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僕が、小孊生の僕に远い぀くたでの話束谷みよ子『韍の子倪郎』

䞀冊の本を本圓に理解するのに、䜕十幎もかかる。
そんなこずがあるず思いたすか

今回ご玹介したいのは、束谷みよ子さんの『韍の子倪郎』です。

初めお読んだのは小孊3幎生か4幎生の頃。
読み終わったずきの「目の前がパッず開けた」ような感じ、あの感芚は生涯忘れないず思いたす。

モダっずしおいた感情が、急に晎れたような。
読曞感想文に曞きがちな「感動」ずは違う、もっず爜快な䜕か。
たあでも「感動したした」っお曞いた気がするけど笑
いずれにせよ、圓時の僕は、その感芚をうたく蚀葉に出来たせんでした。

それから幟幎月。
倧人になっお読み返しお、ようやくあの感芚がわかりたした。

いや、これは正確ではありたせん。
倧人になった僕が、再読によっお新しい意味を発芋したのではない。
小孊生の僕は、䜜品の倧切な郚分を既に受け取っおいた。
ただ、それを蚀葉にできなかっただけです。

再読ずは、昔読んだ物語をもう䞀床確認するだけの行為ではありたせん。
か぀おの自分が䜕を芋お、䜕を感じ、䜕を受け取っおいたのか。
その正䜓を、珟圚の自分が発芋する機䌚でもありたす。

これは、僕が䞀冊の本を䜕十幎もかけお理解した話。
そしお、倧人になった僕が、小孊生だった僕に远い぀くたでの話です。

物語のおさらい

たず、物語のあらすじを簡単に振り返りたしょう。

昔、ある貧しい山村に婆様ず暮らす䞀人の少幎がいたした。
名前は倪郎。
韍の子だから「韍の子倪郎」
桃から生たれたら「桃倪郎」
䌝統ず栌匏の名前ですね、倪郎。

ニヌト気質の倪郎は、い぀も山で獣たちず遊んでいたした。
ある日倪郎は、母芪が実はただ生きおいるかもしれないず知りたす。
母芪に䌚いに行く決心をしお、旅に出る倪郎。
山を越え、谷を越え、倩狗や鬌や䞍思議な存圚たちず出䌚いながら、倪郎は成長しおいく。
そしお぀いに、韍になった母ず再䌚を果たしたす。

ここたで聞くず「母ず子の絆の物語」「少幎の成長譚」ずしお読めたす。
僕も、そういう情緒的物語ずしお読んではいたのですが、読埌に感じた匷烈な気持ちは、倚分「情緒」ではなかった。

「発芋」ずか「カタルシス」ず呌ぶ方が近いず思いたす。
母子の再䌚シヌンよりも、その埌の展開の劙に感動した蚘憶がありたす。

僕の䞭に芜生えたものを考えおみる

さお、ここから少しネタバレを含みたす。
物語の終盀、倪郎は぀いに韍になった母ず再䌚したす。
そこで読者は、ある「問い」を突き぀けられるこずになりたす。

なぜ、母は韍になったのか

母は貧しい山村で暮らしおいたした。
劊嚠䞭の食性倉化で䜕も食べられない䞭、偶然芋぀けた䞉匹のむワナ。
そのような山の恵みは、厳しい環境では、集萜みんなで分けお食べなければいけないものずされおいたした。
でも母は、あたりの空腹に耐えきれず、䞀人で党郚食べおしたった。
共同䜓の掟を砎った眰ずしお、母は呪いにより、韍に倉えられおしたったのです。

この゚ピ゜ヌドを読むず、僕たちの䞭に暗黙の「二択」が浮かびたす。

A母が悪い。
共同䜓のルヌルを砎ったのだから、眰を受けお圓然だ。
B掟が悪い。
劊婊が、たかが魚䞉匹を食べただけで韍にされる。そんな掟がおかしい。

皆さんは、どちらを遞びたしたか
Aを遞べば、母を断眪するこずになる。
Bを遞べば、共同䜓のルヌルを吊定するこずになる。
どちらを遞んでも、誰かが「悪者」になっお終わる構図です。

でも倪郎は、どちらも遞びたせんでした。

倪郎は母を責めなかった。
かずいっお、共同䜓そのものを恚むこずもしたせんでした。
圌の目は、もっず別のずころを睚んでいた。

「そもそも、なんでこんなこずになったんだ」

母がむワナを独り占めしたから
村の掟が厳しすぎたから
違う、もっず手前に原因がある。

魚䞉匹を分け合わなきゃいけないほど、村が貧しかったからだ。
劊嚠した母が我慢できないほど、食べ物が無かったからだ。
誰かが誰かを断眪しなきゃいけないほど、資源が足りなかったからだ。
倪郎はそこに目を向けたした。

そしお圌は、韍になった母や出䌚った仲間達ず䞀緒に山を切り厩し、氎をせき止めおいた倧岩を取り陀き、広倧な蟲耕甚地を䜜り䞊げたのでした。

安易な前提に乗っお、誰かを眰しない。
代わりに、眰を生み出しおいた「環境」を倉える。

これが倪郎の出した答えでした。
母が悪いか、掟が悪いかずいう、目の前の二択の土俵に乗らず、「そもそも、この二択を生み出しおいるものは䜕か」に遡っお、そこから解決しようずした。

小孊生の僕は、この展開に驚き「目の前が開けた」感芚を芚えたんだず思いたす。
蚀葉にはできなかったけれど「提瀺されたAかBか」で争わなくおいい道があるんだ、ずいう発芋。
それが匷烈に爜快だったのです。

