【地元ライダーの推しルート #06】並列鳥居を自転車で巡る——南さつまに潜む、知られざる神社ライド41km
連載「地元ライダーの推しルート」第6回です。
今回のテーマは「発見」です。
走っていて、ふと目にはいった。
神社の鳥居といえば1つ、というイメージがあったので、最初は「なんだこれ?」と思いました。
面白いような、ちょっと不気味なような…
気になって調べてみると、どうやら薩摩半島にはこういった「並列鳥居」の神社が複数あるらしい。しかも鹿児島特有の文化らしく、県外ではほとんど見られないとのこと。
これは自転車で巡るしかない
と思いました。
今回は南さつま市〜南九州市川辺町エリアに点在する並列鳥居の神社4箇所を、サイクルステーション「リンリン」を起点に巡る41kmのルートを紹介します。
■ スタート:サイクルステーション「リンリン」
スタートはサイクルステーション「リンリン」がおすすめです。
吹上浜海浜公園のすぐそばに位置していて、周辺に駐車場が多く、アクセスしやすいのが最大の魅力。
トイレはもちろん、簡単な工具の貸し出しや洗車できる水場まで完備されています。ライド後に軽く洗車できるのは地味にありがたいですよね。
サイクリストが立ち寄ることを前提に作られた施設なので、ここを起点にすると気持ちよくライドをスタートできます。
・住所:鹿児島県南さつま市加世田高橋1952-2 ・営業時間:9:00〜17:00 ・駐車場:周辺に複数あり
■ 並列鳥居の神社4箇所を巡る
①益山八幡神社——突然現れる、2種類の仁王像が迎える神社
リンリンを出発して最初に向かうのが、益山八幡神社です。
住宅地の細い道を進んでいくと、突然2つの鳥居が並んで現れます。予告なしに現れるので、最初はちょっとびっくりするかもしれません。
この神社、もともとは八幡神社と南方神社が合祀された歴史があり、その名残で鳥居が2つ並んでいます。並列鳥居の成り立ちのひとつがここで見えてくる感じですね。
境内に入ると印象的なのが仁王像。
古い年代物の像と、比較的新しい立派な像の2種類が迎えてくれます。街中にある神社らしく境内はきれいに整備されていて、落ち着いて参拝できます。道はやや細いですが、迷うことなくアクセスできるので安心してください。
・アクセス難易度:★☆☆☆☆ ・雰囲気:街中の整備された神社 ・見どころ:2種類の仁王像、合祀による並列鳥居
②南方神社(川辺町小野)——田んぼの中に浮かぶ、小さな聖域
次に向かうのが、川辺町小野の南方神社です。
田んぼ道から入るので入口がわかりにくく、4箇所の中で一番アクセスに迷うかもしれません。
ただ、それを乗り越えて辿り着くと、なるほどと思う光景が広がります。
田園地帯のど真ん中に、こんもりとした木々に囲まれた小さな聖域。まるで田んぼの中に浮かぶ離島のような佇まいです。
並列鳥居をくぐると、慰霊碑や狛犬が迎えてくれます。境内の奥を覗くと、2つの神様が祀られているのがわかり、見応えは十分。
整備されすぎていない田舎らしい雰囲気が、逆にいい味を出しています。自転車だからこそ、こういう場所にも気軽に入っていけるんですよね。
・アクセス難易度:★★★☆☆(入口わかりにくい、要注意) ・雰囲気:田園の中の隠れた聖域 ・見どころ:田んぼに囲まれた離島感、慰霊碑・狛犬、2柱の祭神
③南方神社(金峰町中津野)——空気が変わる、神秘的な森の神社
3箇所目は、金峰町中津野の南方神社です。
集落の中にあり大きな看板もないので、少し迷うかもしれません。でも辿り着いた先には、それだけの価値があります。
参道に足を踏み入れた瞬間、空気が変わります。
両サイドに高い木々がそびえ立ち、その隙間から差し込む光が境内をやわらかく照らしています。緑が深く、静寂に包まれた空間。思わず声のトーンを落としたくなるような、神秘的な雰囲気があります。
無人の神社で、境内はとても質素。ただその質素さが周囲の自然に馴染んでいて、不思議な美しさを感じさせます。今回巡った4箇所の中で、「神社らしい神社」という意味では、ここが一番かもしれません。
