香港編2.「May I help you?」見知らぬ街の救世主|1日目 中編
バスを降りた瞬間、どこにいるかわからなかった。
「ミラドール」方面に向かうつもりが、 気づけばまったく知らない場所に着いていた。
道を聞こうとすると「English No!」と返ってくる。
お手上げだ、と思った瞬間、声をかけられた。
「May I help you?」
日記:2002年9月 香港到着
パシフィック航空。機内は一人ひとりに小さなモニターが付いた、なかなかいい席だった。映画も流れていたが、途中から眠くなってしまい、食事のあとはそのままぐっすり寝てしまった。
気づいたら周りの人たちが思い思いの格好で眠っていた。
「あの人たちみたいに最初から横になれば良かった」と後悔しつつ、空港に降り立った。
新しいことが始まる時の、あの独特のゆとりと期待感。
また新しい世界に来れた。
1分1秒が新しい発見になる。それが旅の醍醐味だ。
空港では税関をさらっと通り抜け、オクトパスカードを購入。
市民の足である2階建てバスに乗り込んだ。
バスはすごいスピードで走り、車体が傾くほどのカーブも平気で曲がっていく。テンションは急上昇した。
ところが、どこで降りればいいかがさっぱりわからない。
「ミラドール」方面に向かうつもりが、気づけばまったく知らない場所に着いてしまった。
道を聞こうにも、英語で「Excuse me」と言った瞬間に「English No!」と返ってくる。お手上げだ。
困り果てていると、どこからともなく年配の男性が現れた。
「May I help you?」
バス停まで一緒に歩いて案内してくれた上に、荷物まで持ってくれた。
Y さんはかなり戸惑っていたが、おかげでどうにかゲストハウスに辿り着けた。
人の温かさに救われた、最初の夜だった。
44歳の今、振り返って。
言葉が通じない。地図が読めない。 でも「助けを求めた」から、助けが来た。
困った顔をしていたら、助けてくれる人がいる。 世界は今も変わらず、そういう場所だと思う。
【ヘレン・ケラー:講演録より】
「一人では何もできない。二人ならいくつかのことができる。みんなが集まれば、何でもできる」
助けを求める勇気さえあれば、世界はどこでも優しい場所になる。
【セネカ:『道徳書簡集』より】
「旅をしても自分から逃げることはできない。しかし、旅の中でこそ自分の本当の姿が見える」
あの時の僕は、英語ができないことも、地図が読めないことも、全部そのまま抱えて旅していた。それでも辿り着けたのは、助けを求めることをためらわなかったから。
次回は「香港1日目 後編」。
ゲストハウスの夜、旅人たちと過ごした深夜の大爆笑。
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