学生時代には知らなかった、もう一つの「アパレルで働く」。31歳、商品開発職の1週間。
服が好きで、アパレルで働きたい。そう思ったとき、大学生の頃のぼくが知っていた仕事は、ほとんど販売員だけだった。
実際、セレクトショップで3年半くらいアルバイトをしていた。本社には商品企画とかMDとか生産とか、いろいろな仕事があるらしい。そこまでは知っていた。でも、その人たちが普段何をしているのかは全然知らなかった。
商品企画の人は毎日服を見ているのか。海外出張では何をしているのか。土日は休めるのか。
そして一番分からなかったのが、
普通の大学から、どうやったら本社に入れるのか。
地方の大学の経済学部にいたぼくには、この辺がずっと謎だった。
あれから9年。
今は31歳。アパレル企業の本社で商品開発をしている。テレワークもするし、海外工場とも仕事をする。前の週はベトナムとタイへ出張していた。
年収は900万円ほど。
年収を書くと急に怪しいnoteっぽくなるのであまり連呼したくないけど、一つの事実として書いておく。そして、新卒ではアパレル企業にすら入っていない。
どうやって今の仕事にたどり着いたのかは、最後に書くとして。
まずは、ある一週間から。
月曜日|服を触らないまま、一週間が始まる
8:30~9:30|ジム
この日はテレワーク。前週はベトナムとタイへ1週間出張していたので、久しぶりに朝からジムへ。時半に帰宅して朝ごはん。10時からそのまま仕事を始める。通勤時間は0分。
10:00〜12:00|ひたすらメール
出張中もメールは見るけれど、工場へ行ったり、商談したり、移動したりしているので全部は追えない。当然、溜まる。読む。返す。また読む。
午前中はだいたいこれで終わった。まだ服を一着も触っていない。
12:00〜13:00|昼食
通勤がないので、昼休みもしっかり取れる。こういう小さいことは、学生の頃には仕事選びの条件としてほとんど考えていなかった。
14:00〜18:00|カフェで作業
午後は家の近くのカフェへ。
月曜日はなるべく打ち合わせを入れず、作業日にしている。この日は業務のキャッチアップと、ベトナム・タイ出張のレポート作成。途中で飽きたので、もう一軒のカフェに移動した。
海外出張というと少し華やかに聞こえる。実際には帰国後に、メール、商談内容の整理、出張報告が待っている。写真にはあまり写らない部分。この日は結局、ほとんど商品を触らなかった。
火曜日|1年以上先の商品をつくる
10:30|出社
火曜日はオフィスへ。フルフレックスなので通勤ラッシュを避けて出社する。午前中はチームミーティング。企画やサンプル開発の進捗を共有する。
12:00〜13:00|同僚とランチ
出社した日は基本的に同僚と外へランチに行く。
14:00〜15:00|27AW商品の打ち合わせ
午後は27AW商品のサンプルについて打ち合わせ。
27AWは2027年秋冬。つまり、1年以上先に店頭へ並ぶ商品を今作っている。
生地、仕様、重さ、使いやすさ、量産できるか。学生時代は、服がこんなに前から作られていることすら知らなかった。
15:00〜16:00|サンプルを見る
上がってきたサンプルを実際に確認する。これは結構好きな時間。
生地を触る。背負う。ファスナーを開ける。閉める。また開ける。
画面では良さそうだったのに、実物になるとなんか違うこともある。
そういうところを見つけて、また直す。
17:00〜18:00|海外工場と打ち合わせ
夕方は海外工場とオンラインで打ち合わせ。
修正箇所や次のサンプルのスケジュールについて話す。
英語を使うことも多い。
服の仕事をするために英語が必要になるとは、大学生のぼくはあまり考えていなかった。19時くらいまでメールをして終了。
水曜日|「作りたい」だけでは商品にならない
10:30〜|品質ミーティング
この日は品質についてのミーティング。
商品開発というと、デザインや生地を考える仕事が目立つ。
でも実際に販売するには、生地やパーツに問題はないか、必要な試験をクリアしているか、量産しても同じ品質で作れるか、いろいろな確認が必要になる。学生の頃はブランドやデザインばかり見ていた。
仕事にすると、見なくてはいけないところが急に増える。服が好きなことと、服を商品として作れることは全然違った。これも働き始めて知ったことの一つだった。
木曜日|日本にいるけど、海外と仕事をする
10:30〜|海外工場とのやり取り
商品開発をしていると、日本にいながら海外と仕事をしている時間が結構長い。サンプルの修正、生地の確認、納期、次の試作。当然、毎回予定通りにはいかない。伝えたつもりでも違うものが上がってきたり、予定していた日にサンプルが完成しなかったりする。その間を調整する。
英語も使うけれど、英語が話せれば全部解決するわけではない。何を優先して、どこなら調整できるのかを伝えることの方が大事だったりする。
そして、これは今の会社に入って初めて覚えた仕事ではない。ぼくは新卒でアパレルブランドに入らず、繊維商社で約6年間働いていた。そこでやっていたことが、今、海外工場と商品を作る仕事にかなり生きている。新卒でアパレルに入らなかったことが、アパレル本社へ行くための武器になった。
少し変な話だと思う。
金曜日|また、服をあまり触らない
10:00〜|テレワーク
金曜日は再びテレワーク。
今週見たサンプルや品質、海外工場と話したことを整理して、次のサンプルや来週の仕事につなげる。一週間を振り返ると、商品開発という名前の割に、商品を触っていない時間の方が長い。メールも多い。煩雑なExcel作業も多い。学生の頃に思っていたより、ずっと普通の会社員だった。でも、その仕事が何か月か先には一つの商品になって店頭に並ぶ。そこは今でも面白い。
土曜日|服が好き。でも今日は仕事じゃない
大学時代、アパレルの仕事は土日は働くことが必須だと思っていた。
しかし、今はカレンダー通りの休み。
同じアパレル業界でも、職種が変われば働き方はかなり違う。
ぼくは服が好きだけど、服だけが人生の全部ではない。
旅行にも行きたい。ジムにも行きたい。土曜日に何もしない日も欲しい。
できれば給料も欲しい。全部欲しい。
学生の頃は、服が好きなら働き方のどこかを諦めるのは仕方がないと、なんとなく思っていた。しかし、今はそう思わない。
好きな業界で働くことと、自分がしたい生活は、両方考えてもいい。
問題は、こういう「アパレルで働く」があることを、22歳のぼくが知らなかったことだった。
で、どうやったらここに来れるのか。
ここまでが、学生時代のぼくが知らなかった、もう一つの「アパレルで働く」。そして、もし22歳のぼくがこの一週間を見たら、たぶん次にこう聞く。
「で、どうやったらそこに行けるの?」
ぼくは服飾専門学校も美大も出ていない。
地方の大学の経済学部を卒業して、新卒で入ったのもアパレル企業ではなく繊維商社だった。そこで約6年間働き、28歳でアパレル本社へ転職した。
今振り返ると、最初にアパレルへ行かなかったことが、むしろ今につながっている。なぜなのか。
そして、もし22歳に戻れるなら、同じ道を選ぶのか。
そこは有料noteにまとめています。今回書いたのが、今のぼくの一週間。
有料noteに書いたのは、この一週間にたどり着くまでの約9年間。
学生の頃のぼくは、たぶんこっちの方が知りたかった。
当時の就活生の自分に伝えるつもりで書いています。
