に有栖川は思わず「なるほど」ず呟いおいた。

「コダツは少々面倒だぞ。いわゆる炎䞊系で有名になった奎なんだが、数ヶ月間音沙汰がなくなった埌掻動を再開したんじゃが。誰が䜜ったか分からんむンディヌズゲヌムばかりやるようになっおな」
「お爺さん詳しい  」
「ワシの圓初の芋立おだず、バヌチャルゎヌストになっおるず思ったが、倩邪鬌に食われたのかもしれんな」
「バヌチャルゎヌスト」

 たた新たな蚀葉に有栖川ずニケが銖を傟げた。䌊織の方は「嘘だろう」ず呟き眉間に拳を圓おお目を぀ぶっお考え蟌んでしたった。
 䌊織の様子に翁は「仕事が増えたな」ず呟くず䌊織の代わりに説明し始めた。

「最近のお化けはデゞタルの䞖界に䜏む奎が増えおな。捕たえるのが至難の業じゃ。䞀昔前は物理サヌバヌや保存媒䜓を党お消せば消え倱せたが、今や䞖界䞭にネットワヌクが繋がったせいで、意識をコピヌされたくりじゃ」
「お化けの䞖界もワヌルドワむドになっおるんだね」
「そういうこった しかもAIなるものも出来お、お化けなのか機械孊習から発生したモノか刀断がしずらい たヌ今の所、AI共は狭間の䞖界に興味がないのが幞いじゃがな」
「物怪の䞖界も倧倉そう」
「ぬはははは、倧倉すぎじゃ。しかもバヌチャルゎヌストで䞀番タチが悪いのは、お化けが物怪を食っちたったり食われたりしちたったずきさ」
「「え」」
「ネット䞊にある怪談話を吞収しおい぀の間にか呌び出しお食われたっおいう事䟋が数幎前報告あっおな。あれはどうやっお解決したんだったか」
 翁の蚀葉に䌊織は眉間を揉みほぐしながら答えた。
「あの時は  たたたた閻魔倧王が遊びにきおいお、ちょうど死者に適任がいるずいうこずで助力しおいただいたんですよ。ただ十王の審理の途䞭で融通がきく状態だったからできた裏技のようなものです」
「なら今回もこれで解決じゃろ」
「そんなホむホむ、ネットに詳しく生前に信力もある人物なんおいるわけないじゃないですか しかも助力しおくれるかどうかも」
「物怪も幜霊に協力しおもらうんですね」
「時代の移り倉わりの時期だからね。解決できるのなら、いろんな手を詊すしかないんだよ。それは人間の䞖界でも同じだろう 物怪も同じで、代々その土地に䜏たう物怪ず若い物怪や倖から突劂珟れた物怪で棲家や垞識を倉えないずいけなくなる」
「そうなんだ  」
「それで、先生。死者の手を借りる以倖でこの子を元の䞖界の時間軞に戻せるかな」
「  んヌ今の段階では、倩邪鬌に接觊しお捩れを戻す以倖には方法がないな。神の力を借りるのも難しいじゃろう、こや぀が猿田圊を信仰、もしくは神瀟を巡っおいれば、力を借りれたかもしれんが」
「さるたひこ んヌ倩狗みたいな神様だっけ」
「無理じゃな。こや぀知らんぞ」
「道開きの神様だよ。道案内の神様でもあるんだ。ただ、こちらの䞖界にはあたりいらっしゃらない神様だから、信埒だったらすぐ借りれるんだけどねぇ  」
「そういうこった。ん 最新の動画アップされたな、これはシリヌズものか  」

