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氷点下16度の山で、アドレナリンMAX | 韓国軍人ぼろぼろ日誌

7月29日。
今日で、私が韓国陸軍を除隊してちょうど一年になる。

早い。と思う一方で、
「いや、まだ一年も経ってなかったのか」というほど
色んなことがあったし、人生も大幅に変わったなと。

韓国では、除隊してから4年間は「現役軍」ではない「予備軍」という部類に入り、年に一回、部隊に出向き訓練を受けなければならない。
その予備軍の訓練にも先月行ってきた。
ちなみに、日本に帰る(海外に在住)とその訓練は自動的に免除され、4年がすぎるともう行く義務もなくなる。

先日、日本にいる韓国人の友人たち(日本の大学に留学し、日本で就職までしたパターン)と会ったが、彼らは予備軍に一度も行ったことがないという(そらそうや、兵役の時だけ韓国少しおったくらいやからね)。
また、なぜか私の周りにいる韓国にいる友人たちは「社会服務要員」といって、どこか重い手術歴があったりなどで、現役で軍人として服務できないと判断された人たちが、軍隊ではなく公共機関や福祉施設などで業務を行う代替服務をしてきた人が多い。

皮肉なことに、なぜか私という日本から来た小僧が今、周りにいる韓国人の中で1番韓国軍人なのである。予備軍にすら行ったことのない生粋の韓国人たちを尻目に、日本出身の私が1番の"韓国軍人"を名乗っているのだから、アイデンティティと軍歴の相関、統計的にバグっていると思う。ということもあって、私はいまだに周りから「軍人くん」呼ばわりされることが多い。

さて、
除隊一年記念ということで、久しぶりに『韓国軍人ぼろぼろ日誌』を復活させようかと思う。

どんな話が書けるかなと、思いにふけていたところ、
ある話をまだ、皆さんに共有したことがなかったなと気づいた。

某月某日。

その週は氷点下16度くらいがずっと続いていた。
厳しいで有名な上官が班長という元、4人1チームで山に二週間ほど籠っていた。訓練も終盤になってきた。

早朝四時。ひとまず、待機令。

私は副班長だったため、厳しい班長とは別行動で、真っ暗の中、手先の感覚と微かな月光ならぬ星光を頼りに、私は後輩1人を連れて、待機場所を選定する。

すぐに身動きが取れるようにテントも張らずに、ひとまず簡易のマット(というより薄っぺらいシートといった方が適切な表現だと思う)だけ敷いて待機。

ただ、眠い。
待機令は出ているものの、私も訓練がどのように進行されるのかなどある程度はもう勘が働くくらいに軍隊には適応していた段階だったので、無線を耳元に置き、横になる(これができるのは班長と別行動できる、副班長になった特権だ)。

でも疲れは溜まっている。
後輩と無線に神経を張るのを代わり番こに、少し寝よう。
が、眠れるわけがない。なんせ、気温はマイナス16度。骨の髄までカチカチに固まるほどだ。一瞬、眠りについてもすぐに目が覚める。目が覚めるとは言うが、これは一種の生存本能なのかもしれない。

だんだんと、山の峰が明るくなってきた。
陽にあたれば少しは回復できるだろうと、微かに希望を抱く。

周囲の状況も目視で判断できるようになってきた。
けど、希望とは裏腹、悪寒を感じた。

私たちが横になっている場所は、木々に囲まれた土の斜面の横に、森の中にぽっかりと口を開けたような土の窪みだった。
これ「ヌタ場ちゃう?」と頭によぎる。森の中の窪みは、イノシシの「ヌタ場(沼田場)」と呼ばれる場所である可能性が高い。イノシシやシカが泥浴びして体の汚れを落とす場所。つまりは、ここは獣専用の温泉施設。とはいえ、氷点下16度の中、地面はもうカチカチに凍りついている。温泉どころか、露天の下は完全に凍結中。獣も来てくれないんじゃないかというレベルの寒さだ。しかし、イノシシが近くにいるかもしれないという憶測は完全には拭えない。

