2億円の老人ホームを見て考えた。「老後の安心」はいくらで買えるのか
入居一時金が2億円を超える老人ホームがある。
こう聞くと、多くの人はまず、
「そんなところ、誰が入るの?」
と思うかもしれません。
私も金額だけを見れば、すごい世界だなと思います。
ところが実際には、こうした高額な高齢者施設がほぼ満室になっているそうです。
ここに、これからの老後を考えるうえで大切なヒントがあるように感じました。

2億円の施設に入れるかどうか、という話ではありません。
私が気になったのは、
「人は老後に何を買おうとしているのか」
ということです。記事で紹介されていた神戸の施設では、最も広い部屋に60歳で入居すると、入居時費用は2億円を超えます。
露天風呂があり、シアタールームがあり、神戸の街や大阪湾を見渡せる。
確かに豪華です。
でも、実際の入居者が重視していたのは、意外にも豪華さだけではありませんでした。
あるご夫婦は10カ所近くの施設で体験宿泊をして、最終的に「居室の広さと生活上の安心感」で決めたそうです。
ここがとても印象に残りました。
2億円という数字だけを見ると、どうしても「ぜいたくな老後」という話に見えます。
でも本人たちが買っているものは、豪華な建物だけではない。
24時間看護師がいること。
介護が必要になったときに対応してもらえること。
医療につながれること。
そして最期まで暮らせること。
つまり、大きなお金を使って買っているのは、
「将来の迷いを減らすこと」
なのかもしれません。
これは資産形成にも似ています。
私たちは資産形成というと、つい「いくら増やすか」を考えます。
1000万円より3000万円。
3000万円より5000万円。
1億円あれば安心。
そんなふうに、数字が大きくなるほど人生も安心になるような感覚があります。
でも、お金そのものが安心なのではありません。
お金によって選択肢を持てることが、安心につながる。
私はそう考えています。
例えば老後に5000万円持っていたとしても、
「介護が必要になったらどうする?」
「自宅に住み続けられなくなったら?」
「配偶者が先に亡くなったら?」
「子どもに頼りたくないけれど、誰に頼ればいい?」
こうしたことを何も考えていなければ、不安は残ります。
逆に、自分たちがどんな老後を送りたいのかが見えていて、そのためのお金を準備できているなら、必要以上に資産額を他人と比べる必要はありません。
大切なのは「いくら持っているか」だけではなく、
「そのお金で、どんな選択肢を持てるか」
です。
2億円の老人ホームは、誰にでも必要なものではありません。
自宅で暮らしたい人もいる。
子どもの近くに住みたい人もいる。
地方へ移住したい人もいれば、便利な都心で暮らしたい人もいるでしょう。
正解は人によって違います。
だからこそ、他人の老後と比較してもあまり意味がない。
2億円のホームに入る人を見て「自分には無理だ」と落ち込む必要もなければ、「そんなところにお金を使うなんてもったいない」と考える必要もないと思います。
その人にとって、2億円を残すことより、2億円を使って安心して暮らすことのほうが大切なら、それも一つのお金の使い方です。
ここで考えたいのが、資産形成の出口です。
若い頃から一生懸命働いて、節約して、投資して、お金にも働いてもらう。
長期投資を続けて資産が増えていくと、それ自体が楽しくなることがあります。
1000万円を超えた。
3000万円になった。
5000万円になった。
次は1億円。
もちろん増やすことは悪くありません。
ただ、資産形成は残高を競うゲームではありません。
最後まで使わずに残した人が優勝でもない。
お金は人生の選択肢を増やすためにある。
そう考えると、「増やす」だけではなく「どう使うか」まで考えて初めて、資産形成が人生につながってくる気がします。
今回の記事には、元気なうちに気に入った部屋を押さえておく富裕層もいると書かれていました。
これも興味深い話です。
介護が必要になってから慌てて探すのではない。
まだ自分で判断できるときに、自分の意思で決めておく。
お金があるからできることでもありますが、それ以上に「時間があるうちに考えている」という部分が大きいと思います。
相続も同じです。
介護も同じです。
資産運用も同じです。
問題が起きてから考えると、選択肢はどうしても少なくなります。
元気なうち、余裕があるうち、まだ必要ではないと感じているうちに考える。
その時間そのものが、大きな資産なのだと思います。
そしてもう一つ、忘れたくないのが家族です。
老後のお金を考えるとき、「自分はいくら必要か」だけで終わりがちです。
でも実際の老後は、自分一人の問題ではありません。
配偶者の生活、介護、住まい、子どもとの距離、相続。
いろいろなものがつながっています。
たくさんのお金を残すことが家族への愛情になる場合もあれば、自分たちの老後資金をきちんと確保して、子どもに経済的・時間的な負担をかけないことが愛情になる場合もあります。
ここにも一つの正解はありません。
だから、テクニックより先に「自分たちはどうしたいのか」を考えることが大切なのだと思います。
2億円の老人ホームというニュースを見ると、どうしても金額に目を奪われます。
でも本質は、2億円ではない。
人生の最後に、どこで、誰と、どんな気持ちで暮らしたいのか。
そして、その選択をできるだけ自分で決められるように、今のお金と時間をどう使うのか。
資産形成と人生は、やっぱり似ています。
焦って答えを出す必要はありません。
ただ、早くから考えておけば選択肢は増やせます。
私は資産形成とは、老後に一番お金を持っている人を目指すことではなく、人生の最後まで「自分で選べる状態」をつくっていくことだと思っています。
だから私は、お金を増やすことだけではなく、そのお金でどんな人生を選びたいのかまで一緒に考えることを大切にしています。
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