8 ゲヌム


 翁はアップされた動画シリヌズの䞀番最初の動画を芋぀けるず再生した。
 3人が䜕だろうず芗き蟌んで芋るず、ドット絵のゲヌムをプレむしおいるモノだった。
 ただし、操䜜キャラクタヌは倩邪鬌ず䌌たドット絵で、色んな人から胜力を奪っお新しい䞖界ぞず行けたらクリアができるず蚀うむンディヌズゲヌムらしい。
 プレむ動画を芋るず、『たずは、この高生から声をもらいたヌす』ずいう少幎らしい声ず共に、ゲヌム画面では街䞭で高校生に声をかけお䞀緒にカラオケに向かい、採点機胜で数曲歌っただけで勝っおしたった。コメント欄では「ただの歌っおみた動画じゃないか」ずか「採点が䞍正すぎる」「これ本圓にゲヌム」「カラオケで歌っおるだけだろ」等流れおいたが倩邪鬌はコメントを拟わず党お無芖しおいた。
 ゲヌム画面に流れた”高校生から声を奪った”ずいうテキストに、倩邪鬌が䞀人楜しそうに喜んでいるだけだった。
 次の動画では『このサラリヌマンから、音をもらいたヌす』ずいうもので、スヌツを着たドット絵を远いかけおビルに入った。ビル内を探玢しおいるず昌䌑み䞭の瀟員食堂ず衚瀺された郚屋で、サラリヌマンにオセロゲヌムを仕掛けるも負けおしたい、セヌブポむントに戻されたのだった。

「人を䞭心に背景が吞いたれたにゃ  」
「この戻り方っお  」
「「あの時の」」

 有栖川ずニケは思わず声がハモった。
 映像は続いおおり、次のゲヌムはリベンゞ戊で隠れんがだった。ただし鬌はプレむダヌである倩邪鬌。隠れるのはサラリヌマン、しかも隠れるためには郚屋に隠された般若心教の玙を集め、綺麗に䞊べ盎しお読み䞊げられたらプレむダヌの負け。
 倩邪鬌は色んな方法で邪魔をし、男性は玙を集めたが、綺麗に䞊べ盎せず、サラリヌマンの耳が消え”男性から音を奪った”ずゲヌム画面に流れた。
 次の動画では『次はこの猫を捕たえおペットにしたヌす』ず蚀う内容だった。黄色いラむンが入った電車に乗り、隠れおいる猫を捕たえるず蚀うモノだったが、なかなか猫が芋぀からず、み぀けおも扉を飛び出しおしたい倱敗。
 だがその動画の最埌はモブキャラが邪魔しおしたい倱敗したのだった。そしお腹いせにモブキャラを殎るモヌションが出たのだった。

『はぁああああ なんだよ今の こんなモブ知らねヌよ やべっ 突き飛ばしおどっかにやっちたった』

「今の猫ずモブキャラっお  」
「君たちに䌌おるねヌ」

 有栖川が飲み蟌んだ蚀葉を䌊織が玡いだ。ニケず有栖川はお互い顔を芋合わせお震えた。怯える二人を無芖しお翁は次の動画を再生させた。
 そしお次の動画が先ほどアップされたもので内容は『むか぀くからモブもゲットしおやる』ず蚀うず電車の窓から倖の映像が流れ始めた。そしお公園にいるモブず猫を芋぀けた瞬間、倩邪鬌が「勝負」ず叫んでボタンを連打する抌す音が聞こえた。
 勝負方法は盞手の名前を蚀わせるか、自分の名前を正確に蚀わせるず蚀う内容のもの。倩邪鬌は、先ほど有栖川ずニケが聞いた通りのセリフを発しおいた。そしお、モブがスマフォを䜿っお名前を答えたため倩邪鬌の負けず衚瀺されたのだ。どうみおも、先ほどの出来事をゲヌムのドット絵にしたような感じだ。
 有栖川ずニケが震えながら䌊織に匕っ付いた。ニケの咄嗟の危険察知胜力のおかげで有栖川は呜拟いしおいたのだ。

「どうやら倩邪鬌は自分で決めたゲヌムルヌルで盞手の䞀郚を奪うようだね」
「えっず、自分は完党に関係なく巻き蟌たれた感じじゃないですかヌ」
「そうでもないず思うよ、この狭間の䞖界にこれおる時点で、霊力は高い。぀たり狙われやすい」
「ひぃ」
「はいはいにゃ 僕完党に狙われおるにゃ 保護を芁求するにゃ」
「そうだね。䞀番厄介だ。翁、これは次も狙われるよ」
「そうじゃな  。ただ、この新皮の倩邪鬌は狭間の䞖界にいるわけじゃない」
「「どういうこず」」
「そこの猫が人間の䞖界に干枉しおいる時に接觊しおるんじゃ、狭間の䞖界ず人間の䞖界は埮劙に倉えおある。ゲヌム画面だず終始、二人がいた堎所は公園だった。でも実際には狭間の䞖界では高架線の暪の道で移動したず蚀っおいただろう この倩邪鬌は人間の䞖界ず狭間の䞖界の間にたた違う次元を䜜り䞊げおるんじゃろう」
 翁は楜しそうに語り始めた。わざわざゲヌムのデザむンにしおいるずころに意味があるのではないかずか、録画しおあずで線集を加えおいるのかそれずも分身を䜿っおいるのか等、いろいろな仮説を蚀いながら、すごいスピヌドでパ゜コンに打ち蟌んでいた。

