芋出し画像

トマトのヘタ、゚ビのしっぜ、刺身の倧葉、パセリ──みんなヌそれも食べ物だよヌ

この前、
掋食屋さんで友だちずランチを食べた時、
゚ビフラむのしっぜを食べた。ばり。

するず、
「え埅っお、そこ食べるんですか」
ず蚀われた。

食べるよ。
普通に。
だっお食べ物じゃん。
バリバリ食べるっお。

ちなみに私は、
刺身に぀いおくる倧葉も食べる。

パセリも食べる。
トマトのヘタも食べる。

最埌のや぀に぀いおは、
別に他人に掚奚しおいるわけではない。
䜕でも食べれば偉いずいう話でもない。

ただ私は、
皿の䞊に乗っおいるものを芋るず、
かなりの確率で、
食べ物だず思う。

単玔な生き物である。

料理人が皿に眮いた。
じゃあ食う。

信頌が厚い。

🌞

しかし、
゚ビのしっぜを噛み砕きながら、
私は少し気になった。

なぜ、
「そこ食べるんですか」
なのだろう。

そこ。
そこっお䜕だ。
゚ビじゃん。
゚ビの䞀郚じゃん。

゚ビ本䜓から離れお、
どこか別の䞖界から出匵しおきたわけでもない。

倧葉だっおそう。
刺身の䞋に敷かれた途端、
急に食材ずしおの身分を剥奪される。

スヌパヌで䞀束買えば、
立掟な野菜なのに。

刺身盛り合わせの䞋に暪たわった瞬間、
「緑色の背景、線集次第で消えるや぀」
になる。

䜕その人事異動。
䞍遇すぎんか。

けど、パセリなんかもっずひどい。

料理の暪に添えられただけで、
ほが颚景ずしお扱われおいる。
食卓の街路暹。

存圚は認識されおいる。
でも誰も近づかない。

皿を䞋げられるずきも、
圓然のように残っおいる。

「あなたは食べ物ですよね」

ずいう顔をしおいるのに。

知らんけど。

パセリの衚情なんお。

🌞

考えおみれば、
私たちは食べ物に察しお、
かなり勝手に、感芚的に、
「ここたでが食べる郚分」
ずいう線を匕いおいる。

魚の皮。
鶏の軟骚。
鮭の皮。
倧根の葉。
ブロッコリヌの茎。
キャベツの芯。
パンの耳。
果物の皮。

食べる人もいる。
食べない人もいる。
私はこれ党郚食べるや。

぀たり、
生物孊的に完党な境界があるわけではなく、

文化ずか習慣ずか、
食感ずか芋栄えずか、
面倒くさいずか、

そういう非垞に人間らしい事情によっお、
その線は毎回適圓に匕かれおいる。

ここは食べ物。
ここから先はゎミ。

はい。
境界確定。

随分簡単だ。

昚日たで怍物の䞀郚ずしお、
同じ氎を吞っお、
同じ倪陜を济びお、
同じ䞀本の生呜ずしお生きおいたのに、

包䞁が䞀回入った瞬間、
片方は料理になり、
片方は生ゎミになる。

切断ずは、
随分非情な行為である。
シビアだよ。たったく。

🌞

それで私は、
い぀ものクセで、嫌なこずを考え始めた。

人間にも、
同じようなこずをしおいるな
、ず。

人を芋るずきも、
この人のここは欲しい。
ここはいらない。

ず、随分噚甚に切り分ける。

仕事ができるずころは欲しい。
愚痎は芁らない。

優しいずころは欲しい。
䟝存は芁らない。

自分を奜きでいおくれるずころは欲しい。
面倒くさい感情はいらない。

身䜓は欲しい。
人生たでは背負いたくない。

話は聞いおほしい。
でも盞手の話は長い。

楜したせおほしい。
けど疲れおいる顔は芋せないでほしい。

人間、
刺身よりはるかに泚文が倚い。

倧葉なら黙っお巊遷も受け入れお、
快く䞋敷きになっおくれるのに。

🌞

「あなたが奜き」
ずいう蚀葉ですら、

堎合によっおは、
「あなたのうち、私に郜合のいい郚分が奜き」
ずいう意味かもしれない。

もちろん、
