芋出し画像

透明になる花

止たない心の雚の䞭で生きおいた私は、
雚の倜のコンビニで䞀人の青幎ず出䌚う。

雚音ず小説の話。
䜕気ない再䌚。

そしお圌に誘われお蚪れた、
雚に濡れるず透明になる花――サンカペり。

透けおいく花を芋぀めながら、私は気づいおいく。
枯れたず思っおいた心は、ただ濡れおいただけだったのだず。

これは、雚の䞭で出䌚い、
雚の䞭で咲いた、ひず぀の心の物語。


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''止たない雚はない''

ずゆう蚀葉があるけれど、私の心の雚はずっず止たずにいる。

私は枯れおしたった。

心も、そしお涙も。

いや

────── 忘れおいたのかも、しれない。


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それでは、次の倩気予報です。

週明けから梅雚前線が本州に近づき、九州北郚から東北たで続々ず梅雚入りするでしょう。

今幎は梅雚入り早々から倧雚になる可胜性もありたすので ────


䞖間では、梅雚入りらしい。

珈琲を飲み、煙草を片手にテレビを芋おいた。

'' 雹 ''かぁ。

私は、雚が奜きでも嫌いでもない。

傘に圓たる雚の音は、耳の奥たで響き枡る。
窓を䌝う雫を芋ながら、雚は匷いな、なんお思った。

「熱。」

がヌっずしながらテレビを芋おいたせいで、足に火皮が萜ちた。

「はぁ。い぀もず䜕も倉わらない。」

こんな毎日が、い぀たで続くんだろうか。
死ぬたでこのたたなんだろうか。

煙草を灰皿に力匷く抌しこみ、䌞びをした埌ベッドぞず向かった。

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「䜕も、面癜みのない䞖界だなぁ。」

そんな事をふず口にした。

窓にうるさく圓たる粒の音がする。

「あ、雚降っおきた。」

「いいよなぁ、雚は。颚に吹かれお行き先を決められおさ、颚がなければただ䞋に萜ちお行く。私にはそんな道さえもないのに。」

窓に぀く雚を眺めながら、そんなこずをふず考えおいた。

「䜕考えおんだろ。考えおたら煙草吞いたくなっおきた。煙草吞お」

重い䜓をベッドから起こし、キッチンぞず向かった。

「うわ最悪、煙草あず1本しかないの忘れおた。雚降っおるのに倖出るの面倒臭いな 」

「いや、買いに行くか。」

家から近いコンビニは、歩いお5分ほど。
それほど遠くは無い。
郚屋着に、䞊着を矜織り、どこにでもあるビニヌル傘を持ち倖ぞず向かった。

マンホヌルに溜たる雚

倖に出なければ感じられない、雚の日だけの䞖界。

「ビニヌル傘っお、こんなに雚の䞖界が芋れるんだな。」

可愛らしい花柄や、氎玉など雚の日を楜しめる柄の傘は沢山ある。
その䞭でも、ビニヌル傘はどこでも手に入る1番無難な傘。
でも案倖、私はこれが1番奜きかもしれない。

そんな事を考えながら歩いおいたら、すぐにコンビニぞず着いた。

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──── い  ã£ã—ゃいた  â”€â”€â”€â”€â”€â”€

先皋より雚の音が匷く倧きくなったせいか、自動ドアが開くず同時に店員さんが発した声は、遠のいお聞こえる。

「すみたせん、408番を2箱䞋さい」

「かしこたりたした。

「あ、すみたせん。HOTのカフェラテも、良いですか」

「倧䞈倫ですよ」

「雚、凄いですね今日。雚降っおるず寒いですし枩かいもの飲みたくなりたすよね」

䜎すぎず倧人びおいるわけでもないその声は、雚音ずの盞性がよく、心地良かった。

「そうなんですよね。すみたせん急に頌んじゃっお」

「いえ、党然倧䞈倫ですよ 僕もよくやっちゃいたす」

圌は笑っおそう答えた。

買い物を枈たせ、垰ろうずした時傘立おに刺しおおいたはずの傘が無かった。

雚の日によくあるこずずいえば、よくある。
誰かが間違えお持っお垰っおしたったり、傘をパクる人もいる。
どちらかだろう。
どうしようかず悩んでいた時、先皋たで䌚話しおいた圌の声が聞こえた。

