六等星
眠れない。
縁側へ出る。
昼間の暑さが、まだ板張りに残っている。
今日も暑かった。
空を見上げる。
あの明るい星は、昔もあんなふうに光っていたんだろう。
名前は知らない。
知らないまま、ずいぶん長く眺めてきた。
……
……
思い出す顔なんて、だいたい決まっている。
あいつらだ。
……
親父がいたな。
おふくろも。
よく怒られた。
今になって思えば、あれも悪くなかった。
……
……
そういえば。
「お疲れさま。」
……
振り返った。
誰かが、小さく手を上げた。
……
あれは、誰だったかな。
仕事帰りだったか。
いや、違うかもしれない。
顔は思い出せない。
名前も知らない。
あの夜は、そのまま帰った。
……
それだけだった。
なのに。
あの一言だけは、まだここにある。
……
そういう人が、いた。
一人。
……
また一人。
思い出そうとすると、
また一人。
名前も出てこない。
顔も浮かばない。
それでも、
ちゃんと、いた。
……
もう一度、空を見上げる。
明るい星は、やっぱりきれいだ。
……
今ごろ気づくか。
私は少し笑って、
もう一度、空を見上げた。
余白のつづきを
忘れてしまったことと、
大切ではなかったことは、
同じではないのかもしれません。
顔を思い出せなくても。
名前が出てこなくても。
その人と交わした言葉や、ふと向けられた優しさだけが、
長い時間を越えて残っていることがあります。
人は、誰かの記憶に残るために何かをするわけではありません。
それでも、知らないうちに誰かの中へ、
小さなものを置いていくことがあるのかもしれません。
*
ふと思い出す、名前のない人はいますか?
この作品に重ねたものを、ぜひコメント欄で聞かせてください。
あなたの言葉を、ここに置いてもらえたらうれしいです。

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