【割るな!でも決して力を抜くな】という話
我が家には【食洗器】がありません。
えーと。
水でちゃちゃっと洗い流して、カゴに入れるだけでシャーッと綺麗にしてくれる便利なもの、というのは知っています。
知っては、います。
でも、うちにはないんです。
いや。
正確に言うと……私は手でお皿を洗うのが好きなんです。
疲れている日なんかは、もちろん「めんどくさいなぁ」と思います。でも、それでもやっぱりシンクの前に立って、ひとつひとつのお皿、コップ、カップ、お箸……と手に取っていく時間が、いいんです。
「うんうん、まだまだキミには頑張ってもらいたいからね。期待してるよ」
……そう、私はいま、継続使用の意思確認をする妄想上司。
「ちょっとザラついてきたね、キミ。」
うふ。
その日のごはんに選ばれた器たちと、面談をしている気持ちになります。
でもね、食洗器に放り込んでしまったら、この「お皿面談ごっこ」がもうできないんでしょう。……それはちょっと寂しい。
だから、私は食洗器を買いません。
それにお皿を洗っているときって「無心」なんだけれど、じつは頭の中では、お皿とまったく関係のない話で盛り上がっている時もあります。
「あぁ〜もぅ〜、あのとき、これを言えばよかったぁぁぁ……」
「明日って、古紙回収の日だったかな…」
いろんなことがふわーんと浮かんできて、するするーっと片付いていくような感覚。
お茶碗を洗っているだけなのに、【お皿とアワアワと私】だけの世界に没頭していく感じ。精神統一の修行みたいでいいんです。
もしかしたら、私──
相当、お皿洗いが好きなのかもしれません。

でもですね。
実は去年、ちょっとした問題が発生しました。
なんと、洗っているときにお皿を3枚、割ってしまったんです。「よし、持った」と思った瞬間に、スルンッていって、ガッチャン!!
さらには、信じられない事件も起きました。
コップの取っ手をですね……素手でバキッ!と折ってしまったのです。
いやいやいや。
全力投球で洗っていたわけじゃないんです。ほんと、むしろ「軽く持ったつもり」だったのに……まさかの粉砕。わたし、ハルク化。むぉぉぉぉ~!!
さすがにこれはおかしい、と思って調べてみたら、原因は筋力の衰えとか「固有覚の衰え」らしいのです。
もう一度、言います。
固有覚の、衰え。
なんか、かっこいい言い方ですが──
要するに、「老化」です。
あらぁー。
人間ドック10年選手の私は、いちおう「健康キープ」はしてるつもりですが、恐らく原因はこの「老化」。
加齢とともに、筋肉や関節にある“センサー”が鈍くなって、感覚がちょっとずつズレてくるらしいのです。
・よくぶつかる
・よく落とす
・なんか不器用になった気がする
……ある。
全部、あるある。
悲しい。
私は鈍くなっているんだ、衰えていくんだ…
それ以降ですね、わたしは【お皿洗い強化部】を密かに立ち上げました。
そして、毎晩せっせとハンドグリップをビョンビョンして、握力を鍛えております。そう、我が握力を!
お皿洗いは、今や“加齢センサー”を日々チェックする大切な儀式となっている、というわけなんです。
手を使うことは脳を活性化させる、と「筋肉は裏切らない」の谷本道哉先生も仰っていましたし。握力の低下が認知症リスクと関係するという研究もあるんです。
ね。
つまり、お皿洗いって──
究極のアンチエイジングじゃないですか!
だから、今日もまた、わたしは無心になってお皿を洗います。
握りしめすぎず、手放しすぎず。
割らずに。
でも、ちゃんと向き合って。
鍛えよ、握力。
守れ、茶碗。
……よし。
今日もいいこと、言った!!
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