みたらし団子に喜んで
妹と二人暮らしをしていた時期がある、約2年。お互いに大学生で、実習、アルバイト、資格の勉強、それぞれ大変に忙しい日々だった。物件探しに始まり、ガス水道電気その他諸々の手続き、家具設置、ほとんどの家事も私が責任を持って担った。姉だから、という理由ではない。妹が楽しく快適に生きていることが、私にとってなによりの幸せだから。それは今までもそうだし、今もそうだし、これからも変わらぬ気持ちであると思う。
食材の買い出しに行くたび必ず買っていたものがある。ヤマザキのみたらし団子3本入り、当時98円くらい。あるとき何の気もなしに買って帰ったら19歳とは思えぬ喜びかたをされて、この世にあるあまい食べ物のなかで一番好きなんだ〜と言われた。そんなこと言われたら毎日でも買っちゃうよ、と冗談ぽく笑ったけれど、実際それに近いペースで買っていた気がする。ちなみに私はたいして好きでもなく、食べたことはほぼない。でも絶対に1本食べる?と尋ねてはくれた、優しいね。
もっと高級で、もっとおいしいみたらし団子が存在することも当たり前に知っていた。あろうことか家の近くにはみたらし団子で有名な和菓子屋さんがあったから、一度そのプレミアムなみたらし団子を買ってみたこともある。妹はもちろん喜んで、めっちゃうれしいありがとう〜とにこにこしながら食べてくれたけれど、やっぱりいつもの(ヤマザキの)が安心する味でいいなあと言っていた。多くはないバイト代で日々をやりくりする私にとってはありがたい感想でありつつ、妹の気遣いを感じて申し訳なくも思ったことを覚えている。
妹と二人暮らしをしていることを他者にはあまり話さなかった、いろいろな理由があって複雑だったから。学生の二人暮らしに関してあれやこれやと言われることもあったけれど、私は妹がすこやかに快適に生活してくれればそれでよかったから外野の声を気にしたことはない。この子の健康は私が守ると思っていた(←親すぎる)
頑張る姿を近くで応援できること、一緒に勉強を頑張れること、二人でごはんを食べられること、ちょっとしたことでもみいありがとうと言ってくれること、なによりもただ毎日元気でいてくれることが、私にとって大きな励みであり、希望であり、自分も勉学を頑張るぞというモチベーションになったことは言うまでもない。
収拾がつかなくなりそう、ここでいったんやめよう。いまはそれぞれの場所で暮らしている私たちだけれど、会えばかならず二人暮らし時代の話で盛り上がる。今日も授業頑張ろうね、バイト終わったら夜アマプラ観よ、明日の朝なに食べようか、定期買った?、早くお風呂入りな、お互いへのあらゆる思いやりで満ちたあの暮らしを思い返してはこれからも妹の幸せを願っていく。同じく、私もきっと妹から願われていく。
夏には久々に妹に会える。最近見つけた和菓子屋さんの絶品みたらし団子をお土産に持っていきたい、やっぱりヤマザキのがいいねと妹は言うんだろうか。
妹がおいしく食べてすこやかに生きていてくれると嬉しい。ただそれだけでいい。みたらし団子を食べる妹が世界で一番かわいく、愛おしい。
初夏のちいさな回想録でした。
瀬戸水葉