「傘ないんですか」

「はい 、持っおきたんですけど、無くなっおたす」

「僕もうすぐ䌑憩なんで、雚宿りしおいきたせんか」

「え、いやでも」

「僕が話したいので  ã ã‚ã§ã™ã‹ã­ã€

そんな颚に蚀われおしたっおは断りきれない。

それにただ止みそうにないし。

「じゃあ、お蚀葉に甘えお」

そう私が答えるず、圌は嬉しそうに笑っお仕事ぞず戻っお行った。

むヌトむンぞ向かい、倖が芋える窓際ぞず座った。

車が走る床跳ねる氎溜たり

店内に深く響く雚音

匷たったり匱たったり、音で刀断が出来る。

それらはたるで ─────

───── 雚の日の螊り子のようだった 。

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5分ほど経ち、先皋の圌が来た。

「すみたせん、お埅たせしたした」

「いえ、党然倧䞈倫です」

窓の倖では、匷たったり匱たったりする雚が螊っおいた。

圌の事を暪目に少し芋た時、目が合い逞らしおしたった。

目が合っおしたったから話さなければず思ったのかは分からない
先に口を開いたのは、圌だった。

「僕、雚奜きなんですよね。」

私がどんな顔をしおいたのかは、分からない
けれど、私の顔を芋お圌は埮笑んでくれた。

「雚っお、嫌われがちですけど、心臓の音に䌌おいるず蚀うか。」

そう蚀っお圌は続ける。

「この音は、雚が降っおいる時にしか聞けないし、1人の時でも1人じゃないような。そんな感じがするんです。」

「私は、どちらでもないです。でも、雚の日にしか芋れない景色は奜きです。」

─── 「圌は雚の䞭に、癟合の䞭に、再珟の昔のなかに、玔䞀無雑に平和な生呜を芋出した。」

「倏目挱石、ですか」

「よく分かりたしたね。僕奜きなんです、この蚀葉が」

圌はたた、埮笑み窓の倖を眺めながら続けた。

「誰も芋たがらない、芋ようずしない事をこんなにも綺麗な蚀葉で綎る。そこに惹かれたんですよね。」

あれから、どれほど経ったろう。
雚のせいか、時間感芚が倱われる。
気づいたら話しおいた。

飲んでいた珈琲は枩かくはなくなり、気づけば雚は止み、曇り空の隙間から光が差し蟌んでいた。

「あの。良ければたた話したせんか。」

思いがけない蚀葉にびっくりした。

「是非。私も話したいです。」

たた䌚う玄束をし、私は傘の事も忘れ家ぞず垰った。

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煙草に火を぀け、先皋買った珈琲を飲みながら携垯を開いた。

圌ず話しおいた倏目挱石の事を、ふず調べたくなった。

'' 倏目挱石䜜品における「雚」は、単なる倩候描写に留たらず、登堎人物の心理状態や物語の雰囲気を深める象城ずしお頻繁に甚いられる。''

「心理状態、かぁ。」

調べおいるず、ふず目に止たったものに顔が熱くなった。

少し恥ずかしくなり、私はそのたた携垯を閉じた。

先皋止んだ雚は、たた倧きく音を立おるこずなく降っおきた。
その音に耳を柄たせ、気づけば圌の事を思い浮かべおいた。

「この音、心地いいな」

私はそのたた、眠りに぀いおいた。

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1週間ほど時が経ち、本栌的に梅雚入りずなった。

煙草ず珈琲を買いに、圌の居るコンビニぞず足を運んだ。
い぀も降る雚ずなんら倉わりのないはずなのに、今日の雚はどこか違う気がしおる。

圌に䌚えるかもしれないず考えおいる自分が居るからだろうか。
錓動が早くうるさくなるのが分かる。
雚音で消し去っおくれるこずを願った。

コンビニに着き、䞭ぞ入るず圌が居た。

「あ、こないだの」
圌は笑っお声をかけおくれた。
その声にたた、心臓がうるさくなる。

「お久しぶりです。今日も雚降っおたすね」

「ほんずですね。本栌的に梅雚入りしたしたもんね」

「今日も話せたすか」

「はい、是非」

買い物を枈たせ、自然ずむヌトむンぞ向かった。

「あの。次䌚ったら蚀おうず思っおたんですけど」

こないだ話した時より、少し䜎く真剣な声色で続けた。

「今床、サンカペり芋に行きたせんか」

「サンカペり」

「スケルトンフラワヌずも呌ばれおるんですけど」

圌はサンカペりに぀いお、詳しく話しおくれた。

元は癜色の綺麗な花だが、透明化するのは咲き始めや終わりかけの時期で、匷い雚では花びらが散っおしたう。
透明な花に出䌚えるのは、開花時期ず倩候条件が重なるこずが少なく、䞭々芋られないこずから '' 幻の花 '' ず呌ばれるこず。

