見出し画像

「先輩と同じ言葉を使っているのに、なぜ私は注意されるの?」|教える側と伝える側にあるズレを紐解く

「私たちが使う言葉も、専門スキルと同じように磨いていく必要があります」

先日、部内研修でそんな話をしました。
研修が無事に終わり、ほっと一息ついた頃。
一人の職員が、どこか憂鬱そうな表情で私の元へ歩み寄ってきました。
目にはうっすらと涙を浮かべながら、
彼女は胸の内に溜め込んでいたモヤモヤを吐露してくれたのです。

「今日の研修、聞いていて納得できました。
私なりに利用者さんへの言葉遣いには気をつけているつもりなんです。
……でも、先輩から言葉遣いを注意されることが何度かあって」
「でも……その先輩だって、私と同じような言葉遣いで利用者さんに話しかけているんです。『なぜ私だけ注意されるんだろう』って、
どうしても思ってしまって……」

先輩と同じように利用者さんに接しているつもりなのに、自分だけが注意される。
理由が分からないまま毎日を過ごし、
不安と理不尽さに押し潰されそうになっていた彼女は、今回の研修をきっかけに勇気を出して相談してくれたのです。

「表面の言葉」ではなく「目に見えないスタンス」のズレ

「同じ言葉を使っているのに、なぜ評価が分かれるのか?」

この現象を紐解いていくと、原因は言葉そのもの(表面的なコミュニケーション)ではなく、「利用者に接する際のスタンス(見えない前提)」のズレにあることが分かります。

先輩職員が見ている場面と、彼女が見ている場面。
形としては同じ言葉を口にしていても、
「目の前の利用者さんとどう向き合っているか」
「何を大切にしてその言葉を選んでいるか」
という本質的な目的が異なっていたのです。

そこで私は、彼女に指導やアドバイスをする前に、まずこんな質問を投げかけてみました。

「〇〇さんは、利用者さんと話すとき、どんなことを一番大切にしたいと思っている?」
「どんな自分(職員)で在りたいと思っているのかな?」

彼女の「在り方」に耳を傾ける

問いかけてみると、彼女は自分なりの言葉で「利用者さんとこんな関係性を築きたい」という温かい願いを話してくれました。
さらに話を聞くと、過去にも別の先輩から言葉遣いを注意されたことがあり、
それをきっかけに
「自分の中で一つ固く決めたスタンス」
があったことも教えてくれました。
それ以来、その件では注意されなくなったのだそうです。

利用者さんと築きたい「願い(関係性)」
失敗から学んで自分で決めた「スタンス」

私はこの2つを否定せず、「なるほど、そこまで考えて向き合っていたんだね」と、まずは彼女の想いを丸ごと受け止め、承認しました。
その上で、今回新しく「次に利用者さんと話すとき、一つだけ意識して実践すること」を、
彼女自身の言葉で決めてもらいました。

自分自身の軸で歩み始めた彼女

現在、彼女は自分で決めたその一歩を現場で実践しています。
相変わらず試行錯誤の毎日ではありますが、
相談に来たときのような暗さは消え、
どこか吹っ切れたような晴れやかな表情で仕事に向き合っています。

「同じ言葉を使う」という表面のテクニックを真似るのではなく、「自分がどう在りたいか」という軸を持つこと。

指導する側も、単にダメ出しをするのではなく、相手が大切にしたい「在り方」に耳を傾けること。

読みながら、ふと、自分の職場の誰かの顔が浮かんだ方もいるかもしれません。

引き続き、実践してみて彼女に見える景色がどう変わったのか、近いうちにまた彼女の「新しい気づき」を聞いてみようと思っています。


▸このテーマは同じ視点で書いた記事をマガジン「一歩踏み出す」(余白ができたら少し前を向いて、チームマネジメントを実践してみる場所。)にまとめています。
ぜひ、こちらも覗いて見てください。


いいなと思ったら応援しよう!

sato|私が静かなる勇気づけと言葉にこだわる理由 活動の励みになります!応援、宜しくお願いします!