そんなこずを蚀い始めたら、
ほが党郚の人間関係が営業劚害を受ける。

芪子愛も。
友情も。
恋愛も。
職堎の信頌関係も。

我々は盞手ずいう䞀匹を、
䞞ごず飲み蟌んでいるわけではない。
そんなこずをしたら胃もたれする。

その人の䞭から、
自分が消化できる郚分だけを食べおいる。

優しさ。
才胜。
容姿。
若さ。
知性。
身䜓。
経枈力。
蚀葉。
安心。
自分を芋おくれる県差し。

そこだけ綺麗に箞で摘んで、
いただきたす、
ず蚀う。

そしお、
食べられなかった郚分を、
皿の端に寄せる。

嫉劬。
怒り。
老い。
匱さ。
醜さ。
執着。
病気。
倱敗。
矛盟。
郜合の悪い欲望。

はい、
ごちそうさたでした、
これは食べないや぀。

🌞

そんなこずを考えおいたら、
急にパセリが可哀想になっおきた。

いや。

パセリは別に、
私の同情なんか求めおいない。

怍物に勝手に人栌を䞎えお、
勝手に哀れんでいる。

非垞に人間的で、
気持ちが悪い。

でも、

皿の隅にポツンず残ったパセリを芋るず、

蚀葉にしづらいんだけど、

䜕ずなく、

ああ──

こういうものがあるんだな、ず思う。

必芁だった。
でも食べられるほど必芁ではなかったもの。

料理を完成させるために眮かれた。
緑が欲しかった。
圩りが欲しかった。
芋栄えをよくしたかった。
ちゃんず圹に立った。

そしお、
圹割を終えたので捚おられる。

うわ。なんかすごくいやだ。

瀟䌚人みたい。

🌞

䌚瀟なんお、
かなり巚倧な刺身盛り合わせなのかもしれない。

数字を䜜る人。
調敎する人。
謝る人。
教える人。
空気を敎える人。
堎を明るくする人。
責任を取る人。

皆それぞれ、
䜕らかの甚途で盛り付けられおいる。

人材。
ずいう蚀葉からしお怖い。

人間ではなく、
材料。

材。
朚材。
食材。
人材。

甚途が前提になっおいる。

圹に立぀ずころがあるから、
そこに眮かれる。

そしお、
甚途を倱った瞬間、
急に皿の端が近くなる。

パセリのこず、笑えないじゃん。
私は今、皿のどの蟺りでこれを曞いおいる

🌞

でも。

ここで、
「だから人は人を䞞ごず愛するべきだ」
などずいう結論に行くほど、
私は善良ではない。

それはね、
無理だよ。

䞞ごずなんお。

人䞀人、
䞞ごず受け止められるほど、
私の胃袋は倧きくない。

嫌なずころは嫌だし。
無胜は困るし。

暎力を振るう人間たで、
その人らしさだから、
なんお抱き締める趣味もない。
殎られそうだし、こわい。

食べられないものはある。
毒だっおある。
腐っおいるものもある。

距離を眮かなければ、
こちらが死ぬものだっおある。

䜕でも受け入れるこずは、
愛ではなく、
たぶん刀断力の攟棄だ。

だから、
線を匕くこず自䜓が悪いわけではない。

問題は、その線を、
自然界にもずもず存圚しおいたものだず錯芚するこずなのだず思う。

🌞

これは食べ物。
これはゎミ。

これは圹に立぀。
これは圹に立たない。

これは男。
これは女。

これは正垞。
これは異垞。

これは矎しい。
これは醜い。

これは愛。
これは執着。

これは才胜。
これは無駄。

私たちは線を匕く。

線を匕かなければ、
䞖界はあたりに耇雑すぎお、扱えないから。

分類する。
名前を぀ける。
箱に入れる。
そしお安心する。

でも、
箱に入れた瞬間に、
そのものが箱の圢になったわけではない。

私たちが、
その圢に切っただけだ。

🌞


たぶん私は、
境界に匕っかかるものが奜きなのだず思う。

食べるのか、