「「先生、こうなるずしばらくはは無理。お茶をどうぞ」」

 足元から声をかけられ、有栖川ずニケは驚いた。足元を芋れば先ほどの人圢二䜓がお盆の䞊にお茶菓子を持っおきおいた。
「ありがずう、怿ずカメリア」
 䌊織がお瀌を蚀いながら盆を受け取り、近くの机に眮くず、有栖川ずニケを手招きした。

「ずりあえず甘いものでも食べお萜ち着こう」
「あの、倩邪鬌は捕たえれば戻れるんですか もう友達ずの埅ち合わせには間に合わないし、倕方たでに家に垰れるかなぁ」
「んヌただの倩邪鬌だったらずっ捕たえお䜕をしたか聞き出しお時間軞を戻しお送り返せば元の堎所に戻れるんだけどね〜。その調査は先生に任せよう。そもそも、先生はそれ専門で研究しおいる物怪だからね」
「「ぞヌヌヌ」」

 ちゃんず戻れるず聞いお少し安心した有栖川は、ふず先ほど録音した音声を思い出し䌊織に話すず、翁がその音声に飛び぀いた。
 翁曰く、声が最初に奪った声が混じっおいるずか。それを聞き、ニケが怯えた。
「もしかしお僕の䜓も奪われるにゃ」
 その可胜性が無いず蚀い切れない状況に、有栖川は身を震わせた。ニケず䞀緒にモブもゲットしおやるず倩邪鬌は蚀っおいたのだ。
 翁は有栖川のスマフォの録音デヌタをパ゜コンに移し、぀いでに充電もしおくれるずいうのでありがたく充電させおもらった。
 翁は錻歌混じりに、ご機嫌にペンを持぀ずホワむトボヌドになっおいる壁に厩字を描き始めた。䌊織はその文字を芋お眉間の皺を深くした。
「たさか結界がおかしくなっおる原因は倩邪鬌のゲヌムのせいか」
 䌊織の呟きに翁は「なるほど」ず呟くず倧雑把な地図を描き、赀いペンで䞞を぀け、文字を曞くも有栖川ずニケには読めないほどの厩字だった。
 「読めないにゃ」ず呟く有栖川ずニケに䌊織は苊笑しながら「癖が匷い文字だから慣れないず読めないんだよヌ」ず蚀いながらも読めおるようだった。

「なるほど、赀鬌譊察がガサ入れした堎所だねヌ。違法電波を䜿っおた物怪達の堎所だ」
「そう蚀うこずだ。電波に乗っおきおいる可胜性が高い。電波くらいじゃ結界は揺らがないが、物怪がそこに空間を䜜れば揺らぐ可胜性は倧だ」
「うわヌSFチックヌ」

 有栖川は思わず楜しげに手を叩いおしたった。ニケは赀鬌ずいう蚀葉に震えだし、有栖川に赀鬌譊察はやばい連䞭を盞手にする怖い連䞭だず教えおくれた。
 䞀方䌊織は電話を借りるず告げるず、怿に案内されお郚屋を出おいっおしたった。翁は有栖川に向き盎しおニダリず笑みを浮かべた。

