プールは海水だった 蟹がいるマリンプール エッセイ4
ひろみんさんからバトンを受け取りました。プで始まる題名って、何があるだろう?
プって?本来なら3人の方へバトンを回すようですが、noteを始めたばかりですので、エッセイのみでご勘弁を。ひろみんさん、こんなに訛っている聞き書きの物語を紹介頂き感謝申し上げます。
これは「 #エッセイしりとり 」です。
エッセイ
プールは海水だった
蟹がいるマリンプール
15年前のお話です。
あの日の以前、宮城県亘理郡亘理町に町民プールがあった。あの日とは東日本大震災である。東日本を経験した人は、あの日といえば3月11日の日を指すのだ。
あの日を境に記憶の海馬によりハッキリと分類されている。あの日の前だったのか、あの日の後だったのか。ある意味、便利と言うべきだろうか。
鳥の海に、松林に囲まれた、なんてことない町民プール。マリンプールって名前が可愛い。今は、マリンプールは跡形もなく無くなってしまった。土台すら、波がさらっていった。
亘理町は太平洋を背にすれば仙台平野が広がり、四方山のずっと奥には蔵王山の稜線が雄大に広がる。蔵王山を見ながら、「ざぶんザザザザー ざぶんザザザザー」マリンプールは波の音が聞こえて来たものだった。
夏休み、旦那は、子ども達と子どもの友達を連れて度々マリンプールに出かけては、帰りに近くのコンビニでアイスを買って食べながら帰ってくるのだった。
子ども達にとって、初めての滑り台付きのプールは、マリンプールだった。
そしてプールの最大級の魅力が、子どもは50円。小学生未満無料だった。
マリンプールは、プールの水は海水で目や鼻に入るものなら痛みで悶絶するから嫌だったと子ども達は言うのだった。そんな思い出も愛おしい。
海水だけにイソ蟹や小さな魚がプールに混じって、子ども達と一緒に泳でいた。
あっ!海水パンツの中に蟹を入れたのは誰だ。いい子は真似してはいけない。
イソ蟹は、海辺から黒松の防潮林に向かって集団で横断することがあった。産卵のためらしい。もちろん蟹歩きでだ。
その度に、地元民は車を止め、蟹を優先的に通してあげた。
サーファー達も、じっと蟹の横断を待ち、蟹渋滞が発生するのだった。日が暮れて、夕凪が訪れる頃、海から松林に続く砂利道が蟹色に染まっていく。
15年が経ち、今でも思うことがある。防潮林は、根っこごとなくなった今、イソ蟹達は、どこへ行ったのだろう?
イソ蟹も思っているだろう。マリンプールに来ていた沢山の子ども達は、あの日から、いったい、どこへ消えてしまったのだろうと。
おしまい