そしお、母が韍になったこずの意味。
倧人になっお読み返したずきに気づいたのが、この郚分です。

物語の前半では、韍ぞの倉身は明らかに「眰」ずしお描かれおいたす。
掟を砎った報い。
人間の姿を倱う悲劇。
母子が匕き裂かれる原因。
ずころが物語の終盀、この「眰」は「力」ずなっお珟れたす。

倪郎が田んがを䜜ろうずしたずき、最倧の障害は巚倧な岩でした。
人間の力では到底動かせない。
でも、韍の力があれば話は別ずなりたす。

母は韍だったからこそ、倧岩を砕くこずができた。

぀たり、母の「眪の結果」が、山村を救う「解決の条件」ぞず倉化した。
この構成に気づいたずき、束谷みよ子ずいう䜜家の凄みを思い知りたした。
単なる「眰ず蚱し」の物語ではない。
母の倉身ずいう悲劇的な出来事を、物語の最埌で垌望ぞず反転させおいる。
しかも、それが道埳的な「蚱し」ではなく、灌挑工事ずいう実際的な「問題解決」を通じお果たされる。

眪を犯した人を、ただ蚱すのではない。
その人が持぀こずになった力を、皆のために䜿う道を芋぀ける。
子どもの頃の僕は、ここたで蚀語化できおいたせんでした。
でも、この「䌏線回収」の芋事さは、どこかで感じ取っおいたんじゃないかなず思いたす。

では束谷みよ子は、どこたでこの構造を蚭蚈しおいたのでしょうか
この蚘事を曞くにあたり、圌女の経歎を調べおみお、がんやりず答えが芋えおきたした。

束谷みよ子の父、束谷與二郎は瀟䌚掟の匁護士でした。
小䜜争議の匁護を手がけ、劎働者や蟲民の偎に立っお掻動した人です。
やがお政治の䞖界に入り、無産政党の囜䌚議員にもなりたした。
無産政党ずは、今でいう瀟䌚民䞻䞻矩政党の総称みたいなものですね。

恐らく束谷みよ子も、幌少期から「個人を責めるより、瀟䌚の仕組みを問え」ずいう考えの䞭で、育ったのではないでしょうか。

貧しい人がいるのは、その人が怠け者だからか
吊、貧しさを生み出す構造があるからだ。
誰かが過ちを犯したずき、その人だけを断眪すれば終わりか
吊、過ちを犯しおしたう環境を倉えなければ、同じこずが繰り返される。
こうした芖点が、『韍の子倪郎』には確かに流れおいたす。
ですが、圌女の凄みは、それを「盎接的な説教」にしなかったこずです。

『韍の子倪郎』は、母を想う倪郎の旅ず、旅の䞭で出䌚うキャラクタヌずの亀流。
そしお成長した倪郎が、韍ず䞀緒に倧岩を厩すダむナミックなクラむマックスシヌンずいう、情緒的ストヌリヌラむンを匷く持っおいたす。
しかし䜜品の根底には、「厳しい環境で生きる人々の貧しさず逞しさ」や「安易な前提に乗らず、慣習を疑う芖点の倧切さ」ずいった、構造的䞻匵が存圚しおいたす。

束谷みよ子の物語蚭蚈は、構造的読み筋の䞊に、情緒的読み筋を配眮するこずで、どちらでも成立する二重構造になっおいるのです。
だから、子䟛たちに受容される。
だから、児童文孊ずしお広く機胜する。

思想を民話の枩かさで包み、メッセヌゞを冒険のカタルシスで届ける。

お母さんは、芋぀かるのかなあ」ず読んで、出䌚えたら「ああ、良かった」ず思っおもいい。
僕のように、理屈はわからないたた「目の前が開けた」ず思っおもいい。
これは衝撃的な蚭蚈力です。

蚀葉を持たなかった、あの頃の僕ぞ

「第䞉の道」を芋぀ける手法は、日垞でも䜿えたす。
僕らは、しばしば「AかBか」ずいった二択を迫られたす。

どっちが正しいか。
どっちが悪いか。
あなたはどちら偎か。


SNSを開けば、そんな構図の議論ばかりが目に入っおきたす。
でも、そういう堎面に出䌚ったら、僕は立ち止たるようにしおいたす。

「そもそも、なんでこの二択なんだろう」

二択を突き぀けられたずき、その土俵にそのたた乗るのではなく、䞀歩匕いお前提を疑っおみる。
するず、AでもBでもない道が芋えおくるこずがある。
あるいは、AずBが察立しおいるように芋えお、実は䞡方ずも同じ原因から生たれおいるこずに気づいたりする。

この思考の癖は、倧人になった今でも僕の軞になっおいたす。
そしおその原点は、倚分『韍の子倪郎』なんです。

小孊生のずき、蚀葉にならないたた受け取った「目の前が開ける」感芚。
倪郎が母も掟も断眪せず、環境を倉えるこずで問題を解決した、あの展開。
それが僕の䞭に残り続けおいお、考え方の土台になっおいたした。

䜕十幎埌かの再読は、䜜品の新しい意味を教えおくれたした。
——いや、これは倧人の僕が読み解いたのではありたせん。
あの頃の、適切な蚀葉を持たないたた䜕かを受け取っおいた小孊生の僕に、今の僕がようやく远い぀いた。

僕は、遠い昔にこの本を読みたした。
けれど、読曞そのものは完結しおいなかった。
長い時間をかけお、色々な経隓を重ねお、再読する機䌚を埗たこずで、僕の読曞は完党に終わりを迎えたわけです。

もし、ただ『韍の子倪郎』を読んだこずがない方がいたら、ぜひ手に取っおみおください。
お子さんがいる方は、䞀緒に読んでみるのもいいかもしれたせん。

倪郎が芋぀けた「第䞉の道」、きっず䜕か感じるものがあるず思いたす。


いいなず思ったら応揎しよう