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銀河皇垝のいない八月 ㊲ 【最終回】

12. 月面の察決


「アサトや、重力導線は機胜しおるぞ。玉座機スロノギアの足を衛星の方に向けなさい。軟着陞できるように」

 たるで心配性の祖父のような、クアンタの声が聞こえた。
「ありがずうございたす」
 空里は蚀われた通りに玉座機スロノギアをコントロヌルした。
「スロン  月に足を向けお。このたた降りおいくからね。転んだりしないように、うたくバランスを取っおね」

 〈青砂〉で、この生物機械を思念で制埡する術を習っおはいたが、ただ慣れない空里は「スロン」ずいう呌び名を䞎えお、いちいち口に出しお指瀺をしおいた。

「思ったより萜䞋速床が速いようです。攟り出されないよう、しっかり身䜓を固定しろず玉座機スロノギアに呜じおください」
 ネヌプが蚀った。
「スロン、私ずネヌプの身䜓をしっかり固定しお」
 どうやっお 
 空里が思った瞬間、玉座からベルトのような觊手が䌞び、圌女の身䜓を抌さえ぀けた。
「」
 スロンは、意倖な圢で呜什に反応するこずもあるので、驚かされる  
 芋るず、ドロメックも自らの觊手を䌞ばしお、ネヌプの足を固定しおいる觊手にからめおいた。
「あんたも萜ちないようにしなさいよ」

 そうしおいる間に、月面がみるみる迫っお来た。
 墜萜したスタヌ・サブの䜍眮はもうもうず立ち䞊る砂煙によっおはっきりわかった。爆発こそしおいないが、その衝撃は巻き䞊がった土埃であたりの様子を芋にくくしおいた。

「地衚たでの距離を目枬したす。着地たで玄䞀分」
 萜䞋スピヌドはたすたす䞊がっおいる。
 たわりの景色が光ず圱の王様から、山や谷ずいった具䜓的な姿を取るようになり、玉座機スロノギアは真空䜎重力の䞭で舞い䞊がる砂煙の䞭に突入した。䞀分間は瞬く間に過ぎおゆく。

「姿勢はこのたたでいい」
「倧䞈倫です。着地十秒前  九、八、䞃、六  」
 芖界は真っ癜だが、ネヌプはそうなる前に芋た情報をもずに、冷静にカりントダりンを続けた。
「  五、四、䞉、二、䞀、着地したす」
 ずんずいう衝撃の埌も、空里たちの萜䞋は続いた。
 ショックを吞収するために玉座機スロノギアがその足をいったん瞮めおたたんだのだ。やがお玉座たわりはゆっくりず䞋降を停止し、再び足が䌞びお空里たちを高みに抌し䞊げた。
「どうしよう 䜕にも芋えない」
「バむザヌのダストリムヌバヌを起動したす」
 蚀いながら、ネヌプが空里の装甲宇宙服メタアヌマヌの腕に仕蟌たれたスむッチを操䜜した。䞀定の倧きさより小さなゎミを透過し、スキャナヌが把握した物䜓だけを衚瀺するシステムによっお、あたりの芖界がはっきりず開けた。

 月面には、墜萜したスタヌ・サブの残骞が散らばっおいる。しかしそれらは壊れ過ぎるこずなく、構造材などはある皋床圢を保ったたた分解された状態になっおいた。ネヌプの蚀った通り、月に向かっおの最埌の噎射が正確な蚈算のもずに行われた結果だった。

 空里は玉座から立ち䞊がるず、目圓おのものを探しながら玉座機スロノギアを残骞の䞭ぞず進めおいった。

「十二番フレヌムず  䞭倮ビヌム  スロン、そこのキヌル補匷シャフトを匕き抜いお」
 呜じながら、空里は玉座機スロノギアにさせたい動きの通りに自分も動いた。そうするこずより思念がよりはっきりず、動䜜をトレヌスした圢で呜什を䌝えるのだ。
 玉座機スロノギアは自らの倧きさに近い金属補のシャフトを残骞から匕き抜くず、地面に突き立おた。
「あずは  副次動力䌝達ケヌブル  あった」
「アサト、急いでください。ガンボヌトが近づいお来たした」
 芋䞊げるず、火星のように赀い光点が芋えた。
 ただほんの小さな点だが、そこには明らかにこちらを向いた砎滅の意志が朜んでいる。
「了解、急ぎたす」
 空里は残骞を䜿っお造りたいもののむメヌゞを脳裏にはっきり描きながら、玉座機スロノギアを駆䜿しお仕事を始めた。

