クリーンルームにて
新卒で入った会社で、営業職をしていた頃の話。
当時、印刷会社に勤めていたので、自分の担当エリアを片っ端から運転して、訪問営業をやっていた。
面接の時は、「うちはルート営業(既存の顧客を引き継いで担当する)しかないよ〜^^」と聞かされていたが、入社した途端に「新人は、多くの新規顧客を獲得するように!ルート営業は3年目から!」とか言われて「(こ、これが、社会…!)」と思いましたが、そんな中でも、自分なりに一所懸命働いてました。
どこまで書いていいのか、分からないのですが、紙の営業って本当に色々と大変で…まぁ本当、ブラックもブラックでしたね。
自分がそうだったんですけど、印刷会社って、名前だけ聞くと、普通に印刷だけをしているイメージが、ありませんか?(ない?そう……)
全ての仕事がそうであるように、実際はそんな単純なものではなく、自分のいた印刷会社は、段ボール、化粧箱(お菓子の箱とか)、ラベルシール、HPといったように、販促に関わる全てのものが、販売対象でした。
自分が担当した部署は、地域柄もあり、農家さんが多かったので、出荷用の段ボールとか、ふるさと納税用のパッケージとか、いろんなものを担当しました。
業界ではあるあるなんですけど、農家さんと仕事すると、彼らのプライベートのお手伝いも、営業がやらないといけないんですヨ。いかんせん、紙なので一枚当たりの単価って、そこまで他社と競えなくて、大体みんな同じ単価になるんです。だから、契約してもらうには、営業の奉仕度もかなり重要なんです。(ブラックすぎるねェ…)
繁忙期の出荷の手伝い、農家の知り合いの葬式の受付、農家の孫の受験の勉強みたり、まぁマジでいろんなことをやりました。
なんせ田舎の印刷会社だし、当時はまだパワハラ防止法もなかったので、今の就職世代にとっては、おっかなびっくりすることばかりが、日々起こってました。
当時の上司も、情熱的な人しかいなくて、17:30定時だったのに「17:30からのもう一件!」っていうスローガンがありましたからね…
加えて自分は、女性だったこともあり、全てのハラスメントが秒単位で起こったりしてました。
まぁ俗言う、「私の時代はさ…」ってやつをやるとダルくなるので、ここら辺でやめます。
そんな環境で、自分が配属された部署っていうのが、数ある営業チームの中でも、特にクセが強いメンバーで構成されていて、それを束ねていたのが、今回の話のメインになるB部長という人です。
年齢は、当時で50後半ぐらいで、顔はジョージ・クルーニーに似ていて、かっこいいけど、九州の嫌なところを全て詰めたような人でした。
うちの部署は、毎朝ちょっとしたミーティングをやっていて、大声でその日時点での売上を報告し、月目標に届かなさそうだったら、その場でスクワットをさせる最悪な時間がありました。
いつも通り(?)異常なミーティングをやっていたある日、一人の先輩(以下K先輩)が、「B部長、先月契約した、新規顧客のレタス農家さんに、契約御礼の挨拶に伺いたいので、同行をお願いいたします!」とB部長にお願いしていた。
全ては、この時から始まりました。
新規契約が出来た時は、担当営業とB部長が、その会社に挨拶に行く決まり?があって、B部長の主な仕事の一つでもあったんです。
当時はまだ新人で、そのしきたり?を見たこともなかったので、自分も同行するように言われて、後日3人で挨拶に行くことになりました。
そのレタス農家っていうのが、いわゆるクリーンルームで栽培しているタイプで、田舎の中でも、もうほぼ使われていない旧道沿いに、看板も何も出ていない、白い建物があったんですね。
基本、建物があれば訪問するように躾けられているので、K先輩もレタスが栽培されているとは知らずに、突撃訪問したみたいです。
B部長はこういう話が大好きでしてね…
車の中でもずっと、「なァ!たまらんだろ。自分で飛び込んだ先が、顧客になるのは。まさかこんなところに金があるなんて!なァ!」とか上機嫌で「さすらいさんも、彼を見習って、どんどん訪問しなさい。10回断られても、話を聞いてもらうまでやりなさい。一見、会社に見えなくても、ただの民家だとしても、臆せず訪問するように!ドリカムも言いよる!何度でも何度でも!ってなァ!!!」