「芋おみたいです」

そう答えるず、圌は嬉しそうに笑った。

「本圓ですか明埌日の土曜日ずかっお空いおたすか」

「䜕も予定ないので空いおたすよ」

「じゃあ、土曜日朝10時にここのコンビニで」

「はい じゃあたた土曜日に」

そう玄束をした埌、圌は仕事ぞ戻っお行き、私も家ぞず垰った。

先皋より雚は匷く降り出し、郚屋には雚の音だけが響いおいた。
匷い時の雚が屋根に圓たる音は、深くたずたっお1぀の音に聞こえる。
小さな粒なのに無数に溢れる雚は、神様の涙のようにも思えおきた。

「サンカペり、芋られるずいいな」

私は雚の音に身を委ね、そのたた倜を迎え眠りに぀いた。

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土曜日の朝、煙草ず珈琲を手に窓の倖を眺めおいた。
サンカペりを芋られる条件には、もっおこいな雚だった。

準備をしお、埅ち合わせのコンビニぞず向かう。
少し早めに着いおしたったず思っおいたのに、既に圌が埅っおいた。
少し駆け足気味で圌に近寄るず、私に気づき笑顔で手を振っおくれた。

「お埅たせしたした 早いですね 」

「い぀も埅っおもらっおばっかりだったので」

少し目を逞らし照れくさそうに笑う圌。

「行きたしょうか」

圌が先導しお歩いおくれ、私達は駅ぞ向かった。
雚が降っおいるから仕方の無いこずだけど、傘をさしお歩いおいるからか、い぀もより距離を感じる。
コンビニでは、暪䞊びに座っお話しおいたのに倖ではこんなにも離れおしたうのかず、少し寂しかった。
目的地ぞは、電車を乗り継ぎ、そこから少し歩いお着く堎所。
その間も色んな話をした。
やはり、圌ず話しおいるず時間を忘れられる。

そんなこんなで、目的地ぞず蟿り着いた。

雚は降っおなく、予報ではこの埌雚が降るらしい。
サンカペりを芋るには䞁床いいくらいだった。

「あ、この花ですね。サンカペり」

圌の指す指先には、小さくも矎しい癜い花が咲いおいた。
サンカペりの葉は、傘のように広がっおいた。

花を芋おいるず、ポツポツず雚が降り出しおきた。
私達は傘を差し、その瞬間を芋届けた。

倖偎から内偎ぞず埐々に透明になっお行くその姿は、蚀葉が出ないほどに矎しく芋惚れおしたうほどだった。

クリオネのような。海月のような。

雚を济び、透けおゆくその花匁は雫を受けるかのような、傘を逆さにしたような圢をしおいる。

「綺麗 」

口から零れたその蚀葉に、圌は嬉しそうに笑っお話した。

「そう蚀っお貰えお良かったです。めっちゃ綺麗ですねサンカペり。僕も初めお芋たした」

「この花、䞀緒に芋に来たかったんです。」

「䜕でこの花を私ず」

そう問いかけるず、圌はたた少し照れくさそうに笑った。

「䞀目惚れ、なんです。」

「あの雚の日に出逢っお、そんなに時間も経っおないですし、ただ深く知っおいる蚳でもないです。でも」

い぀の間にか、倪陜が差し蟌んでいた。
圌の目は、真剣で、倪陜にも負けないくらい眩しくお ───── 。

花も、雚や氎だけが降り続けおは成長しない。光合成するために倪陜があるように、共に生きるものがあるから、人は成長するんだず僕は思いたす。僕はそんな存圚でありたい。

晎れ間芋える䞭、雚が降り出す。
狐の嫁入りずは、よく蚀ったものだ。

雚が降っおいおよかった。
頬を䌝う涙が雚かどうか分からないから。

私は、この雚さえも愛おしく思えた。

静かに降り泚ぐ雚は
どこか枩かく、2人を包み蟌んでくれおいるようなそんな気がした。

圌ず出逢っお、私は雚が奜きになったず思う。

「雚、止みたせんね。明日は晎れたすか

圌は私の問に、少し驚き笑みを浮かべたあず

「きっず、晎れたすよ」

そう答えおくれた。

そしお、
私たちのこの時を芋おいおくれた
サンカペりの花蚀葉は ─────  ã€‚

──────   「幞せ」 。


━━━ Fin. ━━━━

いいなず思ったら応揎しよう