金沢一人旅 〜10年越しの心残り回収〜
だいぶ時間を置いてしまったが、2025年10月、金沢に行った。
同伴者なし、現地で誰かと落ち合う予定なしの、完全な「一人旅」だ。
東京や大阪には年数回訪れているが、いずれも何らかの予定や現地で友人・フォロワーと会う約束をした上でのものなので、いわゆる「一人旅」は、前回がいつだったか思い出せないくらい久しぶりだった。
私と金沢
心残りの街
金沢は一度、訪れたことがある。
前職の社員旅行で行ったのだ。
社長が旅好きで、社員旅行は自らコース設定をしていた。
そして、旅好きゆえ、毎回ちょっとニッチでマニアックな観光スポットが、旅程に数多く組み込まれていた。
金沢のときも同様で、個人旅行ではまず訪れないであろう近隣のスポットに立ち寄る旅程だった。
それにより、金沢市内に入ったのは、17時ちょうどだった。
そう、21世紀美術館も兼六園もクローズしてしまい、入ることができなかったのだ。
一緒に回った同僚の女子と、閉館後の21世紀美術館で、立ち入り可能なオープンエリアを苦笑しながらぐるぐる歩き、薄暗いひがし茶屋街を肩を寄せ合いながら歩いて、せめてもの情緒を味わい、金沢おでんの有名店「赤玉本店」で夕食を食べた。
これはこれで一つ「思い出」であるし、楽しくはあったのだが、私の中には「金沢を満喫できなかった」という”やり残し感”がずっとくすぶることとなった。
しばらくはムーンプランナーの「行きたいところリスト」に「金沢」を入れていたのだが、なかなかきっかけも無く、無為に繰越を繰り返すばかりだった。
そのうち、北陸新幹線延伸の影響で名古屋〜金沢直通の特急「しらさぎ」も無くなり、私の中で金沢は「気軽に行きづらい場所」になってしまった。
ある頃から、「行きたいところリスト」にも書かないようになった。
「せっかく金沢に行ったのに21世紀美術館にも兼六園にも行けなかった話」は、笑い話として、私の「鉄板ネタ」になった。
それでも、”やり残し感”が消えたわけではなかった。
再燃
2025年2月に、21世紀美術館が2027年から長期休館に入るとのニュースが出た。
くすぶっていた”やり残し感”が、めらりと燃えた。
そのタイミングでたまたま、名建築の美術館について会話をすることがあった。
当然21世紀美術館が筆頭に上がり、私は「鉄板ネタ」を披露したが、話しながら、
「じゃあ、行けば良いじゃないか」
と気がついた。
自問自答ファッションを経て、主体的に決定して行動を起こしたり、足を伸ばしたり、といったアクションが、抵抗なくできるようになっていた。
準備
行き方と宿を調べる。
2025年は何たって”やんちゃ”な出費が重なっていたので、できるだけ金額を抑えたい。
名古屋〜金沢間で、直通の高速バスがあることがわかり、それを使うことにした。
宿泊は「エイトポイントイン金沢」の、一泊数千円のキャビンルームを選んだ。
デザインが可愛くて設備も良かったのだが、この1月で営業終了してしまうそうだ。安かったもんな…。
何せ前回行ったのが10年前、しかも市内を全然堪能できていないので、『ことりっぷ 金沢』を買ってルートを考えることにした。
各スポット・エリアの距離を確認し、
1日目:21世紀美術館でランチ→作品鑑賞→石川県立美術館→夕食に金沢おでん
2日目:近江町市場で朝食→兼六園→カレーでランチ
というコースに決めた。
服装
10月頭の金沢ってどんな気候なんだろう…とそわそわしていたのだが、日が近づいて天気予報を確認すると、名古屋とさほど変わらないことがわかった。
名古屋で過ごしているのと同じ、Lumierのラッフルデザインオールインワンを着て、念のため「+0.5枚」の服として、PoIのフェイクレザーフリンジベストを羽織っていくことにした。
靴もいつもと同じ、かねまつのショートブーツにする。
服は宿で洗濯し、着替えは持っていかないことにした。
バッグの布陣はこんな感じ。
kawa-kawaのリュックに寝間着と洗面用品、ファッションフリークショーのトートは外歩きのサブバッグ、持ち歩き用メインバッグのスワンバッグちゃん。

福井・南条SA
当日。
名古屋駅のバス停でバスを待つ。
並び始めたときは私ともう一人しかいなかったが、時間になる頃にはそれなりの待ち行列ができていた。
ほとんどの人が軽装で、「気軽な行き先」なのだな、と思った。
21世紀美術館の『スイミング・プール』地下部の入場は当日予約なので、バスの中で予約を取る。
福井の南条サービスエリアで、休憩のため停車した。
ジュラシック・パークもかくや、と思うほどの「恐竜推し」なのが面白く、画像をたくさん撮った。