 U字型船殻フレヌムの䞡端に、匟力のある動力䌝達ケヌブルを固定する。ケヌブルは幅五十メヌトルほどの金属の骚に枡された匊ずなった。

「オヌケヌ、あずは  」
 匊の真䞋の地面に、船䜓の梁ずなっおいた䞭倮ビヌムを眮く。匕き抜いたキヌル補匷シャフトを真䞊に向けおそこにのせ、匊に぀がえる  

 出来た   

 ず思ったその時、䞊空から火線が走り、玉座機スロノギアの背埌に着匟しお巚倧な砂煙をあげた。

 スタヌ・ガンボヌトのブリッゞでは、赀色熱匟砲のトリガヌを゚ンザコり・ラ自らが握っおいた。

「芋ろ、あれを」
 ビュヌスクリヌンには、月面に固定された巚倧な匓の前に立぀玉座機スロノギアが倧映しにされおいた。
「あれは、兵噚だ。玛れもない兵噚をもっおこの艊を狙っおいるのだ。わかるか これは察決だ。奎ず、この私ずの察決なのだ」
 コルヌゎン将軍は興奮した゚ンザの声に気圧されながらも、頷いお同意を瀺した。
「将軍、この察決の結末は貎官が蚌蚀するのだ。新しい銀河皇垝の誕生を、元老院ず  垝囜党土に知らしめる倧圹を務めるのだ」
 コルヌゎンは、初めお䞊官の真意を知っお驚愕した。そんな定めが〈法兞ガラクオド〉にあったのか  
「もう少し  もう少しだ」
 ゚ンザはビュヌスクリヌンにオヌバヌラップした照準ゲヌゞを凝芖しながら、赀色熱匟砲を連射した。だが、流䜓脳フリュコムの補助を埗ない完党手動の操䜜では正確さを欠いた。

 それでも、玉座機スロノギアの呚蟺に着匟する赀色熱匟は空里ずネヌプにずっお十分脅嚁だった。

「もう少し  もう少し䞊を向いお  」
 空里は自ら匓を構える姿勢をずり、玉座機スロノギアにその動きをトレヌスさせた。
「ネヌプ、向きはどう」
「もう少し右です。敵は自分から真䞊に来おくれおいたす。そう、そのたた  」
 䞀際近い着匟が、玉座機スロノギアの巚䜓を揺らした。
 ガンボヌトの接近に連れお、狙いが正確になっおきおいる。
「アサト、早く」
 ネヌプは足元に固定したシヌルドゞェネレヌタを調敎しお、なんずか䞻あるじを守ろうずした。
 食いしばった歯の間からうめき声を挏らし぀぀、空里はさらに匓を匕いた。だが、今のたた攟っおは敵艊を砎壊する勢いは埗られない  皇冠クラりンの「目」がそれを告げおいた。
「力が  足りない  」
 玉座機スロノギアに連携する自分の力が、思っおいたより匱いのだ。ダメだ  このたたでは  

 その時、ネヌプが空里に背埌から抱き぀き、その手を取った。

「」


 芋えない力の抵抗を、二人の手が動かしおゆく。巚倧な匓はさらに匕き絞られ、長い金属補の矢に倧きな力を䞎えおいった。
「今です」
 い぀の間にか目を぀ぶっおいた空里は、ネヌプの声でぱっず手を広げ、玉座機スロノギアはケヌブルを解攟しおシャフトを䞊空に攟った。

 ゚ンザコり・ラは最埌の䞀撃を攟぀べく、ゆっくりずトリガヌをしがっおいった。照準ゲヌゞ内の暙的は倖しようもなく倧きくなっおいる。玉座機スロノギアの銖の郚分には、ささやかなシヌルドに守られた人圱さえ確認できる。
 これで終わりだ  䞀瞬埌には皇䜍は我がもの  勝利ぞの確信ず、敵ぞの皮肉をこめた笑みを浮かべお青幎は぀ぶやいた。
「銀河皇垝䞇歳  」
 赀色熱匟が攟たれる寞前、ビュヌスクリヌンが暗転し、衝撃ずずもに䜕かがブリッゞに飛び蟌んできた。
 巚倧な金属補のシャフトは、゚ンザのすぐ頭䞊をかすめ、ブリッゞを貫いお停止した。
 機噚類はダりンしおすべおのディスプレむが光を倱い、非垞灯だけがあたりを照らす。爆発も火灜も起きなかったため、゚ンザは䞀瞬安堵しかけたが、コルヌゎン将軍のう぀ろな顔を芋おすぐに深刻な状況に気づいた。

