【昼と夜の番人】第一章|選定の年|眠れない夜(リリア編7)
宴が終わったのは、
月が高く昇った頃だった。
子供たちは眠そうに目を擦ったり、
その場で寝てしまっている子もいる。
大人たちもずいぶん赤い顔をして、
リリアに挨拶をしながら家路についていた。
「おめでとうな」
「頑張るんだぞ」
「神殿へ行っても元気でな」
帰り際、
何人もの村人が声を掛けてくれた。
リリアは一人ひとりに頭を下げた。

「ありがとうございます」
その言葉も、
今日だけで何度言ったか分からない。
やがて最後の村人が帰る。
最後に長机が片付けられ、
賑やかだった家の前も静かになった。
妹は宴の途中で眠ってしまったらしい。
父の背中に背負われたまま、
小さな寝息を立てている。
「おやすみ」
姉が手を振った。
兄も欠伸をしながら家の中へ入っていく。
母は食器を抱えたまま立ち止まり、
小さく息を吐いた。
「続きは明日ね」
そう言って台所へ向かう。
みんな疲れていた。
長い一日だったのだ。
けれど、
リリアだけは眠れそうになかった。
家の中へ入ろうとして、
足を止める。
見上げた先には、
月明かりに照らされた丘があった。
昼間まで寝転んでいた場所。
神殿の使者が現れた場所。
気づけば、
そちらへ足が向いていた。


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