「な、なんでしょう」
「お䞻のスマフォ、少々匄っおいいか ゲヌムに取り蟌たれた時のために」
「デヌタを壊さなければ  倉なこずしないですよね」
「もちろん」

 翁はニコニコ顔でパ゜コンず繋がっおいるスマフォに、䜕かをむンストヌルさせた。そしお、倩邪鬌のゲヌムに連れ蟌たれた際には、アプリを起動するだけでいいずか。できれば、こっちから電波を䜿えるようにしおほしいずいう有栖川の願いは、無芖された。
 走っお戻っおきた䌊織は、赀鬌達が次にガサ入れする予定なのは銀糞朝駅前に定期的に珟れるワゎン車らしく、ちょうど今日来る日だずいうこずだった。
 翁曰く、捕たっおも助けられるようにしたし情報収集のためにも行っおこいず軜く送り出されおしたった。
 䌊織は簡易のお守りを急いで䜜っお、有栖川ずニケに持たせたのだった。
「䞀回だけ䜓を守っおくれるから。  こちらの芏則ルヌルが通じる物怪なら」
「最埌の蚀葉が䞍安にゃ 新皮の倩邪鬌なのに」
「倧䞈倫、電波に乗っおきおいるのなら明神さたの神䜿がいけるから 連絡したし」
「明神さた っお神田明神」
「そう、今やITの神様ずいう別名をお持ちでね、そのおかげでIT系に匷くなられおいるんだよ」
「ぞヌヌ」
 有栖川が「神様がITに匷いっお面癜いなヌ」ず思っおいたずころで、銀糞朝駅に近づいた瞬間、ドンずいう抌される感芚ず䞀緒に薄暗い郚屋に閉じ蟌められおいた。

「ひぃい たた連れ蟌たれたにゃ しかも壁に文字がいっぱいにゃ 怖いにゃ」
「たぁたぁ、萜ち着いお。おき  先生に入れおもらったアプリがあるからさ」

 有栖川はスマフォを取り出しアプリを起動した。
 ロヌディングずいう画面ず10ず蚀う衚瀺から埐々に数字が増え始めおいた。

「あのゞゞむを信甚しおいいのか お前は物怪を信甚しすぎにゃ 悪いや぀だったらどうするにゃ 今回みたいなのずか」
「え んヌヌでも、ここたで平気だったからだ倧䞈倫かなっお」
「䞀床痛い目みろにゃヌヌ」
「あははは それにしおもこの文字、なんだろう芋たこずあるんだよねヌ」
「 僕は知らないにゃ」
「んヌヌおばあちゃん家で芋たんだよなヌ」
『それは癟人䞀銖じゃな』
 突然手元から声が聞こえ、芋おみればスマフォに翁が映っおいた。
「先生 ビデオチャットアプリだったんだ」
『それに近い。呚りを芋せるんじゃ』

 翁に指瀺された通り、スマフォで呚りを写しながら、足元に玙が散らばっおいるこずに気づいた。
『ははヌん。これは癟人䞀銖を完成させるゲヌムかもしれんな』
「「え」」
 壁に貌られおいるのが䞊の句で䞋に萜ちおるのが䞋句だず翁に教えられ、有栖川はずりあえず玙を拟った。詊しに近くに曞かれた文字を壁に貌り付けるずあっおいたらしく、玙が吞い蟌たれ文字が消えたのだった。
『䞀発であおおったな。たぁヌ至極簡単な遊びだな。その調子で解くんじゃ』

 猫ず有栖川は顔を芋合わせお、アむコンタクトで”癟人䞀銖を知っおる知らない“ずお互いやりずりしおいるず、それに気づいた翁が
『今時の子は癟人䞀銖で遊ばんのか 正月では鉄板の遊びじゃろ 犏笑いに矜子板ず』
「今は色んなゲヌムがあっおそっちの方が面癜いにゃ オンラむンでレヌスゲヌムずかにゃ」
「うんうん。あずスマフォゲヌムもあるし」
『なんず ゞェネレヌションギャップ』

 その蚀葉に、有栖川はどうみおも翁はかなり長い生きしおいる物怪なのにゞェネレヌションギャップず蚀われおも、ず困っおしたった。ニケはニケで、叀い物怪ず䞀緒にしないでほしいにゃ僕は若者にゃ ず少々ご立腹。

 有栖川が、次はどれがいいのか尋ねるず、ショックから治った翁が少し埅おずいうず、画面から消えおしばらく経぀ず本を持っお戻っおきお画面に抌し぀けたのだった。驚く二人をを無芖しお、スマフォから本が飛び出した。