・アクセス難易度:★★★☆☆(集落の中、看板なし) ・雰囲気:木漏れ日と静寂、神秘的な森の神社 ・見どころ:両サイドの巨木、光の入り方、自然に馴染んだ質素な境内
④南方神社(金峰町尾下)——草原に立つ鳥居、台地の上の開放感
最後は金峰町尾下の南方神社です。
台地の上に位置していて、草原の中に並列鳥居が立っています。ひとつ前の中津野が鬱蒼とした森に包まれた神秘的な雰囲気だったのに対し、こちらは明るく開けた印象。同じ並列鳥居でも、これだけ表情が違うのが面白いところです。
鳥居をくぐり草原の道を進んでいくと、小さな森に入ります。そこに3つの神殿が静かに並んでいます。周囲には複数の大きなご神木がそびえ立ち、長い年月をそこで過ごしてきた存在感があります。
4箇所目にしてこれだけ違う顔を見せてくれる。並列鳥居を巡るというテーマで走り始めたルートですが、最後まで飽きさせません。
・アクセス難易度:★★☆☆☆ ・雰囲気:台地の草原に立つ鳥居、開放的で明るい ・見どころ:草原の並列鳥居、3つの神殿、複数のご神木
■ ルートの特性
ルートは全長約41km、ゆっくり走って3〜5時間ほどのボリュームです。
川辺方面へ向かう際は、交通量の多い幹線道路を避けるためにやや登坂のある道を選んでいます。
ただこれが田畑の中を抜けるルートで、個人的にはむしろ気持ちいいと感じました。
川辺から中津野へ向かう区間は森の中を走り、旧鉄道のルートをかすめます。廃線跡や昔の駅の痕跡もあり、神社巡りとはまた違った歴史の空気を感じられます。なるべく交通量の少ない道をチョイスしているので、走っていて気持ちがいいです。
金峰町尾下からの帰路は、金峰山の麓から広大な田園地帯をまっすぐ一直線に駆け抜けます。個人的にもお気に入りの区間で、開放感が抜群です。そしてフィナーレは吹上浜海浜公園のサンセットブリッジ。
ライドの締めくくりにふさわしい景色が待っています。
■ 並列鳥居とは何か?
並列鳥居はなぜ2つ並んでいるのか。実はこれ、諸説あります。
有力なのは「合祀説」です。
明治時代の神社合祀政策によって、2つの神社がひとつにまとめられた際、それぞれの鳥居をそのまま残したというもの。益山八幡神社がまさにそのケースで、八幡神社と南方神社が合祀された歴史がそのまま鳥居の形に刻まれています。
「神社をなくすのではなく、合わせる」という発想。
ひとつに統合するのではなく、どちらの神様も並べて祀り続ける。そこに薩摩の人々の信仰の深さを感じます。
並列鳥居といえば大隅半島のものが比較的知られていますが…
実は薩摩半島にこそ多く残っています。
そしてこの文化、ほぼ鹿児島にしか存在しません。
ところが地元の鹿児島の方でも、並列鳥居の存在を知らない人は多いです。かつての「隠れ念仏」のように、鹿児島独特の史跡や文化は、地元の方ほど意外と知らないことがある。近すぎて、その価値に気づきにくいのかもしれません。
十分すぎる観光資源が、ひっそりと田んぼの中や山の中に佇んでいる。自転車でゆっくり走るからこそ、そういう景色と出会えます。
まだ知らない鹿児島が、このルートには詰まっています。
・使用バイク:ロードバイク・クロスバイク・グラベルバイク、どれでもOK
・難易度:距離はやや長めですが、ゆっくり走れば初心者の方でも完走できます
・補給:ルート近くにコンビニあり
■ こんな人に走ってほしい
・定番コースを走り飽きた鹿児島在住ライダー
・歴史や史跡に興味があるライダー
・県外から来て「鹿児島らしい里山を走りたい」という人
「発見する喜び」を感じられるルートです。
【ルート概要】
・スタート/ゴール:サイクルステーション「リンリン」
・距離:41km
・所要時間:3〜4時間(目安)
・難易度:初心者〜中級者(登坂あり)
・主なスポット
①益山八幡神社(並列鳥居・2種類の仁王像)
②南方神社 川辺町小野(田園の隠れた聖域)
③南方神社 金峰町中津野(森の中の神秘的な神社)
④南方神社 金峰町尾下(草原の台地、3つの神殿)
・補給:ルート沿いにコンビニあり
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