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AIの精度は「正本」で決まる ― 田舎の弱小EC会社のAI化・実録【第4回】


こんにちは。楽天・Yahoo・Amazonでネットショップを運営している、田舎の弱小EC会社です。

第3回では、AIより先にGoogle Workspaceの土台を整えた話を書きました。今回は、土台の次にぶつかった問題――「どの数字が正しいのか、誰にも分からない」問題の話です。

AIにいくら良い指示を書いても答えがブレる、という方。原因はたぶんプロンプトではありません。データの側にあります。


同じ「在庫数」が、場所によって違う

AIに業務をやらせ始めて、すぐに気づいたことがあります。

ある商品の在庫数を調べると――

  • 楽天の管理画面では 12個

  • 社内のスプレッドシートでは 15個

  • 倉庫のシステムでは 13個

……どれが正しいの?

答えは「タイミングと定義によって、どれも正しくてどれも古い」。モールの画面は引き当て前の数字、社内シートは誰かが手で更新した3日前の数字、倉庫は実在庫。人間はこの矛盾を「まあ、だいたいこれくらいね」と経験でさばいてきました。

でも、AIはさばけません。AIは「なんとなくこっち」ができない。3つの数字を見せられたAIは、迷うか、間違った方を自信満々に使います。そして在庫の数字を間違えるということは、ECでは売り越しや発注ミスに直結します。

「正本」という考え方

そこで導入したのが、**正本(せいほん)**という考え方です。

同じ情報が複数の場所にあるとき、「迷ったらここを見る」という場所を1つだけ決める。それ以外は全部“参考”扱いにする。

戸籍の「原本とコピー」の関係と同じです。コピーがいくら散らばっていても、原本が1つに決まっていれば混乱しません。

わたしたちは、受注・在庫・商品情報の正本をネクストエンジン(複数モールの受注・在庫を束ねる管理システム)に一本化すると決めました。モールの画面も社内シートも倉庫システムも見ていい。ただし正本はネクストエンジン。この一文を、人にもAIにも徹底しました。

商品コードも「背骨」を1本に

正本を決めると、次に商品コードの問題が見えてきます。

同じ商品なのに、楽天ではこのコード、Amazonではあのコード、社内ではまた別の呼び名……。これもAIを迷わせる原因でした。人間には同じ商品でも、AIには「別の商品が3つある」ように見えるからです。

そこで、ネクストエンジンの商品コードを“背骨”にして、全モールのコードをそこに紐付ける形に整理しました。あわせて決めたルールが1つ。

一度つけたコードは、絶対に変えない。

コードを途中で変えると、過去のデータとのつながりが切れます。人間なら「ああ、あれね」で補完できますが、AIには過去と現在が別物になってしまう。「不変」というたった1つのルールが、データの寿命を決めます。
とはいえ複数出品していると2つ以上のコードを運用しないといけなくなります。その時は「セット商品コード」を使い根本は1つの商品コードで管理していきます。

正本を決めたら、何が起きたか

効果は、正直こちらの想像以上でした。

  • AIの答えのブレが目に見えて減った。 「どの数字を使うか」の迷いが消えたからです

  • 「どっちが正しいんだっけ?」の社内確認が消えた。 これは人間側の効果。地味に大きい

  • その後の全部が速くなった。 AIへの指示が「ネクストエンジンを見て」の一言で済む。新しい自動化を作るたびに、データの出どころを議論しなくていい

第1回から言っている**「AIの精度は、プロンプトより整理整頓で決まる」**の正体がこれです。高度な技術は何も使っていません。決めごとを1つしただけです。

あなたの会社でやるなら:3ステップ

正本づくりに、システム導入は必須ではありません。今日、紙とペンでも始められます。

  1. 数字のある場所を全部書き出す。 在庫なら「モール画面・社内シート・倉庫システム・誰かの頭の中」。まず散らばり具合を直視します

  2. 「一番更新が早く、一番網羅的な場所」を正本に決める。 ECならネクストエンジンのような受注・在庫の一元管理システムが自然な候補。無ければ「このシートが正本」でもOK

  3. 正本以外に「参考」と明示する。 そして修正は正本にだけ入れる。参考側を直しても意味がない、を全員の共通認識にする

ポイントは、完璧なデータを作ろうとしないこと。正本の数字が多少荒れていてもいい。「迷ったらここ」が1つに決まっていること自体に価値があります。掃除は正本を決めたあとで、正本が正しくなるようにやればいいんです。


今回のまとめ

  • 同じ数字が場所によって違う状態で、AIは正しく働けない(「なんとなくこっち」ができない)

  • 正本=迷ったらここを見る場所を1つ決める。わたしたちはネクストエンジンに一本化

  • 商品コードは背骨1本+不変ルール。途中で変えるとAIにとって過去が消える

  • 効果:AIのブレ減・社内確認消滅・以後の自動化がすべて速く

  • 始め方は3ステップ。完璧なデータより、1つの正本 

次回は、いよいよ現在進行形の話。正本を決めたあと、売上・在庫・広告・物流のデータをBigQuery(Googleのデータ倉庫)に集約して、AIが会社全体の数字を読める状態を作っている実況です。ここから先は、わたしたちにとってもリアルタイムの挑戦です。

「うちの正本、どれにすべき?」という相談も歓迎です。Xのリプ・DM、noteのコメントでどうぞ。


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