コンビニオーナーが愛した競合店のコーヒー
1年前、うちの店の近隣に、他チェーンの新店舗がオープンした。
当然売上には大きく響いた。
だが、仕方がない、と割り切っている部分もある。
うちだって、他所さんの売上をいただきながら、出店・拡大してきたのだ。
コンビニ業界では、よくある話である。
実は最近、私はその競合店の常連客になっている。
最初は“敵情視察”のつもりだった。
だが、競合チェーンのコーヒー、揚げ物、弁当――食べてみると、普通にうまい。
別に、自分のチェーンを悪く言いたいわけではない。
ただ、何十年も毎日のように自社商品を食べ続けていると、さすがに飽きもくる。
特に気に入ったのが、カウンターコーヒーだった。
気がつけば、毎朝そこへ立ち寄り、コーヒーを買い、駐車場で飲みながら、その日の仕事の流れを確認するのが習慣になっていた。
朝は、高確率で競合店オーナーの奥さんがレジに立っている。
何度も私のレジを打ってくれた。
(まさか競合店のオーナーが毎朝来てるとは思うまい)
(ちゃんと休み取れてるんかな。今日もお疲れ様です)
言葉を交わしたことはない。
それでも、いつの間にか私は、“敵”ではなく、ただの常連客になっていた。
そんな、ある朝だった。
いつものようにレジに向かい、コーヒーを注文する。
対応は、いつものようにオーナーの奥さん。
すると、店の自動ドアが開いた。
入ってきたのは、うちの店の常連さんだった。
私の顔を見るなり、気さくに、そしてデリカシーのない大きい声で話しかけてきた。
「あちゃ〜、オーナーに浮気しよるん、バレてしもうたな」
それ以来、私はその競合店に、行きづらくなってしまった。
私の毎朝のコーヒーのルーティンは、静かに終わりを迎えた。
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祖父母の記憶、コンビニの日常、家族のこと。
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