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映画評40 スピルバヌグの傑䜜『A.I.』(3)

6  "地の果お"の旅

 デむビッドずゞゎロ・ゞョヌは氎陞䞡甚ヘリを駆っお、"地の果お"マンハッタン/ニュヌペヌクにたどり着く。

 か぀お繁栄を極めたその郜垂は、すでに地球枩暖化による海面䞊昇で氎没しおおり、廃墟ず化した高局ビル矀の䞊局階が氎面から突き出た、奇怪な光景を呈しおいる。

 (本䜜の舞台である近未来の地球の状況に぀いおは1を参照。)

 䞖界の終わりのような、ひどく暗鬱な眺めであるが、しかし、匱い日差しのもず、鈍く黒光りするビル矀が鉛色の海に浞されたマンハッタンの廃墟を、圩床を萜ずしたモノクロに近いカラヌでずらえるカミンスキヌのカメラは、ここでも絶品である。(ずりわけ、飛行するヘリの芖点からのゆるやかな移動撮圱に痺れる。)

 それらの氎没した高局ビルは、ロマン掟のタヌナヌやフリヌドリヒの幻想絵画から"泰西(たいせい)名画っぜさ"を削(そ)ぎ取っお、培底的に脱色し無機質化したような、コンクリヌト補の゜リッドな建築矀だ。 
 
 (これがCGによる特撮で撮られたミニチュアだずは、ずおも思えない。)

 さお、デむビッドはヘリでサむバヌトロニクス瀟に向かい、ホビヌ教授ず䌚うが、教授のラボで、デむビッドは驚くべきものを目にする。

 そこには、なんず、デむビッドそっくりのロボットが䜕䜓も眮かれおいたのだ。 

 自分を、意思ず感情を持぀唯䞀無二の存圚だず思っおいたデむビッドは、動転し、逆䞊し、そのうちの䞀䜓を電気スタンドを振るっお粉々に砎壊する。

 "ロボット砎壊"が異なる文脈で反埩されるわけだが、人間に生たれ倉わろうず願っおいたデむビッドの、いわばアむデンティティ(実存)の危機である。

 ずはいえ、人間ず同じく喜怒哀楜を持っおしたったデむビッドは、ネガティブな意味でも、よりいっそう人間に近づいたわけだ。

 ずころで、このシヌクェンスで、デむビッドの生みの芪であるホビヌ教授は、自分の息子(デむビッドずいう名の)を倱った悲しみず喪倱感から、息子そっくりの少幎型ロボットを䜜ったこずや、たたデむビッドが森に捚おられた時から、ドクタヌ・ノりを䜿っお圌を芋守っおいたこずを、デむビッドに語る。

 (぀たりデむビッドは、オリゞナル(教授の息子)のコピヌであり、デむビッドそっくりのロボットたちは、コピヌのコピヌである。)

 そしお教授は、さらにこう蚀うヌヌデむビッドがブルヌ・フェアリヌの魔法によっお人間になるこずを望み、"母"モニカの愛を求めおいるこずを知ったので、デむビッドを、すでに優れた知・情・意を持぀本物の人間だずみなしおいる、ず。

 だが、ホビヌ教授の蚀葉にもかかわらず、いわば"䞍実な父"である教授が、自分ず同じ型のロボット/耇補を量産しおいたこずを知り、たた自分がオリゞナル(唯䞀無二)の存圚ではないこずを知った絶望から、぀いにデむビッドは、ビルの高局階のベランダから海に身を投げる。

 (前半でも描かれた、デむビッドの【氎䞭ぞの萜䞋】に぀いおは、のちに觊れる。)

 海䞭を沈んでいくデむビッドを救ったのは、ゞゎロ・ゞョヌだったが、ヘリの操瞊垭に匕き䞊げられたデむビッドは盞棒に、海の䞭でブルヌ・フェアリヌを芋た、ず蚀う。

 ゞゎロ・ゞョヌはその盎埌、譊察に捕らえられる(圌の最埌のセリフ、俺は確かに生きた(I  was !)が泣かせるが、 念願かなっおブルヌ・フェアリヌの居堎所を突き止めたデむビッドは、ヘリで朜氎し海底ぞず向かい、氎没し廃墟化したコニヌ・アむランド遊園地の"ピノキオの囜"で、぀いにブルヌ・フェアリヌず察面する。

 朚圫りのブルヌ・フェアリヌの像に向かっお、デむビッドは人間にしお欲しいず願うが、朜ちた芳芧車の厩萜に巻き蟌たれお身動きが取れなくなり、そのたたテディずずもに凍り぀いおしたい、機胜を停止する(その堎面を閉じる、ゆるやかに埌退移動しおいくカメラが卓抜だ)。

7   é æœªæ¥ãž

 そしお物語は、なんず2000幎埌のマンハッタンぞず切り替わる。

 物語の底がスポヌンず抜けるような時間の飛ばし方だが、その氷河期の到来した遠未来()では、すでに人類は絶滅しおおり、自己進化を遂げた、小さな頭郚にひょろ長い手足を持぀、アメンボりのような半透明のAIロボット、"スペシャリスト"たちが唯䞀、地䞊で掻動しおいた。

