【エッセイ】震えながら、でも運転する理由。
息子と2人、飛行機を見に空港へ。
その間、運転席に座るわたしはそわそわ。
とにかく口がよく渇くので、
信号待ちの間に水筒のお茶をごくり。
口の中は潤ったけれど、
信号待ちが長かったので、
気を紛らわすためにもう一口ごくり。
わたしは運転が苦手だ。
ペーパードライバーを卒業して3年経つけれど、
何度乗っても呼吸が浅くなる、肩に力が入る。
今この狭い道で対向車がきたらどうしよう。
あの角から車が曲がってくるかもしれない。
後ろの車、車間距離が近くて嫌だなあ。
こういうのを『かもしれない運転』と言うらしく、
事故を未然に防ぐために大切な考え方らしい。
とはいえ、
あらゆる不安を抱えながらの運転は、
体力もメンタルも消耗するから、
正直、苦しい。
できることなら助手席に乗って心おきなく景色を
堪能したいし、存分に連れ回して欲しい。
でも、
それもこれも、息子のため。
わたしが震えながら運転しようが、
目的地に着く前に水筒を飲み干そうが、
息子の喜ぶ笑顔が見たい。
その一心で、
今日もハンドルを握る。
そんな母とは対照的に、
息子は行き先の飛行機のことで頭がいっぱい。
「ひこーきいる?いるかなあー」
さっきからずっと同じセリフを言っている。
飛行機がいるかどうか心配で仕方がないようだ。
いるいる。大丈夫だよ、と繰り返し言い聞かせていると、そのうち自分に向けた言葉に変わった。
きっと、大丈夫。
無事にたどり着くからね。
どうにかこうにか目的地である空港に着き、
駐車場のコインパーキングへ。
すると、発券機が思ったより遠くて、
ドアを開けないと駐車券が受け取れない。
ドアを開け、なんとか券を手に取ると、
後部座席から
「ママ、あぶない、しめて、あぶない」
とお叱りを受けた。
運転中、ドアは開けちゃダメだって
いつも言ってるもんね。
言いつけを守っていることに嬉しさを感じつつ、
わたしの強めモードの口調だったので苦笑い。
言い方までコピーされていると、
自分がもうひとりいるみたいで複雑な気持ちだ。
そんなプチハプニングはあったけれど、
駐車もクリアできた。
帰りの運転は頭の片隅に追いやって、
今は思う存分楽しむだけである。
✈️
「たのしかった」
帰りの車内で、ボソッと呟く息子。
満喫しすぎて疲れたのか、
小さな声だった。
それでももう一度聞きたくて、
え?なに?と聞き返すほど、幸せな瞬間はない。
「たのしかった」の6文字は、
なんぼあってもいいですからねえ。
帰り道、少しだけ呼吸が深くなった。
おわり
*最後まで読んでいただき、ありがとうございます✈️