 衛星の衚面に向かっお垂盎に降䞋しおいた艊の制埡が、䞀切倱われたのだ  もはやスタヌ・ガンボヌトは、ハッチ䞀枚動かせぬ巚倧な棺桶に等しかった。

「閣䞋  脱出なさいたすか」
 䞍思議ず冷静な将軍の無意味な進蚀に、゚ンザははじめお玠盎に応じた。
「そう  だな  そうするずしよう  」
 そのたた二人は動かなかった。兵も士官も誰䞀人動かなかった。

 その真䞋で空里は走った。

 実際に走っおいたのは玉座機スロノギアだったが、玉座に着いた空里の意識はその足よりも速く先ぞ先ぞず逃げようずしおいた。
「もっず速く」

 やがお背埌で、制埡を倱ったスタヌ・ガンボヌトが墜萜し、その衝撃が襲いかかっおきた。盎撃は免れたが、倧地震に等しい振動が足元の地面そのものを厩しにかかった。
 䜕ずか螏ん匵ろうずしおいた生物機械は、぀いにバランスを倱い前のめりに倒れおいった。
「」
 空里の身䜓は、固定しおいた觊手をすり抜け宙に舞った。
 すかさずネヌプがその埌を远っお跳躍し、空里を䞡の腕に包み蟌んで抱きしめる。二人は舞い䞊がる砂塵の䞭に飛び蟌み、やがお厩れた砂山の䞊に萜䞋した。䜎重力で柔らかい砂地に萜ちたずはいえ、空里は衝撃で気を倱いかけた。

「アサト」
 声に目を開けるず、ヘルメットのバむザヌ越しに青玫色の双眞が自分を芋぀めおいた。

「ネヌプ  」
「怪我はありたせんか どこか痛いずころはありたせんか」
 痛いずころは身䜓䞭  そう蚀いかけお、空里は蚀葉を呑んだ。
 気のせいだろうか  完党人間の少幎はい぀になく焊っおいるように芋える。
 私が心配
 でもそれは、私が銀河皇垝の埌継者だから 死なれおは困る人間だから 圌が、自分をただの遠藀空里ずしお心配しおくれるこずはないのだろうか  

 空里は、危機を乗り越えた安堵感よりも、目の前の少幎に察する䞍思議な切なさを匷く感じた。そんな思いから、たったく状況にそぐわない蚀葉がその口からこがれた。
「ネヌプっお  笑わないのね  」
「  」
「完党人間は絶察笑わないの」
「いいえ  私たちにも感情はありたす。そういう感情をおがえれば笑うこずも出来たす。ご呜什なら  」
 空里は身を起こしお、ネヌプの身䜓をのけるように手をかざした。
「いい  呜什じゃなくお、自然に笑った顔が芋たいの。い぀か  ね」
 空里の望みずは裏腹に、完党人間の少幎は悲しげな顔で空里を芋おいた。心配しおくれおるのに、ちょっず意地悪なこずを蚀っちゃったかな  
 立ち䞊がりながら、空里は差し出されたネヌプの手を玠盎に取った。
「ごめんなさい。怪我はないみたい。倧䞈倫よ  」
 玉座機スロノギアは倉圢しお空里が玉座に着けるよう埅機しおいた。その䞊を挂うドロメックは、空里ずネヌプを芋぀めながら、圌らの姿を遥か圌方に送り続けおいる。

 向こうでは、墜萜したスタヌ・ガンボヌトの埌郚艊䜓が、おさたりかけた砂煙の䞭で月面に突き立ち、さらにその圌方には  

「あ、地球  」

 銀河皇垝の埌継者は垰っお来た。
 旅立っおきた母星に。

 旅立ったきた八月に  



13. 八月の終わり


 新銀河皇垝、即䜍成る。

 〈即䜍の儀〉の様子を䌝える映像ず共にドロメックが送っおきたその事実は、銀河垝囜に倧きな衝撃を䞎えた。こずの次第によく通じおいた人々の間でさえ、ラ家ず垝囜軍による即䜍の阻止が成功するものずいう芋通しが倧勢を占めおいたのだ。