言わんとすることは分かるけど、「(例えドリカムで合ってる?)」とか思ってました。(新人なんで、「ハイッ!」とか言ってましたケド…)
そんなこんなで、そのレタスの会社に着いたんですね。
K先輩が受付をしている間に、B部長が「こんなところでレタスがなぁ…野菜は、太陽が当たっていないと、美味しくないんだけどなぁ…」とか言ってて、「(オイ、大丈夫か?)」となったのですが、そういう価値観の人なので、「(こういう栽培方法って、理解できないんだろうな)」とか思って、複雑な気持ちになりましたネ。
ほどなくして、担当さんがやってきて、一通りのしきたり(お礼と手土産を渡す)を済ませると、「よければ、クリーンルーム見ますか?」って言われて、見学させてもらえることになったんです。
私は、工場見学とかそういうのが大好きなので、「(え!やったー!)」とちょっとした社会科見学のような気持ちになり、嬉しかったです。
専用の作業服みたいなのを着て、クリーンルームに入ると、紫の光を浴びた、大量のレタスがラックに並んでいて、「(最先端…!)」とか思いました。
細いことは忘れましたが、クリーンルームで育てると、無殺菌かつ無農薬で、とにかくメリットがすごい!みたいな感じでした。
担当の人が、「正直、畑で育てるのもいいけど、このやり方だったら、天候にも左右されないじゃないですか?前職では、全く農業と関係ない仕事をしていたんですよ。初めての転職で悩んだけど、この部屋に入るたびに、なんか新しいことやっている気になれるんで、結構楽しいですね〜。」とか言ってて、「(なんかいいな〜…)と思いました。
しかも、47歳の初転職で、このレタス栽培を始めたらしく、そこに関しても「(すげ〜!)」ってなりましたヨ。
見学終わりに、「良かったら、そこのレタス食べてみてください!」と言われて、ラック内のレタスをその場でちぎって、食べたんですけど、瑞々しくて、美味しかったので、そのまんま「瑞々しくて、美味しいです!」って言いました。(そのまんますぎる…)
そしたら、「アハハ、記念にお一人ずつに差し上げますよ。今日収穫したやつがあるので、持ってきますね!」と3人分のレタスを取りに行ってくれたんです。
3人だけになった待合室で、レタスを待っていると、B部長が
B「さすらいさんさぁ…レタス食べて、"瑞々しい"は一番ないよ。」
さ「え…すみません…」
B「農家なんてのはさァ…もっとリアクションをオーバーにしないと…」
さ「はい….」
B「おい、K。お前ならなんて言う?」
K「え…シャキシャキっすね…ですかね…」
B「はぁ〜…お前まで…もういい。二人とも、俺の手本を見てろ。」
さ・K「はい……(手本???)」
「(一体何を……….?)」と思いながら、待っていると担当さんが戻ってきて、出荷用に包装されたレタスを3つ持ってきてくれた。
それぞれ受け取り、お礼を言おうとすると、突然、B部長が、その包装をバリバリィ!!と破いて、勢いよくその場でレタスを食べ出したのです。
志村けんがスイカを食べる感じで、ものすごい勢いでレタスが食べられていって、完全に私とK先輩は驚いて固まってしまいました。
そんな部下のことを気にもかけず、
B「いやー!!こんな美味しいレタス、食べたことないですよ!太陽を浴びたレタスと、なんら変わらない!!かァー!最高ですよ!もう一瞬で食べ切ってしまいますよ!これなら毎日食べたいです!!!!!!なぁ!お前たち!!」
私もKさんも突然のことで、全然声が出なくて、二人で「ヒュッ…」みたいな声しか出せなかったです。
「(や、やりすぎだろ……………)」って思いました。
そんな部下の気持ちに気づくことなく、ドヤ顔でB部長が担当さんを見ると、その担当さんが…
「あんた……….卑しいねぇ……..」って言ったんです。
蔑むような顔と、軽蔑の目で「ちょっとあんた、品がないよ…乞食じゃないんだから…」って言ってて…完全にドン引き状態でした。
もう、マジでどうしようかと思いましたよ。
絶対に笑ったらいけないし、K先輩と二人で、必死に笑わないように、下向いて笑いを堪えました。
肝心のB部長は、「え…」とか言ったまま、口の周りがレタスの瑞々しさのおかげでテカテカになってて…もうそれ見て笑いそうになるし、でも空気は最悪だしで…….
