新人が3日で辞めた理由は、仕事量じゃなかった|3つの医院を渡り歩いた衛生士が見た、辞めていく医院の共通点
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新人の衛生士さんが、3日で来なくなったことがあります。
面接の印象はよかった。経験もあった。院長も「いい人が来てくれた」と喜んでいました。
4日目の朝、彼女はもう来ませんでした。
私は歯科衛生士12年目で、いまの医院では採用と新人教育も任されています。求人票を書いて、面接に同席して、入った人が辞めていくところまで、ぜんぶ中から見てきました。
このnoteは、そのとき私たちが何を間違えたのかを、診療室の中から書いたものです。
先に言っておくと、院長を責める話ではありません。むしろ逆です。腕のいい先生ほど、同じところでつまずいているのを、3つの医院で見てきたので。
※出てくる医院や人物は、特定できないように時期や細部を変えています。話の中身は実際にあったことだけです。

辞めた理由は、仕事量ではありませんでした
3日で来なくなった彼女の退職理由を、私たちはずっと「業務がきつかったのだろう」と思っていました。
違いました。
あとから、彼女と同じ学校出身の子づてに聞いた理由は、こうです。
「初日、誰もランチに誘ってくれなかったから」。
正直、最初に聞いたときは「それだけで?」と思いました。私もその日、忙しくて声をかけられなかった側の人間です。
彼女の側から、初日を再生してみる
でも、彼女の側から初日を再生してみると、景色が変わります。
知らない場所で、朝から緊張しっぱなしで、器具の場所も人の名前もわからない。やっと迎えた昼休み、みんなが当たり前のようにそれぞれの席へ散っていって、自分だけがどこに座っていいかわからない。
あの45分の孤独は、たぶん、私たちが思っているより長い。
彼女は仕事を辞めたんじゃなくて、あの休憩室に戻るのが無理だったんだと、いまは思っています。
3つの医院で働いて、わかったことがあります
私は個人医院、ユニット12台の大型医院、いまの中規模医院と、3つの職場を経験してきました。
腕がいちばん良かった医院が、閉院した
1つめの医院は、院長の腕が本当によかった。自分の歯を任せたいくらいでした。それでもスタッフは次々辞めて、私も辞めた側です。その医院は、いまはもうありません。
2つめの医院は、予約が3ヶ月待ちでした。スタッフは25人いて、産休から戻ってくる人が何人もいました。
技術の差ではなかったと、断言できます。1つめの院長のほうが、腕だけなら上だったかもしれない。
差があったのは、人が辞めるかどうかが「偶然」なのか「仕組み」なのか、そこだけでした。
辞めない医院は、優しい人がたまたま集まっていたわけではないんです。新人の初日に誰が隣に座るか、決まっていました。そういう細かい仕組みが、いくつもいくつも積んでありました。
辞める人は、辞める前にサインを出しています
これ、院内では言えないんですけど。
辞める人って、辞める1ヶ月くらい前から、ロッカーが片付き始めます。
私物が少しずつ減って、私服の趣味がちょっと変わって(面接に行っているので)、休憩室で口数が減る。本人は隠しているつもりでも、同じ立場の人間からは、わりと見えています。
院長先生にだけ、見えていません。
「突然辞める」は、突然ではない
診察室の院長の位置からは、休憩室もロッカーも見えないので、当然だと思います。責めているのではなくて、構造的に見えない場所で、退職は始まっているという話です。
だから「突然辞めると言い出した」は、実は突然ではないことがほとんどです。紙に書いて持ってくる1ヶ月以上前から、始まっています。
求人広告にお金をかける前に、いま働いている人が出しているサインに気づけるかどうか。採用のスタートは、募集ではなくてそこからだと、私は思っています。
応募する側は、院長が思っている場所を見ていません
もうひとつだけ、採用担当として驚いたことを書いておきます。
去年、面接に来た衛生士さんに志望動機を聞いたら、「Googleの口コミへの返信が丁寧だったので」と言われました。
求人票の給与でも、休日数でも、医院のきれいさでもなくて、口コミの返信。
彼女は面接の前に、うちの口コミを全部読んできていました。患者さんへの返信の書き方で、「この医院はたぶん、スタッフにもこういう接し方をする」と判断したそうです。
応募する側は、募集ページの外側で、医院を選び終えています。
働く側だった頃の私も、たしかに同じことをしていました。求人票は最後の確認で、決め手はいつも別の場所にありました。
このnoteに書いたこと
ここから先の有料部分には、3つの医院で見てきた「辞めていく医院」と「辞めない医院」の違いを、現場の目線で全部書きました。
・新人が3日で辞めた事件の、うちの医院の反省会でわかったこと
・辞める人が出す7つのサイン(ロッカー以外にもあります)
・辞めない医院が初日〜30日にやっていた仕組み(2つめの医院で見たもの)
・面接で「長く働いてくれる人」を見るポイント。応募者は面接前に医院の何を見てくるか
・求人票の書き方で応募が変わった実例(私がいま書いている側なので)
・スタッフに直接聞けない本音を、院長が知る方法
読んでほしいのは、募集をかけても応募が来ない、やっと採れても続かない、でも何が悪いのかスタッフに聞いても「大丈夫です」しか返ってこない、という院長先生です。
最後まで迷ったのは、この内容を書いていいのかどうか、でした。私はいまも現場にいる人間なので。それでも書くことにしたのは、1つめの医院が閉院したと聞いた日に、中にいた人間として何か言えたんじゃないかという後悔が、まだ残っているからです。
魔法のような話は書いていません。全部、地味です。でも、うちの休憩室で実際に起きたことと、そこから直したことだけを書きました。
求人媒体に払う金額の何分の一かで、辞めない側の景色を先に見ておいてもらえたらと思います。
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