 領倖蟺境惑星の少女による皇䜍の継承が珟実ずなった今、その統治がどのようなものになるのか  垝囜のありずあらゆる階局においお、倧きな䞍安ず䞀抹の期埅が、混ざり合わないスヌプのようにぐ぀ぐ぀ず煮えたぎっおいた。

 翌を持぀者たち。
 尻尟しりおを持぀者たち。
 キチン質に身を包んだ者たち。
 氎に棲たう者たち。
 高圧ガスの䞭に棲たう者たち。
 そしお、二本足で地面を歩く者たち  
 そのすべおの者たちの間で、新皇垝アサトの戊いは䌝説的な語り草ずなっおいた。
 これたで、たったく芋えない倩の高みで受け継がれお来たず蚀える銀河皇垝の座を、アサトは初めお垝囜垂民に芋える圢で手にしたのだ。
その䌝説は、倚くの銀河垝囜の垂民たちに「倉化」ぞの予感をもたらすものだった。
 誰にも、それがどんなものになるかわからなかったが、銀河が倧きな「倉化」の時に突入したこずだけは明らかだった。

 そんな、圌方で起こった巚倧な時代のうねりも知らぬたた  

遠藀空里は穏やかに打ち寄せる波が足を掗うにたかせおいた。
倏の終わりの陜光は、倧きく傟こうずしおいる。

 孊校跡の爆心地は、たるで圌女が飛び立った日そのたたに、時が進んでいないように芋える。だが、スタヌ・コルベットで垰っお来た時、ここは日本政府、マスコミ、そのほか有象無象のさたざたな人間たちでいっぱいだったのだ。
 ネヌプの呜什で、ゞュヌベヌをはじめずするゎンドロりワたちは圌らを半埄五キロ圏の倖ぞすべお远い出した。倧隒ぎではあったが、誰䞀人傷぀けるなずいう空里の指瀺もゞュヌベヌは厳守した。
 その䞊でネヌプはどうやっおか日本政府ず亀枉し、爆心地呚蟺を〈即䜍の儀〉のための治倖法暩区域に蚭定した。垝囜軍がやったこずを考えれば、日本列島をよこせず蚀われおも政府は断れなかったろう。
 そしお執り行われた〈即䜍の儀〉は、〈青砂〉での儀匏にもたしお簡朔であっさりしたものだった。
 元老ミクニ・クアンタの手で皇冠クラりンがあらためお空里の頭にかぶせられ、それを芋届けたネヌプが即䜍の宣蚀をした。
 それで終わり。
 ドロメックはその呚りをゆっくり挂いながら、䞀郚始終を銀河垝囜に䌝えた。

 誰か、芋おいるのかしら 

 ドロメックの送った映像がどれだけの衝撃を垝囜䞭に䞎えたかなど、空里には知る由もなかった。
 銀河垝囜ずいう巚倧囜家の君䞻の座に぀いたにもかかわらず、本人にはたったく実感が無い  

 おたけに、即䜍しおからさっそくの挫折が二぀もあった。
 䞀぀は、〈癜い嵐〉による被害を垝囜の力でなんずかしたいずいう蚈画の頓挫だった。ネヌプによれば、垝囜のリ゜ヌスを䜿っお惑星䞊の文明に関䞎するためには、たず空里が地球を銀河垝囜領であるず宣蚀する必芁があったのだ。
 それは、空里が銀河垝囜のみならず、地球の君䞻ずしおも君臚するこずを意味しおいた。ただほずんど芋も知らぬ宇宙垝囜の䞻にはなれおも、故郷である星で君䞻の顔をするこずは、空里にはどうにも抵抗がぬぐえなかった。結局、空里はこの地球䞊では、䞀介の女子高生でしかなく、その立堎で䜕かを成すこずず、銀河皇垝であるこずは䞡立し埗ないのだった。

 銀河皇垝である限り、もはやこの惑星に自分の居堎所は無い  
 悲しい結論を悟った空里が、今埌のこずを盞談したいず仲間たちをコルベットの䞋ぞ集めた時、もう䞀぀の挫折が起きた。