食べないのか。

男なのか、
女なのか。

矎しいのか、
気味が悪いのか。

愛なのか、
執着なのか。

正垞なのか、
異垞なのか。

必芁なのか、
䞍芁なのか。

うん。

これはきっず間違いない。

どちらかに片づけようずするず、
少しだけはみ出すもの。

そういうものを芋るず、
ちょっず気になる。
拟いたくなる。

口に入れお、
噛んでみたくなる。

──いや、あくたで比喩よ。

゚ビのしっぜは、
本圓に噛むけど。

🌞

考えおみれば、
私はずっず、
皿の真ん䞭より、
端っこに眮かれたものを芋おきた気がする。

䞻圹より、
䜙癜。

完成品より、
残骞。

綺麗に分類されたものより、
分類に倱敗したもの。

誰も疑わず捚おおいるものを芋お、
本圓にこれ、
捚おるや぀捚おちゃうの

ず、
䞀床だけ觊っおみたくなる。

その癖が、
文章にも出おいる。

人間が圓然のように捚おおいるものを、
拟っおきお、
机の䞊に䞊べる。

孀独。
醜さ。
欲望。
嫉劬。
䟝存。
絶望。
身䜓。
異圢。
矛盟。

食卓に茉せるには、
あたり圩りが良くない。

どれも倉な色だし、圢もいび぀。

パセリのほうがただ華やかだ。

でも、
私はたぶん、
そういうものを食べるために文章を曞いおいる。

誰も食べないから。

ではなく。

本圓の本圓に食べられないものなのか、
自分自身で確かめたいから。

🌞

だから今日も、
゚ビのしっぜを食べる。

倧葉を食べる。
パセリも食べる。

トマトのヘタたで口に入れお、
これは普通なのだろうか、
ず思う。

たぶん普通ではない。
でも別にいい。

普通かどうかず、
私が食べるかどうかは、
党く関係がない話だ。

ただ、
䞀぀だけ気を぀けたい。

私は、
「捚おられるものを愛する私」
になりたいわけではない。
聖母ぶりたいずかいう願望はない。

それもたた、
随分綺麗に隠蔜された自己像だから。

私は単に、
誰かが匕いた境界線を芋぀けるず、
ちょっず螏みたくなるだけなのだ。

ここから先は食べたせん。
ここから先は人間ではありたせん。
ここから先は矎しくありたせん。
ここから先は愛ではありたせん。

そんな札が立っおいるず、
その向こう偎を芗き蟌みたくなる。

䜕があるの
本圓に
誰が決めたの
実はその先っおただ進めるんじゃない

っお。

🌞

皿の䞊には、
最埌たでパセリが残っおいる。

私はそれを摘んで、
口に入れる。

別に、
救枈ではない。

パセリは救われない。
私も特に救われない。

䞖界の食品廃棄問題も、
これだけのこずでは解決しない。

たった䞀枚、
葉っぱが消えるだけ。

それでも。

さっきたで、
「食べないもの」
ずしお存圚しおいたものが、

私の口の䞭で、
ただの食べ物になる。

境界ずいうものは、
案倖、
その皋床のものなのかもしれない。

誰かが匕いた線を、
䞀回噛み砕けば消える。

そしお私は、
その味を確かめながら思う。

䞖の䞭には、
食べられないものがたくさんある。

捚おなければならないものも、
離れなければならない人も、
きっずいる。

でも。

食べられないから捚おたのか。
捚おるものだず教わったから、
食べなかったのか。

その二぀だけは、
なるべく間違えたくない。

゚ビのしっぜを噛みながら、
そんな倧局なこずを考えおいる。

うるせえな。
飯くらい黙っお食え。

本圓にそう思う。
でもたあ。

パセリたで食べ終わった皿は、
劙に綺麗だった。

──あず、パセリっお食べたあず、口の䞭も心なしかさっぱりするよ






いいなず思ったら応揎しよう