担当さんは、よっぽどドン引きしたみたいで、その後も「あんたさぁ、いつもそんなことしてるの?俺さ…キチガ…気でも狂ったのかと思ったよ…」「大体さぁ…持って帰って欲しいから、わざわざ包装されたやつ取りに行ったのに…」「てか、やっぱりおかしいよ…レタスってそんなガツガツいく野菜じゃないじゃない…どうしたの…?」と困惑した顔のまま、めちゃくちゃ責めてて…
B部長もB部長で、喜んでもらえるとしか、思っていないから、予想外の反応に困惑してて、「いえ…あの…瑞々しくて…」って言いましたからね。
ここ、マジで吹き出しそうで、必死に唇噛み締めて耐えました。
そんな地獄の空気は、担当さんの「まぁ、もういいや…とりあえず終わりましょうか…」と言う声掛けで終わって、私たちは、「すみませんでした…これからもよろしくお願いいたします…」とか言って、呆然としているB部長を連れて、帰路についた。
会社に戻るまで、一言の会話もなかったし、B部長は定時で帰ってしまったので、他の社員がざわついていた。レタスが原因の定時退勤だとは、誰も思わなかった。
(K先輩が喫煙所でみんなに話したので、光の速さで広まりましたけどね!)
庇うわけじゃないのですが、B部長のあのリアクションは、他の農家さんにはめちゃくちゃウケがよくて、後日、レタスの傷が癒えて、玉ねぎ農家の前でやった時は、めちゃくちゃウケてて、それはそれは嬉しそうでした。
(ちなみに玉ねぎを2玉、いってました。これは素直にすごくないですか?)
私もそうなのですが、まだ会って日も浅いうちに、必要以上に褒められると、ちょっと警戒してしまいますよね…
多分、あの担当さんも、そんな感じだったんだと思います。
もう10年くらい前の話ですが、今でも新鮮に笑えるくらい、面白かったんですよね…このくだりをリアルで見せたいぐらい、気に入っています。
性格悪いけど、今でもレタス見ると、爆速でレタスを食べるB部長と、あの担当さんのドン引き顔が、思い浮かんじゃうんですよねェ…
まぁ、良くも悪くも、大袈裟に物事を言うのは止めよう!って思えた、いい経験でもあります。
ちなみに、レタス料理で一番好きなのは、レタスチャーハンなのですが、私が愛してやまない、健康中華・青蓮の牛肉レタスチャーハンが、いつの間にか、グランドメニューから消えていました。
どうして…………….?
P.S.
新年あけましておめでとうございます。
昨年12月に書いたnoteがバズって、(ありがたいことに)一気にフォロワーが増えまして、なんだか恥ずかしいような、嬉しいような気持ちです。
(嬉しい、が99%)
Xの引リツを読んだら、かなり厳しいことが書かれており、また同時に呪詛のようなDMがたくさん届いたので、当初は、炎上由来のバズだと思って、ビビっていたのですが、勇気を出して皆さんの反応を読んだら、わりかし楽しんで読んでいただけたようで、ホッとしました。
心配してくれた方々に、この場を借りて「大丈夫です!」とお伝えしておきます。その節は、ありがとうございました。
今年もこんな感じで、月1ペースで更新できればなと思っておりますので、暇な時に読んでもらえると嬉しいです♫
それでは、みなさま!
今年も何卒よろしくお願いいたします!
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30歳になってから、2ヶ月おきに体調を崩してます。