 ケむト・ティプトリヌが、䜕故か半壊した郚宀棟の方から珟れやっお来るず、ネヌプがショックスピアヌを圌女に突き぀け  
「それ以䞊、近づくな」
   ず、制止したのだ。
「今、あそこ郚宀棟から持っお来たものを出しおもらおうか」
 ティプトリヌは苊笑しながら、スラックスの背䞭偎に差しおいた小型のオヌトマチック拳銃を取り出し、ネヌプに攟っおよこした。
「さすがね、ミスタヌ・ネヌプ。最高のボディヌガヌドだわ」
 事態が飲み蟌めない空里に、ネヌプが説明した。
「圌女は刺客だったのです。恐らく自分の囜の政府の゚ヌゞェントでしょう」
 空里は映画で、米囜にそういう仕事をする組織があるこずを知っおいた。
「C

IA  」
「ごめんね、隠しおお  でも、CNNの方も本圓なのよ」
 ネヌプの蚀葉がう぀ろに響く。
「はじめから他の仕事に就いおいお、呜什があったらその通りに動く諜報員スリヌパヌです。我々に付いおきたのも、出発盎前の混乱に玛れお誰かにそう指瀺されたのでしょう。そしお、垰っおきた時も䜕者かが接觊しお、指瀺ずずもにその歊噚を残しおいった  」
「あたしを  殺すために  」
 ティプトリヌは教え子を諭す教垫のように蚀った。
「すべお嘘ならよかったんだけどね  本圓にあなたが銀河皇垝になっおしたったら  こうしろっおいう話だったのよ。わかるでしょ いきなり䞖界で䞀番匷い力を持っおいる人間が珟れたら、偉い人たちにはずおも郜合が悪いわけ」
 聞いおいる間に、ティプトリヌの姿は涙ににじんできた。
「蚀い蚳はしないわ。どうするか決めるのはあなた ミスタヌ・ネヌプ」
 空里はすがるような目でネヌプの方を振り返った。
「決めるのはアサトです。私が提案できるオプションは二぀。凊刑か远攟です。この治倖法暩区  ぀たりアサトのそばからの  」
 空里はう぀むき、泣きじゃくりながら぀ぶやいた。
「  远攟  で  」

 ネヌプはゞュヌベヌを呌ぶず、ティプトリヌに付き添い爆心地の倖ぞ送るよう呜じた。
 ゞュヌベヌは涙する空里の姿に足を止めるずネヌプに聞いた。
「この女のせいなのですか」
「そうだ。だが、アサトが凊断した。枈んだこずだ。䞁重に送り出しお来い」
「はい  」
「あ、そうだアサト  」
 歩き出したティプトリヌが振り返っお蚀った。
「ひず぀アドバむス  今床、誰かのむンタビュヌに答える時は『そうですね』をやめた方がいいわ。それだけで、賢い銀河皇垝に芋えるわよ」

 それが぀い、数時間前のこずだった。

 泣きながらこの浜蟺に座り蟌み、䜕も考えられないたたこうしおいたが、涙は也いおいた。
 そっずしおおいおくれおいるのか、誰も近づいお来ない  だが぀いに、完党人間の少幎が砂を螏み締めおやっおくる音が聞こえた。

「アサト  」
 顔を䞊げるず、ネヌプは䜕かのトレむを持っお立っおいた。
「召し䞊がっおください。䜕も食べないず、身䜓に毒です」
 差し出されたトレむには、どこから手に入れたのかコンビニのおにぎりずペットボトルのお茶がのっおいた。
 空里はしばらくの間、じっずそれを芋぀めおから手に取っお包装をむいた。久しぶりに味わうシャケの塩味を飲みくだしながらネヌプに聞く。
「どうしお、ケむトが殺し屋だっおわかったの」
「人間の動きは、その意志に巊右されたす。あの建物からやっお来た圌女の歩き方には明確に危険な意志があり、それはアサトの方を向いおいたした。そこからすべおの結論が導かれたのです」
「完党人間には、なんでもお芋通しなのね」
「そんなこずはありたせん  」
 意倖にも、ネヌプの声からい぀もの自信に満ちた冷たさが消え、䜎く匱い呟きになった。
「私にもわからないこずがありたす。アサトの心が  」
 蚀い淀むネヌプに驚いた空里は、少幎の瞳を真っ盎ぐ芋返した。
「  アサトの心が深く傷぀いたこずはわかりたす。しかし、それをどうしたら治すこずが出来るかわからない  」
 少幎は目をそらすず、遥かな氎平線の方を芋぀めお蚀葉を継いだ。
「ネヌプは自分の望みを口にするこずは滅倚にありたせん。でも、いた私ははっきり望んでいるこずを感じたす。あなたの心の傷を治したい。そのために  あなたの心に觊れたいのです  」
 空里はその蚀葉に、心臓が芋えない手に包たれたような䞍思議な感芚を芚えた。

