他人の尻拭いを、やめた。― 完璧主義の58歳が、メンタル崩壊寸前で引いた「境界線」
1. 真面目な人ほど、壊れていく
建設業の安全管理者として働いている58歳です。
今日は、いつもの「現場から学んだ教訓」とは少し違う話をします。「職場で壊れかけた話」です。
先に言っておくと、これは「会社の悪口」ではありません。会社の上層部からは、私の仕事を評価してもらっています。そこは感謝している。
でも、同じ部署の中で、私だけが動いているという状況が、もう何年も続いています。
安全パトロールも、災害防止協議会の資料作成も、法改正対応の調査も、現場への指導も。本来なら部署全体で分担すべき仕事が、気づいたら全部自分の上に乗っている。
周りは動かない。でも、放置すれば現場の作業員が危険にさらされる。だから自分がやる。その結果、イライラが溜まり、体が重くなり、心が消耗していく。
真面目な人ほど、この罠にはまります。「自分がやらなければ誰がやるのか」という責任感が、自分を徐々に壊していく。
2. 「許せない」が、自分を追い詰めていた
正直に言うと、私には「完璧主義」の傾向があります。
安全書類も、現場指導も、議事録も、中途半端なものは出したくない。それがプロだと思っている。
そして、その基準で周りを見てしまう。
「なぜこれくらいのことができないのか」
「なぜ自分から動こうとしないのか」
「なぜ言われなくても気づけないのか」
この「許せない」が、実は自分を一番追い詰めていました。
他人の仕事の質が許せないから、介入する。介入するから、仕事量が3倍になる。仕事量が3倍になるから、イライラする。イライラするから、人間関係が悪化する。
全部、「許せない」から始まっていたんです。
完璧主義は、自分に向けているうちは「プロ意識」。でも、他人に向けた瞬間に「命取り」に変わる。自分の基準で他人を採点し始めると、全員が「不合格」に見えて、永遠にイライラが止まらなくなる。
3. 「見捨てる」という正解
ある日、もう限界だと感じました。
体が重い。トレーニングにも力が入らない。仕事中のイライラが止まらない。睡眠の質も落ちている。
このままでは、安全管理の仕事だけでなく、ボディメイクの大会も、引退後の計画も、全部崩れる。
そのとき、一つの決断をしました。
自分の担当の仕事だけを完璧にやる。他人の仕事には、一切手を出さない。
「見捨てる」という表現が正しいかは分かりません。でも、「他人の仕事の質まで背負わない」という「境界線」を引いたということです。
給料分の義務は、私は十二分に果たしている。それ以上のことを、自分の心と体を壊してまでやる必要はない。
そう決めた瞬間、肩から、何トンもの重さが降りた気がしました。
4. 冷たい人間になるのではない。自分を守るのだ
「それって、冷たい人間じゃないか」
そう思われるかもしれません。私自身も、最初はそう感じました。
でも、考えてみてください。
他人の尻拭いをしてイライラしている自分と、自分の仕事に集中して穏やかに過ごしている自分。周りにとって、どちらが一緒に働きたい人間でしょうか。
建設現場では、「自分の身は自分で守る」が大原則です。ヘルメットを被るのも、安全帯をかけるのも、自分。誰かに守ってもらうことを前提にしたら、命が危うい。仕事のメンタルも同じです。
「境界線を引く」ことは、冷たい人間になることではありません。自分を守るための、「安全装備」を身につけることです。
5. 「境界線」を引けた日から、楽になった
「境界線」を引いてから、変わったことがあります。
まず、自分の担当業務の質が上がりました。他人の尻拭いに使っていたエネルギーを、自分の仕事に集中できるようになったからです。
次に、イライラが減りました。「なぜあいつはやらないのか」という怒りが消えるわけではない。でも、「自分がやるべきことはやった。あとは向こうの問題だ」と思えるようになる。この差は大きい。
そして、トレーニングの質も戻りました。体も心も整った状態で追い込める。これは、「境界線」を引いたからこそ可能になったことです。
この記事を読んでいるあなたへ。
もし今、「自分だけが動いている」と感じているなら。それは、あなたが真面目な証拠です。
でも、その真面目さを、自分を壊す方向に使わないでほしい。
会社より、上司より、まずは自分を守れ。そのための「境界線」を引け。
他人の尻拭いをやめたことで、私は自分の人生を取り戻しました。それは「逃げ」ではなく、「戦略的撤退」です。自分を守れる人間だけが、長く戦える。
まとめ〜この記事から得られる3つの教訓
教訓1:「許せない」は、自分を壊す毒になる
完璧主義を他人に向けた瞬間、それは「プロ意識」から「命取り」に変わる。他人は変えられない。変えられるのは自分の「基準」だけ。
教訓2:「境界線」は「冷たさ」ではなく「安全装備」
他人の仕事に手を出さないのは、冷たいのではなく、自分を守るための「ヘルメット」。自分の身は自分で守る。これは現場の大原則。
教訓3:「戦略的撤退」ができる人が、長く戦える
「逃げ」と「戦略的撤退」はまったく違う。自分の担当を完璧にこなしつつ、他人の領域には踏み込まない。それが「長く戦える」唯一の方法。