金沢駅
予定通りに金沢駅着。
天気はあいにくのしとしと降りだったが、それが”情緒”になっていて、却って街の趣を際立たせていた。




金沢21世紀美術館
宿に荷物を預け、徒歩で金沢21世紀美術館へ。

ランチ
ランチは併設の「フュージョン21」をネット予約しておいた。
窓側の見晴らしの良い席をご用意いただいた。
前菜プレートとメインのパスタの他、ビュッフェでサラダ・スープ・パンが食べ放題で、調子に乗って食べすぎた。



展示
展示エリアに入る。
外国人観光客も多く、賑わっていた。
そして、恐らくこれは10年前と異なる点だと思うのだが、「映え写真」「映え動画」を撮る人たちが本当〜〜〜に多かった。
なんだか皆、作品に向かい合うよりも、フレームの中の自分たちを気にしている感じ(もちろん、皆が皆、ではないのだろうが)。
展示室内も、どこもざわざわとしていて落ち着かなかった。
それだけ建築物として美しく、人々がその一部になりやすいデザインになっていることの証左…とはいえ、「美術館とは…」としばし考えてしまった。










唯一「落ち着いて」空間を感じることができたのが、”タレルの部屋”こと、ジェームズ・タレルの『ブルー・プラネット・スカイ』。
建物の天井に、大きな四角い穴が開いている。
降り注ぐ雨の音で、気持ちが静かになった。
ぐっすり居眠りをしている人もいた。


石川県立美術館
かなり坂を登るが、徒歩圏内に石川県立美術館がある。
こちらも賑わっていた。
外国人観光客はほとんどおらず、恐らく地元や県内の方たちだろう。
企画展
企画展は「北斎・広重 大浮世絵展」。
終了間近だから混んでいたのもあるかもしれない。


これが非っ常〜〜〜〜〜に面白かった!
北斎は富嶽三十六景、広重は東海道五十三次が有名だが、実はいずれも当時人気のテーマで、北斎も東海道五十三次を描いている。
その他にも「忠臣蔵」、役者絵、風俗画など、二人が共通して描いているジャンルの作品を並べることで、それぞれの強みや個性がわかりやすいキュレーションがされていた。
広重は、若い頃からずっと「その絵のメインを決めてそこに視線を誘導する」描き方がものすご〜〜〜く上手い。
対して北斎は、かなり試行錯誤をしている。
観察眼が鋭すぎるのだろう、非常に描き込みが細かいのだが、若い頃はそれを絵全体に対して行ってしまっているので、「何をメインで見せたいのか」がわからず、全体としてのっぺりした印象になってしまっていた。
それが、「富士山」という絶対的な「主役」を手に入れることで、強烈な印象をもたらす画風に化けたのが「富嶽三十六景」だったのだなと感じた。
常設展
大河ドラマ『光る君へ』を観ていたので、絶対観たかったのがこのコレクション展。
「実資が記した『小右記』と源氏物語の世界」!
現存する中で最も古い写本を所蔵しているそう。

この他の所蔵品も、細工がすご〜く細かったりとか、絵付けがすご〜く細かったりとか、何から何まで繊細かつゴージャスで、「これが加賀藩のマネー&センス…」と唸りっぱなしだった。
カフェ
石川県立美術館は、展示室内にもロビーにもベンチが沢山あって、座って休みながら鑑賞できるようになっている。
21世紀美術館から歩きづめなので、座ってみるのだが、1〜2分もすると、そわそわして落ち着かない。
ゆっくり休むのが苦手なのだと気づく。
強制的に自分を休ませるため、併設のカフェ「ル ミュゼ ドゥ アッシュ KANAZAWA」に入った。
石川県産のいちじくを使っているというタルトと、同じく石川県産の牛乳を頼む。
どちらも大変美味しうございました。
ちゃんと座って休むこともでき、復活。

1日目夕食
香林坊ぶらぶら
タルトを食べてお腹も落ち着き、まだ空も明るかったので、夕食まで香林坊を冷やかすことにした。
街なかでも兼六園の「ことじ灯籠」のモチーフが目に入る。
観光客からすると、地元の方にとって愛着や誇りのあるモチーフなのだなぁと感じるが、生活している皆さんたちにとっては、そうでもないのかな。