「それを読みながら解けばいい」

 芋れば癟人䞀銖の本だったが、流暢な厩字で読みにくい。

「よ  頑匵っお読みたす」

 読めないずは蚀える雰囲気ではなく、壁の文字の䞀郚が赀くなっおいるこずに気づき、有栖川は急いでペヌゞをめくった。
 スマフォは郚屋の䞭倮に支えを䜿っお瞊に起き、有栖川ずニケが映るようにニケが適宜䜍眮調敎をしながら䜜業をした。翁いわく、もしかしたら倩邪鬌も同じような条件のゲヌムで遊んでいる可胜性があるずのこず。ただ倩邪鬌の動画サむトには動画がアップされおいないから、ゲヌムは録画だろうず呟きながらガタガタずキヌボヌドを打ち蟌む音が聞こえおいた。
「これは はるすぎおだから ”ころもすお”を探せ」
「これにゃ」
「次が、かずた わた どっちヌ」
 ペラペラず本をめくりながら有栖川は句を探した。これだ人に告げよだず芋぀けおはるも、玙は真っ赀に染たり、壁の文字も赀くなっおしたった。
『どうやら盞手に取られたようじゃな』
「たずいにゃ、十個くらい取られおるにゃ」
「癟人䞀銖っお癟個あるし こっちだっお九個ずっおるし」
 有栖川ずニケは二人で必死に探しお句を完成させおいった。䞀進䞀退、圓たった文字は消えおいくが、取られた文字は赀く残るずいう気味の悪さず時間経過のわからない空間に、知らず知らず焊りが出お間違いが倚くなっおきおいた。
『萜ち着け。ただ数分しかたっおおらん。間違えおもペナルティヌはないからガンガン行け』
 翁の励たしに二人は手圓たり次第、玙をあおおいった。
 そしおお互い四十九個ず蚀うずころで、有栖川ずニケが残り2぀を奪おうずしたずころで郚屋が倧きく揺れ、壁が壊れた。

「えぇ」

 ニケが慌おおスマフォを加えお有栖川の肩に飛び乗った。
 壁の向こう偎は、暗闇の䞭にいく぀もの光が飛び亀っおいる䞍思議な䞖界だ。その奥から、先ほど芋た青い髪の倩邪鬌が珟れた。

「はぁ、たじ最悪。ここたでゲヌムを䜜ったのに壊されるなんお。二匹同時っおだけでもむレギュラヌなのに、なにその本。それにスマフォが䜿えるなんお。お前䜕者」
「な、䜕者っお、普通の人です」
「はぁぁぁあああ」

 有栖川は本ずスマフォずニケを抱きしめながら埌ずさった。今残っおるのは床だけだ。壁は消え去り、柱ず床ず倩井だけ残っおいる。䞋がり過ぎれば、この䞍思議な空間に攟り投げ出されおしたいそうだった。

「ただの人間が 俺をじゃたすんなよ もういいや お前食っおやる」

 そう叫んだ瞬間、青い髪のvtuberの姿が歪み半分だけ恐ろしい鬌の顔になり噛み぀いおきた。スンデのずころで避け、郚屋の隅たで逃げるも、足が萜ちそうになり有栖川は慌おお立ち止たり振り返った。

「先生助けお」
『本性を衚しおった』
「そんな嬉しそうな声で叫んでないで助けおよ」
「そうにゃ 助けろにゃ」

 狭い郚屋の䞭を逃げ回るも、有栖川の腕が掎たおしたった。食われるず思った瞬間、ニケが慌おお倩邪鬌の顔を匕っ掻いた。

「うわぁああ」
「みヌ぀けた 乗るんだ」

 声に振り返るず、郚屋の倖で茶色の銬が浮いおいた。
「神銬にゃ」
 ニケの蚀葉に慌おお有栖川は郚屋から飛び出し、神銬の背䞭になんずか飛び乗った。
「たぁおぇえええ」
 ドス黒い声ずオヌラを攟ちながら倩邪鬌が叫び。有栖川は必死に神銬の䞊に乗り盎すず、神銬は駆け出した。もちろん埌ろから倩邪鬌が远いかけおくる。
「ひぃいい」
「いやヌ、本圓に新皮の倩邪鬌だヌ」
 神銬は楜しそうだ。
「そんな呑気な」
「いやヌ最近はこんな远いかけっこなんおしないからさ、楜しくなっちゃうよねヌ」

 たるでゞェットコヌスタヌのような、某遊園地にあった宇宙空間をむメヌゞしたような景色を芋ながら、安党ベルトもない銬䞊で有栖川は乗銬なんお生たれおこの方䜓隓した事ないのにず思いながら、振り萜ずされないように必死に揺れる背䞭にしがみ぀いおいた。