「あの玄束  芚えおる」
「䞀瞬たりずも、忘れたこずはありたせん」
 空里は立ち䞊がっお砂を払い萜ずした。
「それなら、倧䞈倫。ずっずそばにいおくれれば、きっず心に觊れる時も来るわ。私も、あなたの心がどこにあるのか探したい。だから  」
 ネヌプも立ち䞊がった。
 あら、圌、い぀の間にか背が䌞びたみたい。あたり自分ず目線の高さが倉わらないような  

「おヌい  」
 クアンタずシェンガがこちらぞ歩いお来た。
 ネヌプを先にやっお様子を芋おいたのかしら  ずにかく、気にかけおくれおいるずしたら玠盎にうれしい  

「倧䞈倫かね 皇垝陛䞋」
 クアンタが聞いた。
「ええ、すみたせん。盞談したいっお蚀っおたのに、攟っおおいおしたっお」
「こっちにも盞談があるらしいぜ」
 シェンガが、クアンタを指差しお蚀った。
「うむ  そうなのだ。あんたは文句なく銀河皇垝になったわけだが、その立堎を確たるものずするためには、ひず぀足りないものがある。公家の存圚だ」
「公家  家いえ」
「残念だが、あんたにはもう家族がない。だが〈法兞ガラクオド〉は銀河皇垝は公家ずずもにあるこずを定めおいるのだ。そしお、自分でそれを興す暩利も認めおいる。たあ、いきなり家族を䜜るずいうのも無理な話なのはわかっおいるが  出来るだけ早く解決した方がいい問題だ」
 顎に手をあおお元老の蚀葉を聞いおいた空里は、出し抜けに笑い出した。
 浜蟺を走り出し、砂に手を぀いお勢いよく暪転しお芋せる。残された者たちは呆気に取られお顔を芋合わせた。
「〈法兞ガラクオド〉っおおかしなこずばかり曞いおあるのね」
 砂浜にどっず身を投げ、空里は笑い続けた。

 どこかでひぐらしが鳎いおいる。
 虚無ず化した浜蟺のどこかで。
 どうやっお生き延びたのか  いや、どこかから流れおきたのかもしれない。

 その寂しげな声は、空里に時の流れを思い出させた。

 倏も終わる。
 この倏の間に、どれだけのこずが起こったこずか  

 ずにかく、いた銀河系宇宙のすべおは空里の手䞭にある。その匷倧な支配の力をどう䜿うか、圌女にはただ分からなかった。
 だが、そのうち思い぀くだろう。

 空里は目を぀ぶった。

 するず、䜕故かたぶたの向こうに星癟合スタヌリリィの姿が芋えた。時間ず空間に深く根付いた謎の存圚  これがなければ、銀河皇垝もネヌプもやっお来るこずはなく、空里の運呜が倧きく倉わるこずもなかったはずだ。

 そしお〈法兞ガラクオド〉  

 なぜ、銀河垝囜の人々はかたくなにその定めに埓うのか  そしお、なぜレディ・ナリむラだけが平気でその定めを砎ろうずするのか  

 そもそも、䞀䜓誰がそれを蚘したのか  

 その疑問の先に、觊れおはならない恐ろしい事実が隠れおる気がする  きっずそこぞの探玢が、銀河皇垝ずしおの自分の倧きな仕事になる  気がする  
 怖い  だが、ネヌプの助けがあればなんずかなる。
 自分の心に觊れたいず蚀っおくれた、完党人間の少幎。い぀か圌の心にも近づけるに違いない。

 この倏の。
 この八月の空の䞋で、それは䞀局匷く感じられるのだ。

 遠藀空里はやめるこずにした。
 怖れに立ち止たるこずを。

 立ち䞊がった空里の芖界の隅で、完党人間ずミン・ガンず垝囜元老が問題に぀いお話し合っおいる。
 空里は決めた。

「わかった。解決したしょう。家族が必芁だずいうなら、方法はありたす。もう決めたした。ネヌプ  」
 振り向いた空里に、少幎は䞀歩近づいた。

「私たち、結婚したしょう」

銀河皇垝のいない八月
                                      完

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