「香林坊大和」と「香林坊アトリオ」という百貨店・ショッピングモールが繋がった商業施設を上から下まで歩く。
道行く人々が老若男女問わず洗練されたお洒落な服装をしていて、皆雑誌から出てきたようだった。
いかにも奥様の付き合いで来ました、という感じで暇そうにしている中年男性ですら、だ。
「文化の街」としての矜持が日常に浸透しているのかもしれない。
金沢おでん
10年ぶりの赤玉本店で食べようと思っていたら、満席で当日受付終了になっていた。
予約をしておけば良かったが、一度食べているので、まぁ良いかと諦める。

徒歩圏内を検索し、宿の近くにある「燦々」を訪れた。
幸い空席があり、入ることができた。
店内は女子会や家族連れが多く、女一人客でも手厚く接客していただき、居心地良く過ごすことができた。

海鮮盛り合わせとおでん盛り合わせを頼む。


どれも沁みる美味しさだった。ありがとうございました。
2日目朝食
着替えばたばた
夜に服を洗濯してキャビン内に干していたのだが、通常のホテルほど乾燥していなかったのか、気温が低かったのか、朝になっても乾ききっていなかった。
共用スペースのコインランドリーで乾燥機を使おうとしたが、寝ぼけていて、一度目は現金を忘れ、二度目は服を忘れ、三度目にやっと服を乾燥機に入れることができた。
洗濯機のテプラに「ここに袋をはさめると〜」とあったのだが、方言だろうか。

近江町市場
乾燥機の使用で、出発がやや予定より遅れたが、バスで近江町市場に向かう。
8時頃「いきいき亭」に着く。
さほど待たずに座ることができた。

「ミニ金沢丼」のどぐろのあら汁付き。
ご飯の上にかんぴょうとガリを刻んだ薬味を載せてもらうオプションも付ける。
べらぼうに美味しかった。北陸強すぎる。

兼六園
朝食を済ませ、再びバスで街の南側に戻り、兼六園へ。
天気は相変わらずの雨。

GPS音声ガイドサービス「おともたび」で、解説を聞きながら見どころを巡る。
どこもかしこも、どう撮ってもフォトジェニックだった。
再び「これが加賀藩のマネー&センス…」と唸る。






園内の喫茶室「兼六亭」に入る。
スタッフの女性が、私が持っていたファッション・フリーク・ショーのトートバッグに気づき
「私もジャン・ポール・ゴルチエ大好き!」
と声を掛けてくれ、しばしファッショントークで盛り上がった。
「バッグは自己紹介」ってこれのことか〜、となりながら「兼六コーラ」をいただく。

金沢城公園
時間に余裕があったので、金沢城公園も巡ることにする。
兼六園よりも観光客が少ないが、こちらも加賀藩のマネー&センスを存分に感じることができる。


敷地内のあちこちに、能登半島地震による立入規制の案内が掲出されていた。




2日目ランチ
金沢カレーにするつもりだったが、腹具合と相談して、ハントンライスにすることにした。
白身魚のフライが載っている。
金沢21世紀美術館でのランチから始まり、かなり常に満腹状態の旅だった。

おみやげ
金沢駅で帰りのバスの時間を待つ間、駅構内の「金沢百番街」で夫や友人への土産物を買う。
めちゃくちゃ買った。
フロアいっぱいの美味そうな北陸名産品を前に、リミッターが外れてしまった。
中でも、北陸限定ブレンディスティック「加賀棒ほうじ茶オレ」はめっちゃ美味しくて、いろんな人にお裾分けした☕

チーズ入り焼きかまぼことペットボトルの加賀棒茶はバス内での自分用のおやつにした。

帰路は日曜の夕方だったため、高速バスが渋滞に巻き込まれ、名古屋駅に着いたのは予定時刻を2時間ほど過ぎてからだった。
行きは高速バス、帰りは鉄道というのが、一番賢い組み合わせかもしれない。
心残り☆解消☆
10年越しの心残り回収のために訪れた金沢だったが、いや〜、楽しかった。
何食べても美味しいしどこに行っても情緒があるし、街の隅々、暮らす人たちの生活に「文化」が息づいている印象があった。
中心となる駅があり、一駅置いて商業地区があり、さらにそこから少し行くとお城がある…という街の作りや市街地の規模は、名古屋と金沢とで似ているのだが、街として目指す方向性の差というのだろうか、色合いはかなり違っていて、似ているところとそうでないところが両方あって面白かった。
服装も丁度良かった。歩いていると、少し汗ばむことがあったくらいだ。
かなりメジャーでライトな「観光客コース」ではあったが、そのメジャーでライトな「観光客コース」こそが、前回味わえずにくすぶっていたものだったので、目的達成、大願成就だ。
それから、自分に「ゆっくり休むのが苦手」という「課題」があるのを発見した旅でもあった(…)。
これを受けて、2026年は動かない/安定した/落ち着いた状態に慣れる年としていきたい。
