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なお、この星の上に

第十二章

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12-3

 なぜか健太郎は自分の正体を見破られた気がした。
「歳が合わん」間に合わせの異論を口にした。
「歳が合わんとはどういうことか」武雄は不審そうにたずねた。
「あいつはわしらと同じぐらいの歳やった。体格からすると下かもしれん。戦争の落し子なら、もっと歳がいっとるはずやろう」庇うような言い方になっている。
「せいぜい五つか六つじゃろ」いかにも取るに足りないという口ぶりで武雄は言った。「もっと下もおるかもしれん。そのへんはようわからん。ろくに乳も与えられずに育てば、体格なんぞあてにならん。わしはどうも、あいつが戦争の落し子のような気がする」
「そんなら火付けも、あれの仕業か」健太郎は胸の鼓動が速まるのを感じた。
「そこまではわからん」武雄は何かを猶予するように答えた。

 家に帰ると綾子が開口一番、灰拾いが釈放されたと言った。
「やっぱりガーグーは犯人やなかったな」
 どうやら前に自分が主張していたことは忘れているらしい。
「おまえの民主主義は怪しいもんだの」と健太郎は皮肉を言った。
「なせか」
 それには答えずに自分の部屋に引っ込んだ。不審火がつづいたおかげで、昭の家に火を付けたのが灰拾いではないことが証明されるかたちになった。すると誰の仕業なのか。放課後の話が心を離れなかった。父親を探してさまよい歩く戦争の落し子の話だ。町から町へ渡り歩きながら物を盗み、恨みもない家に火を付ける。おまえなのか。おまえが犯人なのか。なぜそんなことをする。何が目的だ。ただ火を付け、人を慄おののかせることか。
 夕食の席では、夜まわりのことが話題になっていた。村の男たちが二人ひと組で家々のあいだを歩いてまわる。自警団に近い性格のものらしい。戦争のころに戻ったようだ、と母親は言った。あのころは毎夜の空襲に怯えたものだった。県内のめぼしい市や町は、ほとんどが被害に遭っていた。さすがに山奥の小さな村までは飛行機も来なかったが、頭上を飛んでいく戦闘機や爆撃機の姿は何度か目にしたことがある。空一面が覆い尽くされることもあった。
「波状攻撃いいよったかな、あとからあとから、ひっきりなしに飛んでくるみたいやった」
「なんぼぐらいおった」綾子が無邪気にたずねた。
「百か二百はおったんやないかな」
「大編隊やな」
「おかあちゃんは女学校でね、昼間は隣町の工場で勤労作業いうのをやらされよった」母親は昔語りに話しはじめた。「学校の授業もありよったけど勉強どころやなかったな。食べ物も乏しかったし、大人も子どももみんな疲れ果てとった」

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