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替えのきかないものを、守っているか。


1. 「ダメ出しゼロ」の現場に、心を動かされた理由

私の仕事は、建設現場の安全管理です。

簡単に言うと、現場を回って「危ないところはないか」をチェックし、問題があれば是正報告書(いわゆる「ダメ出しのレポート」)を出す。つまり、指摘が多いほど現場の状態が悪いということです。

今日、ある現場のパトロールを実施しました。

結論から言うと、是正報告書は「なし」。ダメ出しゼロです。

開口部の養生、昇降設備の設置、残土の搬出ルートの追跡調査まで、現場担当者が自ら動いて管理していた。非常に管理レベルの高い現場です。

ただ、私が今日一番心を動かされたのは、そういった高度な管理手法ではありませんでした。作業員たちが当たり前のようにやっていた、「基本動作」のほうでした。

2. 目を守れなかったら、今この文章を書いていない

基礎の捨てコンクリートの打設状況を確認したときのことです。

作業員全員が、側板付きの保護メガネをしっかり着用していました。

セメント系の材料は、万が一飛沫が目に入ると重篤な損傷を引き起こし、最悪の場合は失明につながります。「たかがメガネ」じゃない。それを全員が例外なく習慣として定着させているのは、本当に素晴らしいことです。

実は私自身、先月に左目の手術を経験しました。

「目が見えなくなるかもしれない」という恐怖、そして視力の絶対的な価値を、身をもって痛感したばかりです。だからこそ、面倒くさがらずにしっかり保護メガネをかけ、自分の体を守りながら働く彼らの姿を見て、心から安堵しました。

目は替えがきかない。

これは建設現場に限った話ではありません。どんな仕事でも生き方でも、まずは「自分を守る装備」を整えることが最優先です。仕事の効率も、成果も、評価も、その後でいい。

3. 重いものを持ち上げる前に、足元に鉄板を敷け

もう一つ、現場で見た光景から。

建設現場では、移動式クレーンで重い鉄筋や型枠材を吊り上げます。そのとき、アウトリガー(クレーンの足)を最大限に張り出すだけでは不十分です。軟弱な地盤に直接張り出せば、重みに耐えきれず転倒します。

だから、必ず強固な敷板(盤木や鉄板)を足元に敷き、安定を確保してから吱り上げる。これが原則です。

これを見たとき、私たちの人生と同じだなと思いました。

仕事で大きな成果を出そうとするとき。無理な減量やトレーニングで重いものを持ち上げようとするとき。

私たちの「足元」――日々の睡眠、メンタル、基本的な健康――が軟弱なままだと、簡単にバランスを崩して倒れてしまう。

大きな挑戦の前には、まず自分の足元に「健康という鉄板」を確実に敷くこと。それができていないなら、その挑戦に「作業許可」を出してはいけない。

私自身、ボディメイクの大会に向けてトレーニングを続けていますが、この「足元の鉄板」という考え方は、自分への戒めでもあります。体を追い込むことは得意です。でも、足元(睡眠やメンタル)が崩れたまま追い込んだら、それは「努力」ではなく「暴走」です。

4. 「弱さを認める」が、これからの安全管理になる

今年の4月1日から、高年齢労働者の安全衛生確保に関する新しい制度が始まります。建設業では高齢者の労働災害が増加しており、「エイジフレンドリー(高齢者に優しい)」な現場作りが求められています。

現在58歳の私にとって、これはまったく他人事ではありません。

人は誰でも老います。若い頃のように無理はきかなくなる。

大切なのは、体調不良や衰えを「隠して気合いで乗り切る」ことではありません。「今日は少し休んでおけ」「そこは俺がやるよ」と、お互いの体調に目を配り、無理をさせない環境を作ることです。

弱さを認めてカバーし合うことこそが、これからの時代に求められる本当の「安全管理」だと思います。

これは建設現場に限らず、どんな職場でも、家庭でも、友人関係でも同じです。「大丈夫です」と言って倒れるより、「ちょっときつい」と言える環境のほうが、結果的に人は長く戦えます。

5. ルールは「束縛」じゃない。あなたを守る「盾」だ。

今回のパトロールを通じて、改めて確信したことがあります。

保護メガネの着用も、クレーンの敷板も、年齢に合わせた配置も。すべては「人を縛る面倒なルール」ではなく、「その人が明日も笑顔で家に帰るための最強の盾」だということです。

現場所長をはじめ、今日素晴らしい管理を見せてくれた現場の皆さんに敬意を表したいと思います。

この記事を読んでくれているあなたへ。

自分の職場や生活の中で、「面倒くさいな」と思っているルールや自己管理があるかもしれません。

でもそれは、あなたの替えのきかない身体と人生を守るための「保護メガネ」かもしれないのです。

どうか、自分を守るための一手間を惜しまないでほしい。

まとめ〜この記事から得られる3つの教訓

教訓1:替えのきかないものは、先に守れ
目、体、心。壊れてからでは遅い。保護メガネは飛沫が飛んでくる前にかけるものだ。「事前の一手間」が、あなたの明日を守る。

教訓2:足元が軟弱なまま挑戦するな
クレーンが敷板なしで吱り上げたら転倒するように、睡眠もメンタルも崩れたまま追い込んだら、それは努力ではなく暴走。まず足元に「健康という鉄板」を敷け。

教訓3:「ちょっときつい」と言える人が、一番強い
弱さを隠して折れるより、「今日は無理」と言えるほうが、結果的に長く戦える。強さとは、折れないことではなく、立て直し続けること。

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