『楓』
柔らかな頬に触れてみた。
少しだけ、きみが笑ったような気がした。
横になった背を撫でながら、少しずつゆっくりになっていく呼吸を指先で確かめた。
薄く目を開けて僕を見たきみは、首を軽く傾けてから、すぐにまた遠くを見つめた。
耳の後ろをくすぐると、一瞬だけ前脚を動かした。
小さな前脚が空を切り、僕はそれを掴んだ。
肉球の冷たさが手のひらに伝わった。
ふわふわの尻尾が、ぱたんと落ちた。
両脚を突っ張るようなかたちになって、そのまま動かなくなった。
さっきまで微かに振動していた背中は、もう指先に何も伝えてくれなかった。
目は少しだけ開いていた。
最後に何を見ていたの。
ここに来て、幸せだったかい。
おでこの真ん中にあるハート型の模様を指でなぞり、かたちをちょっと崩してみた。
