香港編3. 深夜の下ネタ大会と、ゲストハウスの人間模様|1日目 後編
名前も知らない。 連絡先も交換しない。
翌朝には散り散りになる。
それでも、深夜にひとつの部屋で笑い合った時間は、 何十年も記憶に残る。
日記:2002年9月 ゲストハウス、深夜
宿は「ラッキーゲストハウス(LGH)」。
チェックインして部屋を見ると、想像通り広くはない。
2段ベッドが並んでいて、窓がひとつ。
トイレとシャワーは共用で廊下の奥にある。でも休むには十分だ。
荷物を置いて、早速夜の香港を歩きに出た。
路地の小さな麺屋で夜食を食べた後、LGHに戻ると、すでに何人かの日本人旅行者たちが集まっていた。
みんな1ヶ月以上の長旅をしている猛者たちだった。
中国を一周してきた人、去年はヨーロッパも回ったという人。話を聞いているだけで、旅への憧れが募ってきた。
話題は多岐にわたった。大阪の話、北海道の話、旅先での失敗談、香港やマカオの情報交換……。
そして一番盛り上がったのは、深圳に関する「下ネタ」だった。
深圳の床屋はただ髪を切るだけではなく、「マッサージ付き」という噂があるらしい。日本人とわかると特別に丁寧にしてくれるとか、してくれないとか……。
真偽はともかく、その話を語る男性の顔がいきいきとしていて、Yさんは興味津々。深夜の宿に笑い声が響き渡った。
あっという間に現在深夜2時半。Y さんはいつの間にか眠ってしまっていた。
そして今なぜかお腹が痛い。屋台の食べ物かな…。翌日の予定も何も決めていない。
まだ実感がわかないけど、とにかく眠れるうちに眠ろう。Good night。
44歳の今、振り返って。
言葉が違っても、笑いは同じだ。
あの夜、深圳の話で腹を抱えて笑ったおじさんの顔を、今でも覚えている。 笑いは国境を越える。それを体で学んだ夜だった。
【チェーホフ:短篇集より】
「人は話すことで孤独から救われる。笑い合うことで、よりいっそう救われる」
見知らぬ旅人たちが、ひとつの部屋に集まって笑い合う。 名前も知らなくていい。連絡先も交換しなくていい。 その瞬間だけ共有した笑いが、旅の記憶として一番長く残る。
【マーク・トウェイン:旅行記より】
「旅は、偏見と狭量を消し去ることができる。広い地球を見れば、狭い心では生きられなくなる」
異国の見知らぬ人と、深夜に笑い合う。それだけで、世界は少し広くなる。
あの頃の僕は知らなかったが、あの笑い声が積み重なって、今の僕になっている。
次回は「香港2日目 前編」。
人生初の飲茶と、プーアル茶との出会い。
この記事が少しでも心に残ったら、ハートマークやコメントをいただけると嬉しいです。
香港編はじめから読む方は→
タイ編を読む方は→
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます! 