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小谷城跡

近江野に 長く裾を引く稜線
折り重なる起伏の奥
黒く沈み 影をたたえる小谷山

山裾の清水谷より 大手道を登る
番所跡 御馬屋跡 大広間跡…… 
連なる曲輪
苔むした石垣は 時の湿りに冷えきり
土塁の残骸は 雑草に埋もれ 
ただ 風を聞いている

林を貫き 馬がいななく
甲冑を揺らし 荒れ狂う兵ども
退路を断たれ 谷へ崩れ落ちる
交わす太刀音が 喉を突き刺す
飛び散る血飛沫は あの真紅の藪椿か……

流された血は 地に沈み
落ち葉は厚く 闇のように積もり
サクサク サクサク……
冷淡なほどに 軽やかに響く

伊吹の峰を 遠くに望む 
漣のように揺れ 
琵琶湖は 空に溶けてゆく
薄ら寒い ぼやけた空
天空で 風が低く唸っている

懇願するように枝を広げ 寄り添う木々
浅井長政自刃之地 
残されたのは 山だけ 草木だけ
身を捻じ曲げ 森を築く
コナラ林は
織田の覇権に抗い続け
近江の土に根を張った 浅井の影
愛しき者を送り出し 
ひとり踵を返す
無念は 木漏れ日に震えて……

三本の若枝に 
淡い光を託すばかり

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