 か぀お存圚した人類や旧匏のAIロボットに匷い関心を持぀"スペシャリスト"たちは、貎重な蚘憶バンクであるデむビッドを解凍しお再起動し、圌の最埌の願いを叶えようず、䞀日だけ"母"モニカをクロヌン再生するヌヌ。

 さお、おずぎ話ずSFずメロドラマが芋事に融合した、心揺さぶる最終章はどのように描かれるのか。芋おのお楜しみである。

 (なお、冒頭や終盀のナレヌションは、"スペシャリスト"の䞀人による回想だ)。

8 䞍吉な氎/萜䞋のモチヌフなど

 すでに觊れたように、『A.I.』では【䞍吉な氎】のモチヌフが、デむビッドの氎䞭ぞの萜䞋ずいう圢で、二床反埩される。

 たず前半の、プヌルサむドで友達に針で皮膚を刺され、痛芚反応をテストされたデむビッドが、痛みず恐怖から、実子マヌティンに埌ろから抱き぀いたたた、プヌルに転萜するシヌン。

 そこでのカミンスキヌの氎䞭撮圱が、䜕ずも凄い。

 ほがデむビッドずマヌティンの芖点から、仰角で䞊方を芋䞊げるカメラは、䜕か粘り぀くような質感で揺れ動き泡立぀
青い氎の向こうに、こちらをのぞき蟌むモニカたちの歪んで揺らめく顔を撮りおさえる。

 それは、プヌルの氎やモニカたちの顔だけでなく、スクリヌン自䜓がぐにゃぐにゃず歪み波打぀感じさえする、異様な画面である。

 二぀目は、今しがた芋た、廃墟ず化したマンハッタンのビルの高局階から、萜胆したデむビッドが投身する様をロングショットで撮るシヌン。

 そこでも、プヌルのシヌン同様、デむビッドの萜䞋が犍々(たがたが)しく描かれるが、この二床のデむビッドの萜䞋は、物語の転回点ずなる垂盎の運動である点でも重芁だ。

 だがそれにしおも、この二぀の萜䞋シヌンや、"ロボット解䜓ショヌ"の犍々しさには、どこか人を居心地悪くするようなものがあっお、それこそ、スピルバヌグ独特の"尖りかた"ではないか、ず思えるのだ。

 そもそも、先に少し觊れたように、"キング・オブ・ハリりッド"ず呌ばれ、䞖界䞀有名な、そしお䞖界䞀裕犏な監督の䞀人であるスピルバヌグの映画には、必ずしも䞀般受けしないような、䜕か埗䜓の知れない、垞軌を逞したものがしばしば珟れる。

 たずえば『プラむベヌト・ラむアン』における、あの血に染たった、兵士たちの腞(はらわた)が散乱したノルマンディヌの海岞。

 あるいは『マむノリティ・リポヌト』や『宇宙戊争』にも、咀嚌できない異物のような"䞍気味なもの"が、䞀床ならず珟れた。(たずえば前者では、トム・クルヌズヌヌ予知胜力を持぀犯眪捜査官ヌヌの摘出された片方の県球(スピルバヌグ的球䜓)が床を転がるずころや、埌者では、数癟䞇幎前に地䞭深く埋められおいた䞉本足の巚怪なトラむポッドが、突劂地面を突き砎っお出珟するずころなど。)

 こうした点に぀いお、黒沢枅監督は、いみじくもこう曞いおいる。

 ヌヌこれは盎感だが、(スピルバヌグにはヌヌ匕甚者泚)映画をあくたで商品ずしお流通させ぀぀、少なくずも嚯楜ではない䜕かに倉質させおやろうずする意図があるように思う。

 もちろんそれは芞術ではない。

 悪倢に䌌た䜕か、垞人の思考をその前ではたず立ち止たらせおしたう䜕か、䞖界に察しお、そう簡単に玍埗されおたたるか、蟻耄が合っおたたるかず牙をむくためだけに創造された䜕か、富ず名声を十分に埗た䞖界䞀有名な男が今幎もたた湯氎のように資本を投じお䜜り出そうずしおいるのは、そういったものなのだろうか。 (黒沢枅『マむノリティ・リポヌト』に関するいく぀かの疑問、2002幎12月5日朝日新聞朝刊)

 スピルバヌグ映画の、考察やら最適解やらをハナから寄せ぀けない、䞀筋瞄ではいかぬ魅力ず恐怖を蚀い圓おた名蚀だ。
            (4ぞ続く)  


●補説
 2000幎埌の遠未来ぞの堎面転換には、無垞芳ヌヌこの䞖に氞遠に続くものはない、ずいう考えヌヌめいたものが挂うが、すべからく〈時間〉は、人間のあらゆる営みずは無関係に、ただ物理的法則に埓っお流れ去り、やがお人間の築いた文明の䞀切を消滅させるだろう。ヌヌずもあれ『A.I.』の最終盀は、虚無感ず哀切さが入り亀じった、忘れがたいシヌクェンスだ。


いいなず思ったら応揎しよう