総選挙の争点その(102)「“政府にできること”と“市場に任せるべきこと”」
政治と経済の議論が迷走する最大の原因は、ここだ。
政府がやるべきことと
市場に任せるべきことを、混同している。
この線引きが曖昧なままでは、
「大きな政府/小さな政府」という不毛な対立から抜け出せない。
まず結論を置く。
政府は“全部やる”必要はない。
だが “政府にしかできないこと”だけは、絶対に放棄してはいけない。
■ 市場が得意なこと
市場は優秀だ。特に次の分野では、政府より圧倒的に強い。
① 効率化
コスト削減
技術革新
競争による改善
② 多様なニーズへの対応
商品の選択肢
サービスの差別化
好みへの最適化
③ スピード
判断が早い
失敗からの修正が速い
日用品、家電、外食、エンタメ、ITサービス。
ここに政府が細かく介入する必要はない。
市場に任せた方が、
安く、早く、便利になる。
■ 市場が“できないこと”
一方で、市場には構造的にできないことがある。
① 不安を引き受けること
市場はリスクを嫌う。
だから、
不況時に引く
採算が悪い地域から撤退する
② 失敗を許すこと
市場は冷酷だ。
失敗した人を助ける仕組みを持たない。
③ 長期で回収すること
教育
基礎研究
防災
インフラ
これらは、短期利益を求める市場には不向きだ。
■ 政府がやるべきこと(市場に任せてはいけない領域)
ここは明確だ。
① 安心の土台づくり
医療
社会保障
失業保険
最低限の生活保障
これは“配慮”ではない。
経済を回す前提条件だ。
② 不況時の需要創出
公共投資
給付
雇用の下支え
市場が引いたときに、
最初に動く役は政府しかいない。
③ ルールの設定
独占禁止
労働基準
消費者保護
市場はルールがあって初めて健全に機能する。
④ 全体調整
地域格差
世代間格差
景気の波
部分最適の集合体を、
全体として整える役割。
■ よくある誤解①
「政府が動くと市場が歪む」
これは半分だけ正しい。
市場が回っているときに、過剰介入 → 歪む
市場が止まっているときに、政府が動く → 回復する
問題は「動くかどうか」ではなく、
“いつ、どこに”動くかだ。
■ よくある誤解②
「市場に任せれば自然に良くなる」
これは神話だ。
市場は万能ではない。
放置すれば、
格差は拡大する
弱者は切り捨てられる
短期利益が優先される
結果、
社会不安が増え、消費が止まり、
市場そのものが弱る。
■ 正しい役割分担のイメージ
分かりやすく言う。
政府:土台を作る
市場:その上で走る
土台が崩れているのに、
「走れ」と言われても無理だ。
逆に、土台が安定していれば、
市場は勝手に動き出す。
■ 日本が間違えたポイント
日本は、ここを逆にした。
不況時に政府が引いた
市場に「自助努力」を押し付けた
安心を削った
結果、
人が動かなくなった
企業が守りに入った
成長が止まった
市場を信じすぎたのではない。
政府が役割を放棄した。
それだけだ。
■ 結論
強い国とは、
政府が出しゃばる国でもない
市場に丸投げする国でもない
役割分担が明確な国だ。
政府は「安心・需要・土台」
市場は「効率・競争・創意」
この線を引き直すことが、
日本再起動の条件になる。