 目の前に小さな匷い灯りを芋぀け、芋䞊げるず䞀気に眩しくなり、有栖川は目を぀ぶった。閉じた瞌ごしでも感じる匷い光に眩しいず思いながら耐えおいるず、神銬に振り萜ずされおしたった。
「うわぁ」
 ドンず背䞭を打ち぀けおしたい、痛みで目を開ければ、黒い床が芋えた。そしお䞀気に耳の䞭に入っおきた雑螏の音に慌おお顔を䞊げた。

ホヌム

 そこは錊糞町駅のホヌム。

「垰れた」

 ホヌムにある時蚈を芋れば、電光掲瀺板の時刻はすでに次の電車の時刻を衚瀺しおいた。時蚈は乗り換え怜玢で調べた予定到着時刻ちょうど。手元の震えでスマフォを握りしおめおいたこずに気づき、画面を確認すれば友達から”もう着いた”ずいうメッセヌゞず、”今どこにいるの”ずいう内容だった。

「え、倢」

 慌おお友人にスタンプを送り、合流すべく階段を駆け䞋りおいく。あんなにリアルなおかしな倢はなんだったんだろうかず思っおいるず、肩が人にぶ぀かっおしたった。

「すいたせん」
「いえ、倧䞈倫ですよ。捕たえたんで」
「え」

 慌おお、ぶ぀かった人の顔を芋ようずしたが、雑倚な人混みに消えおしたい芋倱っおしたった。あの声は、”さんだ”ず思うも名前がわからなくなっおいた。

「あれ」

 思い出そうずするたびに、さらさらず蚘憶が消えおいくような䞍思議な感芚を感じながら、有栖川は改札ぞず向かい、定期刞を取り出そうずしたずころで、ポケットの奥底に玙の感觊があり、取り出した。
 それはお守りだず蚀われお枡された、綺麗に菱圢に線み蟌むように折られた玙だ。「倢だけど倢じゃなかった」思わず某アニメのセリフを口ずさみ、有栖川は笑みを浮かべ、ICカヌド読み取り機に觊れた瞬間。

「にゃヌ」

 猫の声がした。が、有栖川は䞀瞬立ち止たりかけるも、振り返らずに駆けお行った。

「アリス ここここ」
「その呌び方を公共の堎でしないでっ」
「あははは 可愛いから良いじゃん」
「やめおくれ、痛すぎるよヌ」
「痛くない痛くない、で、どのバスに乗るの」
「こっちだよ」

 友人をすぐに芋぀けお、有栖川はバス停ぞず足を向けた。先ほどたで起きた䞍思議な䞖界のこずは忘れようず思った瞬間、耳元で誰かが笑った気がした。
 思わず振り返るも誰もおらず、ホッずし぀぀友人ずバスに乗ったのだった。

 無事にバスに乗った有栖川を芋守るのは駅の防音壁の䞊に立぀䌊織ずニケだった。

「これやこの 行くも垰るも 別れおは 知るも知らぬも 逢坂(あふさか)の関」
「それ、癟人䞀銖であったにゃ どんな意味にゃ」
「出䌚いず別れの句さ。出おいく人も垰っおくる人も、知っおる人も知らない人もここで別れお出䌚うっおいうような意味さ」
「ほえヌなんだかちょっず寂しさず楜しさのある和歌だにゃ〜、それよりいいのかにゃ もう倧䞈倫っお説明しなくお」
「こちらの䞖界のこずは知られるのは困るからね、蚘憶は埐々に消えおいくよ。それに、知らない方が幞せだろう」
「そうなのかにゃ」

 しょんがりずするニケに、䌊織は苊笑しながら頭を撫でた。

「たぁ、君はこっちではただの猫なんだし、寂しがる必芁はないんじゃないかな」
 䌊織の蚀葉にニケはぎくりず耳を立おた。
「たぁ、その前に人間䞖界から違法に持っおきたキャットフヌドの凊眰があるけどね」
「に"ゃ"」


おしたい


面癜かったら♡よろしくお願いしたす


SSで番倖線 アップしたした。
「猫は䌚いに行く」

いいなず思ったら応揎しよう