集中した学習時間こそが大切、それを増やすには4つが必要
35日間土日なく13時間勉強(さらに微妙に不足な8時間睡眠)の夏季合宿が小学6年生向けに行われると聞いて「そりゃもう教育虐待以外の何物でもなかろう」と私なんかは思ってしまった。
武田信子「受験と人権」
https://note.com/nobukot/n/n0b79d136fb4c?sub_rt=share_sb
私が高校3年生の頃、弁護士の方から聞いた話がある。
「弁護士になるには3000時間の集中した学習が必要」
当時、日本で一番難しい試験が司法試験で、それで合格するには3000時間必要なのだ、という。1日6時間として500日!長いなあ、と思ったら、そうではないという。
「集中できた学習時間が3000時間」なのだという。どういうことか。
机の前に6時間座っていたとしても、集中できた時間がなければゼロ。たとえ勉強した時間が短くても1時間みっちり集中できたら1時間。そうした集中した学習時間を、合計で3000時間確保しないと弁護士の試験には受からないという。このため、どうしても3年はかかるという。
1日に1時間も集中できない日があるのはザラ。8時間机に向かっても10分集中できない日も多い。それならいっそ遊びに行って気晴らしをし、10分でも集中して学習できる時間を確保したほうが身につくという。いかに集中した学習時間を増やすかを考えると、遊ぶことも休むことも身体を動かすことも大切になるという。これ、受験生となっていた私には大いに参考になった。
中学2年の秋、住んでいたマンションの大ガラスを割ったときに父から伝えられた「5項目」がある。
①明日から家の掃除、洗濯、食事の下ごしらえは全てお前がやりなさい。
②家事を言い訳にして部活をやめないように。身体を鍛えなさい。
③お前は友達と遊ばない。友達に誘われたら積極的に遊びに行くように。
④休むこと。ただしダラダラと漫画読んだりテレビ見たりの「ながら」ではなく、積極的に休むこと。
⑤最後に、勉強するとお母さん、何より喜ぶよ。
中学2年の終わりから、その5項目を実践するようになった。それだけに、勉強ばかりだと集中できないことがよくわかった。
家事をして家族としての役割をきちんと果たしていないと貢献感がなく、自分の立ち位置が不安定になり、集中できない原因になる。
身体を動かしていなければ心も鬱屈し、集中できなくなる。
友達と遊んで発散しなければ気持ちがふさいで集中できなくなる。
休まなければ集中できなくなる。
上の4つを実践してこそ、集中することかをできるのだと思い知った。
その弁護士の方も言っていたけど、1日に集中して取り組めるのは最大3時間が精一杯だという。これは私の経験でもそう思う。3時間集中して取り組めたら「今日はずいぶん集中できたなあ」と思える。その以外の時間は、どれだけ長く机の前にいても大して頭に入らない。それなら、翌日も集中した時間を増やせるよう、家事をするなり身体を動かすなり遊ぶなり休むなりをしたほうがいい。家事、運動、遊び、休みの4つをバランスよく取り入れることで初めて意味のある集中した学習ができる。これは私の個人的体験だけど、弁護士の方もそう言っていたし、当てはまる人はかなり多いんじゃないかと思う。
その視点で冒頭の35日間・土日なし・13時間学習を眺めると。無駄なだけでなく害悪大きすぎるように思う。楽しい6年生の夏休みは一回しかないのに合宿で塗りつぶされ、しかも毎日13時間もの学習をやらされて、ろくに遊ぶ時間も与えられないって?刑務所?拷問?どんな苦役?いや、刑務所だってそんな過酷な労働させることは先進国ではないと思う。
本当に子どもの指導をしている人なら、1日勉強漬けはかえって学習効率が悪くなることくらい知っていそうなものなのに。誰だこんなに合宿考えたの。少なくともその人物は教育者でも指導者でもないと思う。ただの商売人。
確かに商売として考えたら、「勉強は長時間やればやるほどいい」という思い違いをしてる親は一定数いるから、それにつけこむことは可能だろう。「不安ビジネス」という意味では、壺を売るのと同じ。「あなたはこのままでは不運になる、この壺を買えば道は開ける」と言って高額な壺を買わせる、あのビジネスと同じ。
私は、教育学者がこうした事例に異をあまり唱えていないのが不思議に思う。これだけ長時間の学習をやっても効果はない、むしろ子どもの発達に悪影響を及ぼしかねない、と訴えることが大切だと思う。武田信子さんは、特定の塾のサービスに異を唱えることにためらいを覚えつつも、指摘した。他の教育学者もしっかり批判したほうがいいと思う。これ、野放しにしてよい話ではない。
昨日の記事に書いたように、親や大人たちには、子どもに「教育提供義務」があるばかりでなく、「遊び確保義務」があると思う。子どもは遊びの中で多くを学ぶ。遊びを排除すれば子どもの学びは発生しづらくなる。
「遊ばない子はバカになる」という言葉があるけれど、これ、バカにならない言葉。忘れないようにしたい。
