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『妙な話』の妙な解釈

芥川龍之介の『妙な話』をご存知でしょうか。
『羅生門』や『蜘蛛の糸』などの作品はご存知の方が大半かと思いますが、『妙な話』までとなると知らない方も多いと思います。
私自身あまり小説自体を読まないので、少々聞いたことがあるというレベルでした。
今回も朗読に際して私なりに調べ、思ったことをまとめておきます。
見当違いな解釈もあるかもしれませんが、同じように初めて作品に触れる人には、小さな足がかりになるかもしれません。

青空文庫

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今回の趣旨

会話文を軸に進んでいくのが、この作品の大きな特徴です。
又聞きの怪談として語られた出来事が、最後には密会の約束に結びつく。
非常にミステリーらしい描き方、だそうです。
しかし種明かしで全てが開示された訳ではありませんでした。
残された一番の謎は「赤帽とは何だったのか」です。
今回は正解探しというより、解釈遊びとして考えてみます。

赤帽とは

ここでいう赤帽とは、現代の軽運送業者のことではなく、駅で旅客の手荷物を運ぶ人のことです。実際に赤い帽子をかぶっていたため、そう呼ばれていました。
千枝子は、中央停車場つまり現在の東京駅にあたる場所で、赤帽の姿をした不可解な存在に苛まれているわけです。密会に出かけようとするたびに。なぜでしょうか。

解釈の自由さ

ちょっと話がそれますが、私はお笑い芸人であり芥川賞作家の又吉直樹さんのチャンネルで行われている自由な解釈の短編小説読解が好きです。一度見てみてください。

この行間の跳躍力に衝撃を受けました。
言われてみれば今は国語の授業を受けているのでもないし、採点者の意図した正解を出すことが目的で文章を読んでいません。
今の読書の理由は自分が楽しむため。つまり小説の文章を受けて、何を思うか、想像するか、その文脈において読書はかなり自由だということです。
(朗読については文章表現を声で伝える行為なので、また違うなと思いますが。)

解釈を遊ばせる面白さ

さて、ここまで小説の解釈のための材料を紹介しましたが、
ここからは実際私がどう考えたか述べていきます。

1、妹の良心(愛情)の擬人化、具現化

密会に向かう妹の良心(夫に対する愛情にかなり近い)が内面から語りかけてきたとき、その場に相応しい見た目が赤帽であった。
以来、戦禍で参ってしまっていた妹の良心は常に赤帽の見た目を帯びるようになる。やがて海を越え、なんと夫に届いた。
一方で良心(愛情)そのものだからこそ、別れや注意を促したりなどの負の力を持たない。だから私に直接何かを告げることはできなかった。
最終的には自分で手紙を出し関係は終わりを迎えた。

2、村上の創作

村上は知っていた。密会しようとしてたろ?お前ら。
しかしまぁ戦禍で心の支えとなっていたのだろうから温情を示しつつ、無理のある怪談でそれとなく牽制していることを伝えよう。
まさか真に受けないとは思うが、仮に信じたとしても二度と近づくまい。

ここまでの2つとも、比較的本文に沿った読みだと思います。
ここからもう少し飛躍させてみましょう。

3、未来の私

私は戦後の復興から年月を経てタイムマシンを完成させた。
私は天才なので、ついでに地球上のどこへでも行ける機能もつけた。
なぜか?もちろん完璧である私の人生を狂わせた不倫の過去を消すためだ。
私の膨大な時間をかけた研究成果も虚しく、
不倫をきっかけに狂ってしまった親戚から逃げるような人生を送っている。
鉢合わせるたびに大声で「不倫大学の不倫大先生!」と連呼される。この前は学会発表に乱入して、「不倫素人質問で恐縮なんですが!」などとのたまう始末。
なんとなく流れで略奪婚した千枝子は神経衰弱が悪化し今や廃人と化した。くそ、こんなことなら・・・!
タイムワープ!全てをやり直す物語が始まった。
さぁて、東京駅にいておかしくない格好に変装してっと。

4、読者の介入

不倫というものは元来責められるべくして責められてきたが、
世間の人々は特に全くの無関係な者の不倫にも激昂するようになってきた。
その不倫を絶対許さない人々は集い、ついにここに不倫絶許同盟が創設されることとなったのだ。同盟のシンボルは赤い帽子。
不倫絶許同盟の怒りはついに作品世界に届くことになった。
元々は村上と会い、何度か関係を持った女の近況を聞き、合流してきた友人とさらに物語は発展する予定であった。
しかし、そこに赤い帽子を被った謎の人物が千枝子の前に介入する。
「旦那さんお元気ですかw?」
「え、連絡ない?じゃあ確認してきてあげましょうかw?」
今日東京駅にいたことも伝えちゃえばいいじゃん?
やましいことなんてないならさ!

あなた、堪忍して下さい。

https://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/103_15250.html

執念の成した技であった。

まとめ

個人的には、赤帽は千枝子の罪悪感、あるいは夫への愛情が怪異の形をとったもの、という読みが一番しっくりきました。ただ、村上がこの話を「私」に聞かせる構図を考えると、村上による遠回しな告発として読むこともできそうです。
さらに余興として考えれば、赤帽を未来の「私」や読者の視線として遊んで読むこともできるかもしれません。
同じ作品を読んでも、個人的な妄想の範疇では大幅に角度を変えてみるのも非常に楽しいんじゃないかなと思います。


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