銃は持っているものの、実弾は入っていない。
ここで襲われたら、絶対絶命。

すぐに、糞が落ちていないか、足跡はないか、後輩に探してもらう。
そして、私は周辺の木の幹が擦れていないか辺りを見渡す。

ヌタ場近くの木々は泥で汚れていたり、擦れている場合が多い。
これはイノシシが幹に身体をこすりつけた跡だ。

幸いなことに、イノシシの痕跡は見当たらず、斜面のそばにある"ただの窪み"だったっぽい。

だが、新たなものを見つけた。
斜面に直径3~4cmほどの穴が数ヶ所。これは"ヘビの巣穴"に違いない。

はあ。寒いのは気温のせいだけじゃなかった。
冬眠中だとわかってはいても「すぐそこにヘビがいる」という事実が嫌だ。
こういうときに限って、待機令が解除されない。

無線から、なにか伝達されないか耳を澄ましているうちに、
空はすっかり明くなった。

もう今日の作戦が決行されてから随分経つ。
6時間は軽く過ぎたことだろう。

訓練中にこんなことを言うのもなんだか、
今日は、暇で仕方がない。
勘でわかる。今日は何もない日だと。

木に登ってみたり、鳥を眺めたり。
こういう日が1番ツラい。退屈で仕方がない。

そんな中、後輩が木の枝で何かを突き始めた。
よくよく見ると、ヘビの巣穴を突いているではないか。
「ヒイィィィィィィイーーー!!!!!!!!!!!!!!!」
あまりの退屈さに、とうとう、頭がやられたそうだ。

だが、そんな姿を見て、私も頭がやられた。
「ヘビの巣穴の中ってどうなっているんだろう」
と好奇心がゾクゾクしてきた。

後輩と私は、目を合わせてニヤリ。
もっと長い木の枝を探しては、恐る恐るヘビの巣穴に入れてみる。

ここでヘビを起こしていきなり噛みつかれたらどうしようと
ゆっくり、ゆっくり、ヒヤヒヤしながら木の枝を入れていく。

おっと?結構、深いっぽいぞ。
突き当たりで曲がり角になっていて、さらに奥があることは感触でわかる。

後輩と私は、また目を合わせてニヤリ。

後輩は、すぐに私の意図を察したようだ。
軍装カバンから、三つ折りになったシャベルを出してきた。
「私、ちょっと掘ってみます。」と言う。

さっきの木の枝で見つけた突き当たりまで、掘ってみた。
私のさらに奥があるという感触はあたった。

「ううぉおおおっっっフォーーッ!」
と後輩と2人で謎解きとヒヤヒヤが化学反応を起こしてアドレナリンMAX。

後輩は「私にやらせてくださいっ!!」さらにシャベルを握りしめ、一心に土を掘る。

その後輩はまだ新人の部類で、40kgを超える軍装カバンを担いだらいつもフラフラするほど足腰は鍛えられてないくらいだったのに、あんなに力強く掘り進めていく姿をみたら、普段のあのフラフラはなんだったのだろうと不思議な心中だったのは、置いといて。あの時ばかりは、40kgの軍装より"好奇心"の方が重かったのだと思う。

次の突き当たりは、分かれ道になっていた。

私も、軍装カバンからショベルを引き出してきて、左を。
後輩は、右を掘り進めていく。

掘っては、木の枝で方向を確認し、また掘る。
えっさ、えっさとリズミカルに手を動かし、土を掘り返していくこと3時間。

気づけば、2人とも防寒具を近くの木の枝にぶら下げ、氷点下にいるとは思えない格好をしていた。

だが、まだヘビは姿を現さない。
ヘビの巣穴ってめちゃくちゃアリの巣みたいに四方八方に巡っている。

すげえ〜と一息ついているときに、
無線がジリジリと音を立てた。

移動令が出された。

私と後輩はすぐさま荷物をまとめ、後ろ髪を引かれる思いで、合流地点へ向かった。あんなにヘビ嫌いの私がヘビの姿を一目見ようと躍起になったのはあれが最初で最後だろう。良い子は、決して真似しないように。。。

後にわかった事実だが、あの張り巡らされた巣の先には大きな空洞があるらしく、ヘビたちはそこで何匹も身を寄せ合って冬眠しているらしい。あのとき、あそこで移動令が出されたことに、心底ホッとしている。

除隊して1年、私が残した"戦績"はこれである。

猛暑が続いているが、少しでもこの話で涼めただろうか。
また、気が向けば「韓国軍人ぼろぼろ日誌」も更新しようと思う。
皆さん、くれぐれもお大事に。



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