マネジメントとリベラルアーツ

最近、「リーダーシップとリベラルアーツ」というテーマで、何度か記事を上げてきました。

ここまでの記事は抽象的・概念的な説明が多かったと思うのですが、これから少し踏み込んで「マネジメントとリベラルアーツ」の関係について、何度かに分けて記事を書いてみたいと思います。

次の図を見てください。

この図は、マネジメントにおけるリーダーの役割別にマネジメントサイエンスとリベラルアーツがそれぞれどのような知的貢献を果たしているのかを説明しているものです。

マネジメントサイエンスはわかりやすいですね。ビジネススクールで習う個別の科目のそれぞれが、左側に並んでいる経営リーダーの活動を支えています。しかし、これだけでは、複雑かつ難易度の高い問題について考察することは難しいだろうと思います。そこで必要になってくるのが右側に並んでいるリベラルアーツの知識ですね。本当は全部説明できればいいのですが、ここでいくつか取り上げて具体例を出してみましょう。

リーダーに求められる歴史の知識と地政学的センス

たとえば先ほどの図の最上位にある「状況の把握・予測」というプロセスに該当する箇所で「地政学・歴史」というリベラルアーツの項目が挙げられています。ここ10年ほどの間で起きたことを踏まえれば、この指摘に違和感を感じる人はいないでしょう。

21世紀に入ってから、世界は「想定外の出来事」に溢れかえっているように見えます。9.11以降の中東の混乱、ロシアによるウクライナ侵攻、米中対立の激化、そして各地で頻発する地域紛争。これらはしばしば「青天の霹靂」として語られます。しかし、歴史や地政学の視点から眺めてみると、それらの多くは決して突発的なものではなく、むしろ「予測可能だった出来事」だったと言えます。

ロシアによるウクライナ侵攻は、その典型例でしょう。2022年の開戦は、多くのメディアで「プーチンの暴走」「突然の侵略」として描かれました。しかし、少し視座を引いて歴史を辿ると、この衝突は一夜にして生まれたものではないことが分かります。

そもそも、火種はウクライナ以前から燻り続けていたと考えるべきです。冷戦終結後、ソ連の消滅とともに、NATOに対抗する軍事同盟であったワルシャワ条約機構は解体されました。その結果、リトアニア、ラトビア、エストニアといった旧ソ連圏・旧ワルシャワ条約機構加盟国は、NATOとロシアの間に位置する「緩衝地帯」としての役割を事実上担うことになります。

ところが、このバルト三国をNATOに加盟させるという決定が下されました。これを強く推し進めたのが、当時の米国国務長官であったマデレーン・オルブライトです。理念的には、民主主義と自由主義陣営を拡大するという「正しい判断」だったと言えるかもしれません。しかし、地政学的に見れば、これはロシアの勢力圏を直接的に侵食する行為であり、長期的な緊張を内包する選択でもありました。

ここから先は

1,538字
この記事のみ ¥ 500
Amazon Payで支払うと最大2%還元のチャンス! 9/30まで

こんにちは皆さん、山口周です。 このサークルでは、わたくし山口周の日々の研究活動から得られた仮説や発…

スタンダード

¥1,000 / 月
1ヶ月無料

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?